「鳥児在天空飛翔 魚児在河里遊泳」
「……い、いきなり何?」

琥珀さんが突如謎の中国語(?)を喋りだした。

「ふむ。さすがに難易度が高かったですかね。では」

こほんと咳払いをする。

「いーまはーむかしのーばーびろーにあー」
「……バ、バビロニア?」
「わかりませんか?」
「うん」
「……心ですよっ!」
「いや全然意味が……」
「あーもう! わからないんですか志貴さんっ?」

どうやら何か元ネタがあるらしい。

「あの世でわたしに詫び続けろ遠野志貴ぃーーーーーーーーッ!!」
 
 





ライブア琥珀
会話編
「名言」






「……さすがに今のは無理がありすぎますね」

琥珀さんはとても渋い顔をしていた。

「で、何か元ネタがあるの?」
「はい。かの四角社の名作、ライブアライブです」
「あー」

名前だけは聞いた事があるような。

「ちなみに某アニメでこの題名が使われて話題になったんですが、内容は全然関係ありません」
「はぁ」

琥珀さんが何を言ってるのかさっぱりわからなかった。

「しかし志貴さんが知らないとお話になりませんねえ」
「ご、ごめん」

さすがに琥珀さんほどのゲーム知識は俺にはないのだ。

「このゲームには主人公が七人いまししてですね。それぞれにまったく違う時代、シナリオがあるんです」
「へえ」
「幕末編、西部編、原始編、SF編、現代編、功夫編、近未来編。どれも素晴らしいシナリオばかりでした」

目をキラキラ輝かせている琥珀さん。

こういう話をする時は本当に生き生きしている。

「そして各シナリオでイラストレーターが違うのも特徴ですね」
「そうなんだ」
「はい。近未来編は島本和彦氏がイラストを描いている事もあってか、熱いシナリオですよー」
「……なんか面白そうだね」

話している琥珀さんを見ていたら興味が沸いてきた。

「まあ最初にプレイするのは功夫編か幕末編あたりがいいと思いますけど」
「そうなの?」
「はい。功夫編はわかりやすい内容ですし、幕末編はアクション要素もあってとても面白いですから」
「ふーん」
「三人の弟子から後継者を選ぶんですが、わたしはレイ派です」
「いや派とか言われてもわからないから」
「うう、なんか調子狂いますね」

苦笑いしている琥珀さん。

「ご、ごめん」
「逆にSF編と現代編は最初にやるのはオススメできないですね」
「どうして?」
「RPGじゃないからです」
「RPGじゃない……?」

それってどういう事なんだろう。

「SF編は推理モノ……いえ、ホラーサスペンスと言ってもいいかもしれません」
「……怖いの?」
「そりゃもう。宇宙船の中、一人一人死んでいく仲間たち。謎の犯人。疑われるカトゥー」
「……確かにホラーだね」
「音楽も怖いですし。戦闘は一度も無いんですが、触ったら即死の罠やバケモノが」
「……あ、あはは」

聞いていて背筋が寒くなってきてしまった。

ばさっ。

「きゃあっ?」
「うわあぁっ?」

物音にびくついてつい抱きつき合ってしまう。

「な、なんだ本が落ちただけか……」
「あ、あはは、びっくりしましたねー」

慌てて距離を取る二人。

「……」
「……」

なんとなく気まずい。

「ち、ちなみにこのゲームには名言がとても多いです」
「名言ときましたか」
「はい。原始編は一切喋らないんでまあしょうがないんですが、他には全部あると言ってもいいですね」
「例えばどんな?」
「えーとですね……」

思い出すように腕組をする琥珀さん。

「さっき言った『まだわからないんですか……心ですよっ!』っていうのは功夫編のパロディです」
「へえ」
「暴力だけで解決しようとする悪漢に老師が言うセリフなんですが……カッコイイったらなんの」
「だろうなあ」

想像だけでなんだか燃えるシチュエーションだ。

「SF編は『フフ…この船を下りる前に、お前の煎れたコーヒーが飲みたいな…』とか」
「ふんふん」
「っていうか伍長がかっこよすぎでー」
「……いや伍長とか言われてもわからないから」
「あ、あはは」

