「決まったゴール! ワラキアくんのキャノンヘッドが琥珀チームゴールを突き破ったぁ〜!」
「フフフフフフ、ハハハハハハ、フハハハハハハハハハ!」

キャノンヘッドは軋間を吹っ飛ばし、ゴールネットをも貫通していた。

志貴チーム 7
琥珀チーム 7
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その40






「同点に追いついた……!」

残り試合時間あと7分で、試合は再び振り出しに戻ったのだ。

「まだ負けたわけではありません! 決勝点は必ずわたしたちが奪います!」

琥珀さんの瞳にはまだ闘志が生きていた。 

「当然! 勝つのはわたしたちよっ!」
「このメンバーで負けるわけにはいきませんからねっ」

気合を入れる琥珀チームの面々。

「ここまで来たら精神力の勝負だ! 頑張れ!」

俺も負けじとみんなに向けて叫んだ。

「任せとけ少年! アチキが必ず勝利のゴールを決めてやるぜ!」
「大丈夫です兄さん! ドイツは絶対に負けません!」

いや、ドイツじゃないってば。

「さーて、いよいよ見せ場かしら?」
「ん」

先生がセンターサークル内でぐるぐる腕を回していた。

「ついに来るか……」

最終兵器コインブラ。

「だがこっちだって」

対策は既に考えてあるのだ。

「じゃ、お願いシロちゃん」
「……その絶望的なネーミングセンスは勘弁して欲しいわ」

うんざりした表情でボールを蹴りだす白レン。

「行くわよー!」

ドリブルを始める先生。

「甘い!」
「うわっ?」

ほとんど加速のつかないうちにネロのおっさんが進路を塞いだ。

「ちょっと、貴方ディフェンスだったでしょ?」
「先ほどまではな。だが今は位置が違うのだ」
「貴様を通しはしない!」

さらにワラキアが現れる。

「ちょ……これって」
「……よしっ」

俺は思わずガッツポーズを取ってしまった。

そう、ワラキアやネロのおっさんをFWに配置したのは、早めに先生を止めるためでもあったのだ。

「けどそう簡単に止められるかしらっ!」

フェイントをかけつつ高速ドリブルで進む先生。

「そこだ!」

ネロのおっさんのタックル。

「おおっと!」

ジャンプでそれをかわす先生。

「カット!」

着地間際をワラキアが襲う。

「……ヤバッ!」

一瞬ボールが宙に浮いたが、すぐさまそれを拾う先生。

「えいっ!」
「ちょ……!」

そこをへさらに羽居ちゃんがタックルを仕掛けた。

「こぼれ玉になったー!」
「やった!」

ここで先生のボールを奪えたのは非常に大きな意味がある。

つまり、みんなの力でスーパーストライカーを破れたということなのだ。

「勝てるぞ!」
「おうっ!」

チームの意気が大幅に上昇していた。

「まだよっ!」
「げっ!」

ところがこぼれ玉を拾ったのはアルクェイド。

「なにやってるのよミスブルー!」
「ご、ごめんごめん、さすがに三人はちょっちキツいわ……」
「だったらわたしが行くわ!」

アルクェイドが強引に中央から切れ込んできた。

「ちいっ!」

ワラキアがアルクェイドに向かっていく。

「下手に技を使うよりも力押しのほうがっ……!」

ゴッ!

「ワラキアくん吹っ飛んだー!」
「くそっ……」

アルクェイドの強引なドリブルは本当にタチが悪かった。

「うにょー!」
「ぐっ……ああああっ!」

ネコアルク、ワルクェイドを吹っ飛ばしてさらに突き進む。

「それっ!」

邪魔する選手がいなくなったところでパス。

「出番アルね!」

そこにはチャイナ服を来た琥珀さんが……

「ってチャイナ服?」

そう、琥珀さんは水色のスリットバリバリのチャイナ服だった。

「キックといえばチャイナ! これ宇宙の真理あるよろし!」
「む、無茶苦茶言ってる……」

しかしその無茶苦茶状態の琥珀さんは本当に怖い存在だ。

なんせ何をしてくるか全くわからない。

「服装変えた程度じゃ!」
「あたしだってチャイナだもん!」

蒼香ちゃんと都古ちゃんが琥珀さんへ向かう。

「チャイナ対決アルねー! 上等よー!」

ヘンテコな構えをして突っ込んで行く琥珀さん。

「食らえ!」

蒼香ちゃんが都古ちゃんの足に乗ってのスカイラブタックル。

「貴方たちの技術は2000年前に通過しているアルよ!」

がしっ!

「んなっ……!」

タックルに来た蒼香ちゃんの足を踏み台にして琥珀さんが飛んだ。

「そ、そんな!」

そのまま都古ちゃんの上を飛んでいき着地する。

「お、恐るべし中国拳法……」

そういえばゲームでもリ兄弟が昇竜脚というとんでもない技を使ってたっけ。

「って感心してる場合じゃない! 琥珀さんを止めるんだ!」
「そうは言ってもよ……!」
「甘いアルねー!」

有彦をヒールリフトで華麗にかわす琥珀さん。

お茶らけた風でも、その技術にはまったく衰えがなかった。

「えーいっ!」
「残念賞ー!」
「あっ!」

最後の砦、羽居ちゃんまでも抜かれてしまう。

「き、来たっ!」

ペナルティエリア内、弓塚と琥珀さんの一対一の対決である。

「さぁさぁ来ないアルかー?」

微妙なところでボールを転がす琥珀さん。

「……誘いには乗らないんだから」

弓塚はがっしりと身構えていた。

「さすがはSGGK……油断はしませんか……」

琥珀さんの口調が戻る。

「でもっ!」

空中へボールを蹴り上げる琥珀さん。

「この位置からのサイクロン! 止める事が出来ますかね!」
「……!」

今まで弓塚はこんなに間近でサイクロンを撃たれた事はなかった。

「くっ……」

先生を警戒しすぎて琥珀さんのマークを疎かにしたのはまずかったか。

「いっけー!」

容赦なく放たれるサイクロン。

「……っ!」

構える弓塚。

いくら弓塚でも、たった一人じゃ……

「そうだ!」

まだあった。サイクロンでも防げる可能性が。

それはシキが反則に頼ったのと同じで、俺だからこそ思いついた作戦かもしれなかった。

「弓塚! おまえにはまだ味方がいるんだ!」

大声で叫ぶ俺。

「えっ……」

弓塚が一瞬視線をこちらへ向ける。

「頑張り!」
「……!」

その言葉で弓塚は理解したようだった。

「わかったよ遠野くんっ!」

ボールへ向かって飛んでいく弓塚。

ばきいっ!

「きゃああああああっ!」

サイクロンの威力で弓塚は吹っ飛んでいった。

「決まりました!」

ガッツポーズを取る琥珀さん。

「……え?」

だがその表情が変化した。

そう。弓塚がぶつかった事で、シュートの軌道が変わってしまったのだ。

「ま、まさか!」

ネットではなく、まるで違う方向へ進んでいくボール。

ゴンッ!

「こぼれだまになったー!」

そう、俺は弓塚にこれを狙わせたのだ。

「キャプ翼ゲー、ゴールを守る最後の砦!」
 

それは森崎やレナートの最高の親友、ゴールポストであった。
 
 

続く



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