むか〜しむかし。大変仲の良い2つの国に2人のお姫サマがおりました。

1人はチャッカリ者の真祖のお姫サマ。

もう1人はあわてんぼうの遠野家のお姫サマ。

2人は大抵ナニをやってもライバルでした。

そう思っているのは遠野のお姫サマだけなのですが、とにかくそれでも2人は良きライバルでした。
 

これはそんな2人のお姫サマの冒険の物語です。
 
 

「トオノの為に鐘は鳴る」
その2





「ハッハッハッハ」

「……っ!」
「いいかげん諦めたらどう? 妹」
「なにを言うんですか! 今のは油断しただけです! ……さぁアルクェイドさん! もう一度勝負です!」
「ふふふ、いいわよ。来なさい妹!」
「行きますよっ!」

ここは千年城にあるフェンシング道場。

ただ今練習試合の真っ最中。

試合を行っているのはこの城の主「アルクェイド」と。

お隣の遠野家の「遠野秋葉」の2人。

この2人のお姫さまは共通のある人物を狙った永遠のライバルでした。

世間知らず度は互角。

ルックスはお互い高レベル。

スタイルは正反対。

おつむの程度はほとんど同じ。

でも武術だけはアルクェイドに何故か勝てない秋葉サマでした。
 
 
 
 

