「行きますよっ!」

琥珀さんは走り出してしまった。

ああもうっ。

こっちもやけくそで走る。

「……琥珀さんっ!」

琥珀さんがこちらを向く気配はない。

半分決意の出来ないままではあるが、構わずに叫んだ。
 

「俺は……俺は!」
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その50









「……!」

ダメだ、間に合わない。

琥珀さんとボールが重なり合う。

たったったった。

「……え?」

琥珀さんはボールを蹴らずにその横を通り過ぎていった。

なんで蹴らないんだ……?

「志貴さん」
「う」

琥珀さんの目はしっかりと俺を見ている。

「何か仰りたい事があるみたいですね」
「……ああ」

聞こえていたのか。

「言うなら今のうちにお願いします。蹴った瞬間に気の抜けるセリフなんて言われたらたまりませんからー」
「そ、そんな事はしないって」

まあでもそれに近いのかもしれないけど。

「では何ですか?」
「あー、うん、まあ、なんだ」

そう改まって尋ねられると困る。

「琥珀さんはどうしてこの夢に俺を誘ってくれたの?」

まずは素朴な疑問から聞いてみる事にした。

「それはもちろん、志貴さんがわかってる人だからです」
「なるほど」

確かに現実世界の秋葉や翡翠じゃこのトンデモサッカー界にはついてこれなかっただろう。

「それに志貴さんが相手だと楽しく勝負出来ますし」
「そりゃどうも」

それは素直に嬉しかった。

「俺も琥珀さんとこういう勝負をするのは好きだよ」

あれやこれやとテクニックを使ってくるものの、結局は琥珀さんとの直接対決だからだ。

そしてその攻めが案外素直な事も知っている。

ウチのチームの連中はキャプ翼界から離れたインチキ必殺技を使っていたのに、琥珀さんチームは自己判断で動いていた先生を除いてはほとんどそういう事をして来なかった。

琥珀さんがそれを潔しとしなかったからだろう。

「本当に楽しかった」
「過去形にしちゃイヤですよ。まだ現在進行形なんですから」
「……ああ、ごめん」

そうだ、まだ試合は終わっていない。

「だからこんな時に言うのはおかしいと思うんだけど」

本当なら決着がついてから言うべきなんだろう。

けれど俺の場合、言おうと思った時を逃すともう言えなくなってしまう気がした。

「いつも琥珀さんに振り回されて、苦労してる」
「あはっ、それはすいません」
「その苦労は嫌じゃないんだよ。こうしてゲームに付き合ってる時も。どうしてかって考えた」
「はぁ」

なんとなくそっけない答えをする琥珀さん。

それでも構わずに続ける。

「俺は」

そんな琥珀さんと一緒にいる時間が一番楽しくて。

「俺は琥珀さんが好きだ」
「……」

言ってしまった。

夢の中とはいえ。

お互いの意識が共有しているこの世界で。

「……心理作戦ですか?」
「違う。本気」
「そう……ですか」

琥珀さんはとても困ったような顔をしていた。

「てりゃっ」
「あっ!」

そして不意をついていきなりのシュート。

弓塚はボールに反応できず、あっさりと決まってしまう。

「琥珀さん……」

それはノーという返事の表れだろうか。

「次は志貴さんの番ですよね?」
「……ああ」

俺が決められなければ引き分け、サドンデスとなる。

決める事が出来れば、その時点で俺たちの勝利が決まる。

「なら、次のシュートで志貴さんの気持ちが本当かどうか見極めさせて貰います」
「……え」

それはつまりどういうことなんだろう。

決めたほうがいいんだろうか。

それとも。

「……やれやれ、とんだ茶番に付き合わされる羽目になったな」

軋間が頭を掻きながらゴールへ向かっていく。

「だが貴様の最後の障害になれるのは光栄とでも言うべきだろう」

身構える軋間。

「ぬ……」

その構えにはまるで隙がなかった。

「……」

わざと外すなんてあり得ない。

生半可な気持ちのシュートでは止められてしまうのは間違いなかった。

「琥珀さん」

琥珀さんの顔を見る。

「俺は……勝つ!」

ボールへ向かって駆けていく。

勝利目指して。

「来いっ……!」

駆けて行く途中でメガネが外れる。

「見えたっ……!」

その目で見えたのは、死の点。

すなわちゴールが死ぬ場所だ。

「これで決める!」

その点目掛け、俺は全力でシュートを放った。
 
 
 
