私は瀬尾たちと一旦別れ、穴の捜索を始めるのであった。
「トオノの為に鐘は鳴る」
その48
「ふう……」
穴の中を単独で捜索する。
ツルハシを使いながら進むのだけど、これがまたものすごく面倒だった。
宝箱がいくつかあったりするのだけれど、中身は大した物じゃないし。
「……看板?」
時折怪しげな看板があったりするのだけれど。
『ざんねん!』
「ふざけないでっ!」
誰が作ったのよこんなもの!
ストレスが溜まるばかりである。
「……はぁ」
結局、秘密については何もわからなかった。
ため息をつきながら戻る。
「あら……」
すると瀬尾たちの姿は既になく、新たな道が切り開かれていた。
「どうやら真面目にやってるみたいね」
道なりに進んでいく。
「あ。遠野先輩」
「順調みたいじゃない」
「はい。いい感じです。ところで……200G持ってきて貰えました?」
「ええ。受け取りなさい」
200Gの入った袋を瀬尾へ渡す。
「ありがとうございます! みなさーん! お金を貰いましたよー!」
「秋葉ちゃん、ありがとう〜」
「まあ頑張りますかね……」
「サボってなんかないわよ?」
「……」
ラスト一人は本当にちゃんと仕事をしてるんだろうか。
「ところで遠野先輩」
「なに?」
「この先の岩なんですが、なかなか固くて厄介で……ひとり100Gづつの400G貰えばなんとかなりそうですけど」
「……仕方無いわね。いいでしょう」
この際、多少の出費は覚悟しなくてはなるまい。
「その代わり、しっかり頼むわよ!」
「はーい」
再び捜索を開始。
……したけれどやっぱり収穫はゼロ。
「はぁ」
戻るとまた道が出来ていた。
「……意外と早いわね……」
実は掘りにくいというのは嘘だったんじゃないだろうかってくらいに。
「どうですか? 大分掘れましたよね?」
「ええ……」
確かに順調すぎるくらいに進んでいる。
「でも、この先の岩がさらに固くて掘り辛くなってるんですよ」
「また?」
「はい。それで、ひとり200Gづつの800G貰えればなんとかなるかも……」
「……足元を見てきたわね」
これだったら私一人で掘ったほうが早いんじゃないだろうか。
「遠野先輩は秘密を探さないといけないんですよね?」
「……」
「わたしも同人誌を描く為に急がなくちゃいけないんですよ。だから」
「わかったわよ! これが最後よ? まったく……」
「ありがとうございまーす」
「はいはい。頑張りますかね……」
「だからサボってなんかないわよ」
「……」
再び捜索を開始。
『ざんねん!』の看板に腹を立てつつも挫けずに進む。
がちゃ。
「……ん?」
見つけた宝箱の中には妙な石版が入っていた。
『真の心を伝えし時「黄金の剣」甦らん』
「……まことの心……ね……」
私がそれを伝える日は来るんだろうか。
「アルクェイドさんなら……」
きっとこんな事で悩んだりしない。
「……」
石版を道具袋に入れ、道を引き返す。
「掘れてるわね……」
大分奥深くまで進んできた。
そろそろ金か秘密かが見つかってもいいんじゃないだろうか。
「遠野先輩!」
「瀬尾?」
瀬尾が私の姿を見ると嬉しそうな顔をして近づいてきた。
「もうすぐ仕事が終わりそうです!」
「……金が見つかるってこと?」
「はいっ」
「そう……」
いよいよか。
「それはそうと、800G持って来て頂けました?」
「ええ」
おそらくはこれが最後のバイト代だろう。
「みなさーん! お金を貰いましたよ〜」
「秋葉ちゃんありがとう〜」
「あと少しだぁな」
「サボってなんか……あっ?」
ぼこっ!
「どうしたのっ?」
四条さんの掘っていたところに何か変化があったようだ。
「穴が開いたのよっ!」
「お……向こうになんかあるみたいだな」
「え〜? なになにー」
「ちょ……待ちなさい!」
慌ててみんなの後を追いかける。
「……これは……」
大きく切り開かれた空間の中央に、一本の剣が刺さっていた。
「これは黄金の剣『スネークキラー』である。黄金の剣、金色に輝く時。邪悪なるヘビの化身滅ぶ」
「瀬尾?」
瀬尾が地面に屈みこんで、模様のようなものを解読してくれた。
「故に最強の剣なり。されど抜くべからず……だそうです」
「これがウロボロスの恐れている秘密だったのね……」
確か奴らのボスはヘビの化身だと聞いた事があった。
「で……どうするんだ? 抜くのかい?」
「当然です。そうだとわかれば抜くしかありません」
「……ですよね……」
瀬尾は何故かこそこそと壁際のほうへ移動していた。
「何よ。何かあるの?」
「い、いえ、全然気にしないで下さい」
「……」
ええい、抜いてしまえ。
私は思いっきりその剣を引っ張った。
スポッ!
景気のいい音と共に剣が抜ける。
「これが最強の剣……」
それはずっしりと重く、その輝きは強さを象徴しているかのようだった。
ごごごごごごごごごごご。
「な……なに?」
突如地面が振動を始めた。
「は、はじまりましたよ皆さんっ!」
瀬尾が叫ぶ。
するとみんなは揃って壁際に走っていった。
「ちょっと……!」
ごごごごごごごごごごごごご!
ずんっ!
「ああっ! 逃げ道がっ!」
振動で掘ってきた穴が塞がれてしまう。
ごごごごごごご!
「一体何が……!」
私もみんなの元へ駆けよった。
次の瞬間。
ドバアアッ!
「ちょ……!」
剣の埋まっていた場所から吹き出したもの。
それは。
「金……ドロドロに溶けた金だわっ!」
金色に輝くマグマが地面から吹き出していた。
「やっぱりその剣はマグマの蓋だったんですよー!」
「あぶなーい! みんな逃げてー!」
だだだだだだだ!
「こ、こら!」
瀬尾の立っていたすぐ後ろに振動で空いた穴が出来上がっていた。
「私を置いていくなんて許さないわよっ!」
慌てて瀬尾たちを追いかける。
穴の先はすぐに外に繋がっていた。
「貴方たち! この金山の金がマグマだって知ってたの!」
マグマに追われ、全速力で駆ける私たち。
「はーい! 知ってましたー! っていうか全部視えてましたー!」
瀬尾が叫ぶ。
「でもお金欲しかったしー!」
これは四条さん。
「黙ってて悪かったなー!」
蒼香までグルだったなんて。
「こ……このバカものおっ!」
とにかくひたすらに走る。
金のマグマは私の真後ろにまで迫ってきていた。
「い、行き止まりです!」
視界の先には湖が見える。
「構わないでしょ! そのまま飛び込みなさい!」
「えいっ!」
「わー!」
「きゃーっ!」
どばあああっ!
無我夢中で飛び込んだ私。
激しい蒸気に巻き込まれ、意識が一気に薄れていってしまうのであった。
続く