「あははははは! またわたしの勝ちね」
「くっ……」

倒れた私の頭の上からアルクェイドさんの声が聞こえる。

「これで対戦成績はわたしの56勝0敗よ。妹はいつになったらわたしに勝てるようになるのかしら?」
「こ、このっ……!」

私が起きあがろうとしたその時。

「おい小娘ども! 大変じゃぞ!」

誰かがこちらへ向かって叫びながら向かってきた。

「何よ時南じぃ。騒々しいわね」
「ああ。今届いた情報なんじゃがな……」

アルクェイドさんお付の時南さんはやたらと口が悪かった。

これでも名のある名医らしいのだけど。

「我が国と友好のあるブンケ国が、突如現れたナゾの軍団『ウロボロス』に襲われて占領されてしまったというのじゃ!」
「なんですって!」
「……ブンケ国と言えば」

絶世の美女と噂の高い(どうせ自分で勝手に言ってるだけなんでしょうけど)お姫サマが治められているとかいう平和な島国である。

「ふーん。それで? そこのお姫さまはどうしたのかしら?」

アルクェイドさんはまるで興味なさそうな顔をしていた。

「さて、そこまでは知らんのう」
「気の毒な話ですね」

けれどそれは私も同じである。

「ええ、わたしたちには関係ないけどね」

かっこいい王子様がいるとかならまだしも。

そもそも私には既に心に決めた人がいるのだ。

「……おいおいおヌシら。それはいくらなんでも薄情なんじゃないのか?」

時南爺は苦笑いしていた。

「だってわたしの国じゃないもーん」
「わざわざ助けに行く必要なんてありませんよ」
「あらあら、そんな事を言っていていいのかしら?」
「……む」

時南爺の後ろから見ただけで綺麗な女性が現れた。

私の感覚がこの人は敵だと訴えてくる。

そんなに悪い人には見えないのだけど、何故だろう。

「おお、朱鷺恵か」
「お父さん。大事な事を言ってないじゃないの」

どうやら時南爺の娘さんのようだ。

「おお、そうじゃったそうじゃった。実はな」
「ええ何?」
「遠野のガキんちょがたまたまブンケ国を旅行中だったらしくての」
「遠野のガキ……ってまさか!」

ちょっと前に私の兄さん、遠野志貴は旅に出ていた。

そして帰国予定日は過ぎたというのに未だに帰って来ていないのだ。

「しかも志貴くん、姫のいるフジョー城に行くって言ってたのよ」

朱鷺恵さんはどこか遠くのほうを見ながらそう言った。

「ちょ……志貴くんって貴方。志貴とどういう関係なの?」

アルクェイドさんが朱鷺恵さんを睨みつける。

なるほど、私が敵だと感じたのはこのせいだったのか。

兄さんったらいつの間にこんな人と。

「ああ、ただの医者と患者よ。うちのお父さんがお医者さんだから」

少し困った表情でそんな事を言う朱鷺恵さん。

「ははは、むしろそっちのほうが本業でしてな……」

照れくさそうにヒゲを撫でる時南爺。

「どうも怪しいわねえ」

なんとなく他に関係があるような気がする。

けれど今はそれを追求している場合じゃなかった。

「ウロボロスが現れた国に志貴がいるってことは……危ない目に遭ってるかもしれないのよね。こうしちゃいられないわ」

兄さんが絡んでるかもとわかった途端にアルクェイドさんはやる気を出していた。

「じぃ! 船の準備をなさい! すぐに出陣よ!」
「ふふふ。そう言うと思っておったわ。既に港に用意はしておるぞ」
「流石に仕事が早いわ。さあ、レッツゴー!」

アルクェイドさんはすらこらさっさと港へ走って行ってしまった。

「……兄さんが関わっているなら私も黙っているわけにはいきません」

私は姫の方には丸っきり興味ないけど。

あの兄さんの事だ。

「絶世の美女」とかいうフレーズに騙され、姿を見に行ったところで事件に巻き込まれたに違いない。

「待っていて下さい、兄さん!」

捕まえて取っちめて……もとい、助け出してあげますからね!
 
 
 
 
 

「よーそろー!」

港ではアルクェイドさんが既に船首に乗って妙なカッコをつけていた。

「急がないと……」

私もその船に飛び乗る。

「おっとそうはいかないわよ!」
「なっ……」

乗った瞬間私は風によって吹き飛ばされてしまった。

「おっと妹。あなたがついて来る必要はないわよ」
「なんですって!」
「志貴はわたしが助けるんだから。妹はその間に闘いのウデでも磨いておきなさい。あはははは!」

ぼぉー!

汽笛が鳴り、船が動き出してしまう。

「……っ!」

おのれアルクェイドさんめ。

一人で抜け駆けなどさせるものですかっ!

「やれやれ、置いてけぼりじゃのう」
「そんな……冗談ではありません! どこかに船があるはずです!」

私は港ぞいを走って船を捜した。

「……あった!」

多少ボロっちいけどこの際文句は言えない。

これをちょっと拝借してしまう事にしよう。

私は颯爽とそのボロ船に飛び乗った。

どんっ!

「な、何をするんです!」

ところが中にいたオヤジに押し出されてしまう。

「おい、勝手にオレの船に乗り込んでくるたぁ、どーゆーこった?」
「邪魔をしないで下さい! 私は急いでいるんです! ならば船の代金を受け取りなさい!」

私は懐に入れていた金貨をそこいらじゅうにばら撒いた。

金額は把握してないけれど、だいたい8999999Gくらいはあるんじゃないだろうか。

「ヒエーッ! こ、この金貨の山はーっ!」

男は驚きの余りか、空高く飛んで行ってしまった。

「ふふふふ。私は遠野家の主、遠野秋葉! 愛しの兄さんのために糸目はつけません!」

この程度のお金。私にとってははした金にすぎないのだ。

もちろん私が動かせるわけが無いので船長も買収して運転してもらう。

「さあ出発です! アルクェイドさんに遅れを取るものですか!」

私の乗った船はゆらゆらとブンケ王国目指し動き出すのであった。
 
 
 
 
 
 

カネにモノを言わせた金持ちお姫サマ秋葉。

アルクェイドに先を越されず、悪の軍団ウロボロスに捕まっているかもしれない志貴を見つける事が出来るのか!

ついでにお姫サマも助け出し、国を救う事が出来るのか!
 

さぁ、物語のはじまりはじまり!
 
 

続く



あとがき(?
カエルの名演出として拡大フォントがあります。
今回の仕様ではそれも再現してみましたが、いかがなものでしょう?
うっとうしいようだったら普通バージョンも用意しますのでー。


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