「さて志貴さんネタがありません」
「最近ネタがないほうが多くない?」

昔はこれでもかーってくらいのネタ攻めだった気がするんだけど。

「いや、さすがに色々やりすぎちゃいましたからね」

ならば自重して下さいな。

「ここはひとつ新展開といきましょう」
「新展開?」
「はい。翡翠ちゃんです。どうぞー!」
「ど、どうも」

琥珀さんに促され、翡翠がおずおずと部屋の中に入ってきた。

「ちょっと琥珀。私は?」
「あ、はい。すいません。今からやる予定でした」

と渋い顔で入って来たのは秋葉だ。

「何やるの?」
「懐かしいゲームです! それは……」
 
 

「いつ どこで だれが どうした」




「あー!」

あったなそんなゲーム!

「何ですかそれは?」
「よくぞ聞いてくれました」

びしっと秋葉の顔を差す琥珀さん。

「このゲームはですね。各々が『いつ』『どこで』『だれが』『どうした』を用紙に記入するんです」
「はぁ」
「それでもって、くじびきかなんかで順番を決めて、それぞれの担当の場所を発表するんだ」
「まあこれは基本形で、最終的には『だれが』『なにを』『どうして』『どうなった』となるのが王道ですね」
「そのほうが面白いからな」
「……何が面白いのかよくわからないのですが」

秋葉はいぶかしげな顔をしていた。

「わたしも意味がよく……」
「まあやってみればわかる」

こればっかりは実践しないとなんともいえないだろう。

「最初は俺がどうしたをやるよ」
「わ。志貴さんやる気満点ですね」
「はははは」

このゲームで一番面白いのはこのオチ担当だからな。

「ではわたしたちで担当を決めましょう。じゃーんけーんっと」

じゃんけんの結果、秋葉が「いつ」翡翠が「どこで」琥珀さんが「誰が」になった。

「よく考えて書いてくださいねー。とんでもない結果になるかもしれませんからー」

うふふふふと笑う琥珀さん。

「ふっふっふ」

俺も真似して笑う。

「……何やら気味が悪いですね」
「はい。準備は宜しいですかー?」
「一応書けたけど……」
「わたしも出来ました」
「はい。では発表ターイム!」

ぱちぱちぱちと手を叩く琥珀さん。

「ヒューヒュー!」

このゲームはこの無駄なハイテンション具合が重要である。

「秋葉さま。『いつ』をどうぞー!」
「……昨日」
「昨日ですねー。続いて翡翠ちゃん! 『どこで』?」
「志貴さまの部屋で」
「いいわよいいわよー! 続いてわたし! 『誰が!』秋葉さまが!」
「よし」

俺の番だ。

「志貴さん、最後です。『どうした?』」
「爆発した!」
「昨日志貴さんの部屋で秋葉さまが爆発した!」
「んなっ……!」

目をまんまるにしている秋葉。

「秋葉爆発しちゃったよ!」

俺が爆発させたんだけど。

「志貴さんの部屋で爆発されたら被害がとんでもないんじゃないですかねっ?」
「……掃除が大変そうです」
「うわーっ! 翡翠ちゃん何気に毒舌ー!」
「はははははは!」
「め、滅茶苦茶です! 撤回を要求します!」
「滅茶苦茶だからいいんじゃないか!」

このゲームはその理不尽な内容の文章を楽しむゲームである。

「そういうことです。だから『どうなって』が多いほうが楽しいんですね〜」

そのほうが物語りに幅が出るからな。

「じょ、上等です! 今度は私がラストに回ります!」
「ダメですよー。じゃんけんで決定です」
「まあまあ。いいじゃないか」

秋葉がどんなオチをつけるか気になるし。

「はぁ。志貴さんがそう言われるのでは仕方ないですねえ」

というわけで他の順番を決める。

「よしっ!」

俺が三番目の『どうなって』をゲットした。

「あらら……」

琥珀さんは二番目の『なにを』。

「誰……ですか」

翡翠が一番手となった。

「さて、どうしましょうかねー?」

このゲーム、地味に戦略があるのだ。

それは「だれ」を決定する人間が人畜無害がどうかである。

「あ。ちなみに『だれ』は身内限定ね。知らないおじさんとかダメよ?」
「そ、そうですか……」

どう考えたって酷い結果になるしかないこのゲーム。

「だれ」が誰になるかは重要なポイントなのである。

要は犠牲者を誰にするかって事だからな。

「……」

翡翠が誰かを選ぶとしたら……。

「……よし」

決めた。

「わたしもオッケーでーす」
「出来ましたよ!」

というわけで第二弾。

「翡翠ちゃん、『だれが』?」
「……わ、わたしが」

やはりそうか!

