「貴方を確保です」
「悪いが三人がかりだ。取らせてもらう」
「攻めを終わらせるわけにはいかないんでなぁ」

だがそこをさらに翡翠、シキ、イチゴさんの三人が取り囲んだ。

「……ほほう。これはいわゆる見せ場ってヤツか?」

ネコアルクの目がきらりと光る。

「た、頼むぞネコアルク!」

ここで奪われたら貴重な攻撃のチャンスを失ってしまう。

「まっかせとけー!」
 

ネコアルクは叫びながら三人へ向かって行った。

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その36











「えいっ!」

翡翠のタックル。

「当たらなければどうということもニャい!」

ジャンプしてそれをかわすネコアルク。

「ぶっちりだぜー!」
「調子に乗るんじゃないよっ」

次に向かっていったのはイチゴさんだ。

「せいっ!」

ジャンプして、そのまま膝蹴りを放った。

「お、おのれー! アチキをヤる気かー! そうはいかんざきー!」

大きく左に飛んでかわすネコアルク。

「……貰った!」
「にゃにィ!」

着地したイチゴさんは、三角飛びの要領で地面を蹴って再びタックルを放った。

ばしっ!

「こぼれだまになったー!」

くるくると回転しながら飛んでいくボール。

「まったく、調子に乗りすぎなんですよっ」

秋葉がそれを確保した。

「行かせないわ!」

白レンが秋葉へ向かう。

「この私からボールを奪えると思ってるんですかっ!」
「きゃあっ!」

直線的なドリブルで白レンを吹っ飛ばす秋葉。

「秋葉ぁ!」

シキが秋葉へ向かっていった。

「今度は逃げられませんよ!」

秋葉もそのままシキへ突っ込んでいく。

「あ、秋葉!」

秋葉までシキの反則の餌食になってしまうのかっ?

ずばっ!

「……ちぃっ!」

秋葉に対しての反則を躊躇したのか、秋葉はシキのタックルを綺麗にかわしていた。

「これが私の実力です!」
「油断大敵ですよー!」

ばしいっ!

「んなっ……!」

ボールが宙へと飛んでいく。

「どうして琥珀がここにっ!」

そう。秋葉からボールを奪ったのは琥珀さんだった。

「もう一点もあげられませんからねっ。一丸となってゴールを守るのです!」
「こ、小癪なっ……!」
 

「……」

こぼれ玉を拾ったのはレンだったが、ボールはセンターラインの付近にまで戻っていってしまう。

「黒猫さん! こっち!」

レンに向かってぶんぶん手を振る都古ちゃん。

「!」

レンは素早くパスを出した。

「行くかい?」
「うん!」

蒼香ちゃんと都古ちゃんのジェミニアタック。

強力なディフェンス勢相手でも、必殺ワンツーはしっかり通用するのだ。

「くそっ!」

シキがカットへ向かうが届かない。

そのまま二人は一気にペナルティエリア内へ進んでいく。

「これはまずいですね……」

琥珀さんがディフェンスに向かおうとした。

「待て!」

ところが軋間がそれを止める。

「軋間さん?」
「奴らのシュートなら問題ない。止めてみせる」
「言ってくれるね……!」

悔しそうな顔をする蒼香ちゃん。

だがそれは事実でもあった。

二人のスカイラブ殺法は軋間にまったく通用していないのだ。

やはりゲルティス相手に立花兄弟では厳しいのか。

「だったらあたしたちの新しい技を使うまでっ!」

都古ちゃんが叫ぶ。

「お嬢ちゃん、まさかあれをやるのか?」
「やるっきゃない!」
「そうかい! なら……」
「任せておけ!」

いつの間にか有彦までオーバーラップしてきていた。

「行くよ! きゅーきょくおーぎ!」

ずだん!

「うおっ」

都古ちゃんが地面を思いっきり踏みつけた。

振動と共にボールが空中に跳ね上がる。

「頼むよ!」
「おう!」

蒼香ちゃんがスカイラブの要領で空中へ飛ぶ。

「あ、あの位置は……」

都古ちゃんによって蹴り上げられたボールは普段よりも遥かに高い。

そう、フィールド全体を見下ろせるんじゃないかって位置だ。

「くらええええええっ!」

超高度からのボレーシュート。

「シュ、シューティングスター?」

それはキャプ翼5のカンピオーネの選手、アルシオンのトンデモ必殺技であった。

普通ならまず入らないだろうと思われるその角度からのシュートも、しっかりとゴール目指して突き進んでいく。

「小癪な……!」

軋間が腕を組み、大きく振りかぶった。

「うおりゃあああああ!」

そしてボールに思いっきり両腕をぶつける。

「だ、ダブルアームスマッシュ?」

こちらも5の選手、サビチェビッチの技であった。

ちなみに原作で若島津とかも使っていたりする。

ばしいっ!

「ぬぐっ……!」

軋間とボールが同時にふっ飛んだ。

てん、てんてん……

そのままボールはライン外へ。

「……惜しいな……」

攻めのテンポはいいのにゴールを奪う事が出来ない。

コーナーキックは手に入れたものの、時間はどんどん過ぎて行ってしまう。

「ここは私に任せてください」

秋葉がボールを持ってコーナーへ向かっていく。

「直接シュートの可能性が高いです! みんな気をつけて!」

琥珀さんが叫んだ。

「行きますよ!」

秋葉の髪の毛が真っ赤に染まった。

「ファイヤー!」
「!」

ディフェンス勢が身構える。

「パス!」
「んなっ?」

秋葉はちょこんとボールを蹴っただけであった。

軋間や琥珀さん含め、ディフェンスが大きくバランスを崩す。

「……」

そして秋葉のパスを受け取ったのは……レンだ。

「!」

大きく足を振り上げた。

「サイドワインダーかっ!」

さっきはディフェンスに邪魔をされたが、今なら確実にゴールを狙える。

軋間だけが相手なら、吹っ飛ばせるはずだ。

どごっ!

不可思議な軌道を描いて飛んでいくボール。

「させるかぁ!」
「なにっ!」

なんとシキだけはバランスを崩さずにボールへ向かって行っていた。

勢いよくボールへ向かってジャンプする。

きょんっ!

「ちぃっ!」

シュートの軌道が曲がり、シキはボールに触れる事すら出来なかった。

「いけるぞ……!」

これなら決まるはずだ!

「そうは問屋が卸しません!」
「げっ!」

今のシキのプレイの間に琥珀さんが復活してしまっていた。

「みんなで行けば怖くない……です!」

どごっ!

琥珀さんを筆頭に、次々と琥珀チームメンバーがサイドワインダーに吹っ飛ばされて行く。

「……見事」

軋間に届いた時には、シュートの威力はすっかり無くなってしまっていた。

「オフェンス! ディフェンスの頑張りを無駄にするな!」

大きくボールを蹴り上げる軋間。

それとほぼ同時にBGMが鳴り始めた。

「あと五分……」

延長戦前半終了まで残り僅か。
 

このまま同点で後半に続くのか、それとも。
 

続く



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