それぞれの生活、立場、環境などがあってそれだけに集中出来るとは限らないのだ。
だから同人においてではなく全てに置いて早く行動して悪いということはまずない。
思い立ったが吉日、やるなら今やれ。
それを肝に銘じて欲しい。
だって。
「お、終わらないよう……」
イベント前日の夜、わたしはまだラミカ裁断を続けているのであった。
「同人小説を作るまで」
その15
「……」
イベント当日、ラミカ裁断でいつもより遅く眠ったというのにやけに早く目が覚めてしまった。
やはり緊張しているせいなんだろう。
「ええと……」
とりあえず鏡を見たら頭が酷い事になっていた。
髪の毛を洗った後ドライヤーもかけずに眠ってしまったせいだ。
慌てて頭に水を被ってちゃんとした形に直していく。
「ふーっ……」
ついでに顔も洗って目をぱっちりさせる。
「よし」
早速服を着替え、出かける準備だ。
カバンの中に本は入っているし、お釣り用のお金も用意して入れた。
ラミカもOK、ラミカを入れるケースもオッケー。
宣伝用の表紙の拡大版もあるし、色々描くようの紙とペンも入っている。
「……っと、これを忘れちゃ駄目だな」
それからサークル入場証とスケッチブックをカバンの中へと入れた。
とりあえずこれで準備はよし。
わたしはひとつのカバンを背中に背負い、もうひとつを持ち上げる。
カバンは本が入っている大きいカートと持ち運び用のカバンの2つにわけてあるのだ。
もちろん本の入ってるカートは滅茶苦茶に重い。
「く……うっ」
この本が入っているほうは下に車がついているから平坦なところではころころ転がせるのだけれど、階段などはそうはいかないのだ。
階段をふらふらしながら降りていく。
「……ふう」
肩で息をしながら自転車のところへ。
自転車の荷台にカートをくくりつける。
上手くやらないと崩れてしまうのでもう二度と取れないんじゃないかってくらいに結び付けてしまった。
「んしょ……と」
ふらふらしながら自転車で駅の傍まで。
駐輪場へ自転車を預けて駅へとかけていく。
「はぁ……」
国際展示場までは片道で800円ちょいかかる。
この出費もなかなか痛いものであるが仕方が無い。
「準急に乗ってと」
だいたい電車の中では座って寝ているだけなのであっという間についてしまう。
「着いた……」
やってきました国際展示場。
いつきてもまあ不思議な形をした建物である。
「にしても」
噂によると今日は雨とのことだったのだが、これでもかってくらいの快晴だった。
それは嬉しい事なんだけれど厚着をしてきてしまったので、背中が汗で気持ち悪かった。
「おーっす」
「あ、久しぶり〜」
国際展示場前で別の学校に行っている相方と合流、中へと進んでいく。
コミケとかだと外に並ぶのが普通なのであっさり中に入れるのは不思議な感じだった。
「これがサークル入場証」
「おっけー」
サークル入場証を相方に渡し、二人そろって中へ。
「Aの9だったよね?」
「うん」
確か右端のほうだったのでカートを転がし歩いていく。
「えーと、どこかな」
「ここだよここ」
「あ、ごめん」
机の上にはイベントではお決まりの大量のチラシが置かれていた。
印刷所さんとかイベント告知のものである。
「とりあえずこれは椅子に置いて……と」
椅子は2つ借りておいたので片方にチラシを置いておく。
「じゃ、始めるか」
「うん」
イベント開始まであと一時間。
準備時間としては少ないくらいである。
まず青い色の布を机半分、わたしのスペースのぶん敷いておく。
「今日は新刊だけだっけ?」
「ううん。絵師さんのほうの委託があるから」
「そっか。じゃあとりあえず左開けておくか」
右のほうに新刊を3列くらいで積んでおく。
まずは最初なので1列10冊くらい。
「で、これがラミカなんだ。……ちょっと見栄え悪いけど」
「いかにも手作りって感じだな」
「うう」
ラミカ用のケースにラミカを上手い具合に配置してみる。
しかしそれはちょっとスペースを取ってしまった。
「最初は椅子に置いておけばいいんじゃないか?」
「あ、そうだね」
相方の指示によって椅子の上のチラシをカバンにしまい、そこにラミカのケースを置く。
「じゃあスケブに紙でも張っておこうか?」
「そだね」
ラミカ宣伝用に用意しておいた紙をセロハンテープで張りつけ、上手く立てる。
「いい感じじゃないか」
「そ、そうかな」
それから左のほうに表紙のカラーを拡大したものを同じようにスケブに張りつけ設置。
「あ、サークル名と場所書かなきゃ」
「だな」
サークル名と場所をマジックで記入。
うん、これでわかりやすくなった。
「値段はどうする?」
「ん、500円」
「まあ……ギリギリだな」
「うん、ギリギリ」
新刊小説本、500円と。
500のところを赤マジックで描いて目立つようにしておく。
「絵師さんはどうなったかね?」
「あ、見てこよっか」
「そうしなよ」
一応到着したとメールを送っておいたんだけどまた返事は来ていなかった。
絵師さんもサークル参加をしているのでその場所へ。
「あ、どうもおはようございます」
「あー。今行こうと思ってたんですよ」
とりあえず簡単な挨拶を済ます。
絵師さんのサークルの相方がコスプレした可愛い子でちょっとうらやましいなーと思った。
わたしもあれくらい可愛くなれればなあ。
「えっと、委託はどうしましょ」
「んー。じゃあ25で」
「はーい」
絵師さんと共にわたしのサークルへ。
「じゃあ、こっちはええと……30でお願いします」
「はい。あ。結局カバーはつけなかったんですね」
「あー、はい……その、作ったは作ったんですが微妙な出来で……」
一応サンプルを持ってきたのでそれを見せる。
「あー……」
なんだかその一言が全てを表現していた。
「で、で、ラミカはこっちです」
「いかにも手作りって感じですね」
「……はい、あはは」
やはり誰に見せても反応は同じようである。
「とりあえずこれも30個渡しておきますんで」
「わかりました。じゃあまた後で」
「はい。宜しくお願いします」
絵師さんは自分のサークルに戻られたので再び準備再開。
「お金をばらして……と」
「あと十分だぞ」
「わ、わかってるって」
準備が遅いので早めに来ておいてよかった。
あと、相方が手際のいい人で本当によかった。
「あ、とりあえずお昼までは遊びに行ってていいよ。わたしひとりで大丈夫だと思うから」
「そうか? 悪いなあ」
「ううん。気にしないで。あ、あそこのサークルのだけ買ってきてもらえるかな?」
「了解。じゃ、またあとで」
相方が移動しはじめた辺りでイベント開始の放送が流れた。
「さーて」
いよいよ勝負開始である。
続く