 
 
 
 
 

「志貴さん志貴さん」
「……ん」

それから暫くして。

「ゲーム、やりません?」

琥珀さんがそんな風に誘ってきた。

「ああ、いいよ。何を?」
「これですよー」

取り出したのはキャプテン翼IVだった。

「……また恐ろしくバランス悪いゲームを」
「その不安定さがたまらないんですよー」

IVは攻撃側の浮き玉に関する補正が異常なのである。

浮き玉からシュートを撃てば、点の取れない点取り屋、来生とかでも若林を余裕で抜けてしまうのだ。

「対戦できるのってこれかVだけですしー」
「まあ、それもそうだね。じゃあやろうか」
「はいっ」

ゲームを起動して選手を選びあう。

「そういえばこないだのレンちゃんの試合」
「……ああ、うん、なに?」
「最初に志貴さんが外してくれた時はどうしようかと思いました」
「はっはっはっは」

そう、あの勝利を得るためのシュートをオレは見事に外してしまったのだ。

「志貴さんのわたしへの想いはその程度なのかーと」
「……その後ちゃんと決めたじゃないか」

引き分けなのでサドンデスとなったのだが、俺と琥珀さん以外にシュートを撃とうという選手がいなくて結局また二人の対決になったのである。

俺たちの与太話に関わるのがイヤになってしまったのかもしれない。

とにかくそのサドンデスでは琥珀さんが外し、俺が決める事が出来た。

結果、俺たちの勝利である。

「志貴さんが琥珀さんが好きだとか言うからですよっ」
「……わ、悪い」

思い出したらまた恥ずかしくなってきた。

「や、悪い事じゃありませんけど。その……嬉しかったですし」
「琥珀さん」

あれから二人の関係はちょっと変化したみたいだ。

試合に負けた琥珀さんに取り付けた約束。

それはもうちょっと素直になろうねという事。

ゲームではともかく、普段の行動はひねくれまくってるからな、この人は。

「あーあ、でもスーパーストライカーの座は結局志貴さんに持ってかれちゃいましたね」

恥ずかしさを誤魔化すためにか、そんな事をいう琥珀さん。

「どうして?」
「だって最後の最後に決めたのは志貴さんですもん」
「そりゃまあそうだけど……琥珀さんも十分スーパーストライカーだって」
「何を根拠に?」
「何って……そりゃ」

我ながら何バカな事考えてるんだと思ったけれど。

構うな、言ってしまえ。

「俺の心のゴールを貫いたから」

うわ、なんだこれ。

「ふふ、あは、あははははは……っ!」

琥珀さんは大爆笑していた。

「そ、そんなに笑わなくても」
「だ、だって……それなら志貴さんだって同じじゃないですか」
「え?」

きょとんとしている俺の口に、琥珀さんの唇が触れた。
 

「志貴さんだってわたしの心を奪っちゃってるんですからっ」
 




あとがき
キャプテン翼の小〜高校生編及びゲーム版2〜5は最高の名作だと思います。
そして何より琥珀さん大好きだーと(ぉ
そんな想いを込めて書いた作品です。
最後に全キャラのポジション&中身キャラ表など。
ここまで読んでくださってありがとうございましたー。
 
七夜(ネイ) 2翡翠(岬) 11シキ(バチスタ)
6琥珀(翼)
k軋間(ゲルティス) 5一子(若島津) 4シオン(松山)   10先生(コインブラ)   9白レン(カルロス)
8アルクェイド(日向)
晶(三杉) 3シエル(ピエール) 7 ななこ(ナポレオン)

 
志貴(ジャイロ) 2蒼香(政夫) 11レン(カペロマン)
6ワラキア(シェスター)
kさっちん(若林) 5有彦(次藤) 4羽居(カルツ)   10 猫アルク(ディアス)   9秋葉(シュナイダー)
8ワルクェイド(ザガロ)
メカヒスイ(石崎) 3都古(和夫) 7ネロ(メオン)



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