いつもの展開だったら俺も乗れるんだけどな。

「西部編は最後の『人を…守ることを…もう一度教えられた…あんた達に!』がかっこいいですね。今まで無言だっただけに尚更光ります」
「それはかっこいいなあ」
「シナリオが特殊なんで初プレイには向いてないんですけどねー。面白いですよ」
「うん」

そのセリフを聞くためにだけでもやる価値がある気がする。

「現代編はラスボスとの会話が燃えます」
「どんなの?」
「……てめえ……てめえのやってる事は格闘技じゃない……」

大きく息を吸う琥珀さん。

「ただの殺りくだ!!」

どーん。

「ここ、りくがひらがななのがポイントですね」
「そ、そうなんだ」
「ナムキャットの足技……グレート・エイジャの飛び技……ハンの関節技、ジャッキーの力……モーガンのパワー。森部のじーさんの奥義が!」

びしっと構える琥珀さん。

「……そしこの俺の怒りが!!」

そのまま一歩近づいてくる。

「てめえをブッつぶす!」

シュッ!

「……とまあ、こんな展開で戦闘になるわけです」
「それは熱いね」
「はい。もう超燃えますよ!」

ガッツポーズを取る琥珀さん。

「まあ燃えで言ったら近未来編も凄いですが!」
「そうなの?」
「はい。無法松の捨て身の行動により動き出したブリキ大王……」

どうやら近未来はロボットものらしい。

「そして呪われた科学の力を作って動かされた隠呼大仏!」
「イ、インコ?」
「ざけんなよ……」

ここからセリフのようだ。

「……そんな身体にならなくてもな……一つにはなれんだよ!」
「お、お……?」
「なあ……」

知らないはずなのに、何故か熱いBGMが聞こえてくる気がする。

「そうだろ松ッ!」
「おおおおっ?」

熱い、これは熱いぞ。

「けるるーしょうわ」

がくっ。

「いきなりテンション下げないでよ……」
「いやそういう仕様なんで」
「そ、そうなんですか」
「うふふ」

にこりと笑う琥珀さん。

「そして七人をクリアした後の衝撃の中世編……」
「中世ってなんかオーソドックスっぽいけど」
「ええ。それが尚更クライマックスを衝撃的なものにしています」
「ふーん……」
「そのためのキーワードが」

びしっと俺の顔を指差す琥珀さん。

「あの世で俺に詫び続けろオルステッドーーーーーーーーーッ!!」
「ご、ごめんなさいっ?」

反射的に謝ってしまった。

「いや、あれはホントにいい作品でしたよ」
「みたいだね」

琥珀さんがここまで熱く語るんだから。

「いっまはー昔のーばっびろにあー」

再び何かのアニメソングのようなものを歌い出す琥珀さん。

「これ、近未来編のGO!GO! ブリキ大王!!の歌詞なんで覚えてくださいね」
「はいはい……」

まあきっとそのうちに、琥珀さんにプレイさせられる事になるんだろう。

「わたしは志貴さんがプレイしてくれると信じています」

ほら。

「信じてくれる者が一人でもいる限り、その人間を信じるんですよ!」
「う、うん」

琥珀さんは明後日の方向を指差しながら叫ぶのであった。
 

「幸せです……わたしにはネタに付き合ってくれる人がいる!」
 




あとがき
ライブアライブはそりゃもう名作ですよ?
最後のセリフは最終編のアキラのセリフです。
というわけで有名なストレイボウのセリフなんぞ。

フフフ…ハハハハハ!
ヒャーッヒャッヒャアア!!
おもしれえほど簡単に引っかかったぜ。ハッシュがブザマにもおっちんだ後だったしな!
後はテメエを絶望のドン底に突き落とすため王殺しの罪を負わせた!
だが…
テメエはここに来やがった!!
テメエはいつもそうやって!俺のしてぇ事をブチ壊しやがるッ!!
むかしッからそうだ!俺がどんなに努力しても!テメエはいつもそのひとつ上を行っちまうッ!!あの決勝大会の時もなぁッ!
俺があの夜どんなに苦しんだか…テメエにッ!テメエなんかにッ!! わかられてたまるかよッ!!
だが…俺は、今迄の俺じゃあねえ…
今こそッ! てめえをブッ倒しッ!! テメエの引き立て役だった過去に決別してやるッ!!
     
あの世で俺にわび続けろオルステッドーーーーッ!!!!

どうでもいいけどストレイボウと四季がものっそいイメージが被る(死



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