翡翠が俺や秋葉をターゲットにするとは考え辛い。

琥珀さんを選ぶという可能性もあるが、気を遣って自分を名乗ったのだろう。

そのくらい既に予測済みです!

とシオンだったら言うだろう。

今日の俺は冴えてるぜ!

「次、わたしですねー。『なにを』。わたし、つまり琥珀を!」

そうきたか!

琥珀さんも翡翠が自分をターゲットにすると予想していたらしい。

だがそれこそが命取りになる!

現在の文章はこうだ。

翡翠が、琥珀さんを。

そして俺のターン!

「『どうなって!』大嫌いになって!」
「がーん!」

琥珀さんが『なにを』になった時点でロクなものを選ばないだろうという事は安易に予想できた。

おそらくは自分好みの選択肢を用意してくるだろうと。

それを覆すのがこの言葉!

それが重要なものであったぶんダメージはでかい!

「そして最後に……秋葉!」

秋葉のことだからとんでもないオチを用意してくれるだろう!

「『どうなった』……大気圏突入!」

翡翠が琥珀さんを大嫌いになって大気圏突入!

「意味わかんねぇー!」
「大気圏突入って秋葉さまー!」

うん、この文面だと大気圏突入したのは多分琥珀さんのほうだ。

「志貴さんも酷いですよー! 大嫌いなんてー!」
「はっはっは」

まさに予想通りの結末。

「……」

翡翠には予想外だったのか、可笑しそうに口元を押さえていた。

「ざまをみなさい琥珀!」
「こ、こうなったら必殺シャッフル戦法ですよ!」
「シャッフル戦法?」
「いつどこでだれがどうした。これを各個人で書いたものをまとめて掻き混ぜます」
「わかった! それで一人一枚抜くんだなっ!」

そうすると「いつ」のつもりで書いたものが「だれ」になったり「どうした」のつもりで書いたものが「どこで」になったりするのだ。

つまりそれだけ意味不明の文章が出来上がる。

「今日は頭が冴えてますね!」
「今日は……って」

まあ確かにそうだけど。

こういう下らない事に限って頭が働くものなのだ。

「というわけでみなさん書きまくってください!」
「よーし!」
「……ふふ、自ら死地に向かうなんて……」
「……混沌の予感です」

各々の思惑を秘めた用紙が提出されていく。

「では、シャッフルシャッフル!」

それらの入った箱を滅茶苦茶に混ぜる琥珀さん。

「どうぞ!」

そして運命の用紙が引かれていく。

「引きましたね?」
「ああ」
「ええ」
「はい」

じゃんけんぽんと。

「一番です」

翡翠が最初。

「……むぅ」

秋葉が二番。

「ちぇー。惜しかったな」

俺が三番。

「わたしの時代がやってきましたよー!」

琥珀さんが四番。

「というわけで発表!」

いつ!

「あ、あきらめました」

どこで!

「の、脳みそバァーン?」

誰が!

「サタデーナイト!」

どうした!

「もうしません!」
 

あきらめましたの時、脳みそバァーンにサタデーナイトがもうしません!

「日本語になってないですよこれ!」
「誰だよ脳みそバァーンとか入れたの!」
「わ、私じゃないですよ!」
「……サタデーナイトはわたしです」
「翡翠ー!」
「翡翠ちゃんラブリー!」

スチールセイントの時、インペリアルクロスにまな板がグワッシーン!

「スチールセイントって懐かしいなおい!」
「あ、それはわたしですー!」
「誰がまな板ですかっ!」
「何も言ってないしー!」

お茶の時、爆発に悲しいが無かった事に!

「まとまった!」
「どこがですかっ!」
「お茶はわたしが……」
「なかったことにー!」

その後延々と俺たちのバカな文章作りは続くのであった。
 
 
 
 
 
 
 

「……何やってたんでしょうね、わたしたち」
「さあ……」

なお、このゲーム終了後にふと我に返った時の空しさは他に比類ないものである。
 
 




あとがき
なんか町内会のバスとかでやった記憶あるんですが。
このゲームって地方限定だったりするんだろうか。
それともウチの周辺の連中のみで流行ってたのかしらん。
こんなんあったぜ! って意見募集w


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