カネにモノを言わせた金持ちお姫サマ秋葉。

アルクェイドに先を越されず、悪の軍団ウロボロスに捕まっているかもしれない志貴を見つける事が出来るのか!

ついでにお姫サマも助け出し、国を救う事が出来るのか!
 

さぁ、物語のはじまりはじまり!
 
 

「トオノの為に鐘は鳴る」
その3





ざざぁ……

「……着いたみたいね」

抜け駆けアルクェイドさんを追いかけて、ブンケ王国へ到着した。

小さな港で私を迎えてくれたのは老人ひとりだった。

「おお、またしても救いの手が……貴方は遠野家の秋葉サマ!」
「ふふふ、こんなところでも私の名前は有名なのね」

こう言ってはなんだけど、遠野とブンケでは遠野の力のほうが圧倒的に上なのだ。

当然こんな町人だって遠野の事は知っているわけである。

「おーい皆の衆! 遠野秋葉サマがいらっしゃったぞー!」

老人は村のほうへと駆けていった。

「ふふふ」

さてどんな出迎えをしてくれるのかしらね。

「えらいコトですじゃ! えらいコトですじゃ!」
「お爺さん、落ち着いて話してください」

村に入るなり私は住人らに囲まれてしまった。

「秋葉サマ! 我々の話を聞いて下さいませ!」
「……ええ」

どうせこの状況じゃ聞きたくないって言ったって聞かされるんだろう。

「フジョー城のお姫サマの『聖なる力』で我々は平和に暮らしておりました」
「そこへ突然ウロボロスが上陸し、この町にあった全てのモノを奪い去ってしまったのです」
「……全て」

ということは壮大な歓迎を期待しても無駄ということか。

「はぁ」

最先の悪いスタートである。

「その上奴らはフジョー城に攻めかかり、ついに城を占領してしまいました。姫サマは今も城の奥に囚われの身……」
「……ふぅん」

その辺の話は私にとってはどうでもよかったりする。

「情報は本当だったのね。それよりも、聞きたい事があるのよ」
「はぁ」

私が聞きたいのはもっと重要な事だ。

「遠野志貴……私の兄さんを知りませんか?」
「なんと! 秋葉サマにお兄さまがいらしたのですか?」
「……ええ」

兄さんは数年前までこのブンケ王国のアリマで暮らしていたのだ。

最近になって遠野に戻って来て、私と一緒に生活をしていたのだけど。

「急用が出来たって旅行に行ったきり……」

どこをほっつき歩いてるのかと思ったら、またブンケ王国に戻っていたとは。

「その辺りの情報ははっきりとは……」
「……そうよね」

私と違って兄さんの情報は極端に少ない。

その辺を歩いていたってただの村人Aくらいの印象しかないだろう。

「あ、秋葉サマ! どうか姫サマをお救い下さい!」
「……」

空気の読めない町人がそんな事を叫んでいた。

「まあ……任せておきなさい。多分助けると思うから」
「た、たのもしや! ご無事をお祈りいたしまする!」
「……はぁ」

ほんと、最先悪いスタートだわ。

「……多分兄さんの情報を知っている人は……」

兄さんが住んでいたアリマの人間だけだろう。

まずはアリマを目指さないと。

「おおーっ! 秋葉サマだ! 噂通り美しいお方だ!」
「……ん?」

考えながら歩いていると私はまた村人に囲まれてしまった。

「ほんと。このお方ならウロボロスなんてイチコロね!」
「きっとこの国に平和を取り戻して下さるに違いない! それにしても美しい……」

なんだかよくわからないけど、褒められるのは悪い気分ではない。

「ふふふ、そうでしょうそうでしょう。私に任せておけば全て安心よ! おーっほっほっほっほ!」

私はつい高笑いをしてしまった。

「……やっぱりアルクェイドさまのおっしゃった通りだな」
「ほっほ……? アルクェイド? アルクェイドさんが何て言っていたんです?」
「あ、いや、それは……」

露骨に目線を逸らせる町人。

「言いなさい」

睨みをきかせる私。

「は、はぁ……その、今度ここに来るお姫サマは……おだてに乗りやすい、単純なヤツだ……と」
「なにーっ!」

……っと、私とした事が品の無いセリフを吐いてしまった。

「アルクェイドさんめ、ここまで来て私の悪口を?」

まったくなんて下らない事をする人なんでしょう。

「貴方たち! アルクェイドさんは今どこにいます?」
「あ、アルクェイドさまは単身でフジョー城へと向かわれました」
「……あの人ちゃんと考えて行動してるのかしら?」

フジョー城にいったって兄さんがいるとは限らないのに。

「まあいいわ」

せいぜい無駄足を踏んでればいいのよ。

「……兄さん……」

ああ兄さん、今どこにおられるのでしょうか。

「あーっ!」
「?」

叫び声のした方を見ると、なんだかどこかで見たような女の子がいた。

「……!」

女の子はそのまま脱兎の如く駆けだしてしまう。

「ちょ、ちょっと!」

一体なんだというんだろう。

私は思わずその子を追いかけてしまった。

「おかぁさん、おかぁさん! 遠野のアキハがいたよーっ!」
「……人を呼び捨てにするとは」

なんて礼儀のなってない子なんだろう。

「み、都古……!」

その子に呼ばれて母親らしき人物が走ってくる。

「……あ?」

その人には見覚えがあった。

「啓子……さん?」

啓子さんは兄さんがアリマで暮らしていた時に世話をしてくれた人なのだ。

「え? ほ、本当に秋葉さまなのですか?」
「ほらおかぁさん! 行ったでしょう? ホンモノのアキハっ! アキハは絶対来ると思ってたんだ!」
「……じゃあ、この子は……」

小さい時に一度だけ会った事がある。

「都古……なの?」

都古はその頃はまだ幼かったから覚えてないだろうけど。

「ここで会ったが百年目ー! 覚悟ー!」
「……は?」

いきなり私に突撃してくる都古。

「ちょ、な、何なのよいきなり!」
「お止めなさい、都古!」

啓子さんが叫ぶ。

「だ、だっておかぁさん! コイツがお兄ちゃんをさらったんだよ!」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい。誰が兄さんをさらったですって?」
「都古。言ったでしょう? 志貴さんはウロボロスを倒すために旅に出たのよ?」
「……え?」

今啓子さんが聞き捨てならないような事を言ったような。

「ちょ、啓子さん。兄さんがウロボロスを倒すためにって……どういうことなんです?」
「あ……!」

慌てて口を押さえる啓子さん。

「教えて下さい。大事な事なんです!」
「……」
「おかぁさん! アキハなんかに教えなくて……」
「都古は黙ってなさい!」
「……う」

私が叫ぶとたじろぐ都古。

「お願いします啓子さん。兄さんは今……どうしているんです?」

もう一度尋ねる。

「……わかりました。いずれはわかる事ですし……お話しましょう」

啓子さんは覚悟を決めたかのように頷いた。

「ありがとうございます」

それにしても。

あのスカポンタンな兄さんがウロボロスを倒せるはずなんてないのに。

何か私の知らない秘密が兄さんにあるんだろうか。
 

……まさかね。
 

続く



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