「……打ち解けると案外いい子なのねえ」

最初はなんてムカツク子供だろうと思ったけれど。

「二人同じ義兄を持った妹同士」

やはり何か通じ合うものがあるのだろう。

「よしっ!」

都古のおかげでやるべき事もはっきりした。

「さあ、切って切って切りまくるわよっ!」
 

私はさっそくそのすぐ切れてすぐ生える木とやらを切断し始めるのだった。
 
 

「トオノの為に鐘は鳴る」
その11





「よっと……」

きゅいきゅいきゅい。

「……ほんとによく切れるわね」

その木はまるでバターか何かを切るみたいにあっさり切れてしまった。

「何もないか……」

切ったところを調べてみても何の変哲も無い切り株があるだけである。

さすがにいきなり当たりが出るわけがなかった。

「他に探してみましょう」

木の形は覚えたから後はそれを探すだけ。

しゅっしゅっ。

切り株の隣ではオバケサボテンがジャブを放っていた。

「……」

見た感じ、とても強そうには思えなかった。

「もしかして……」

今の装備だけでもこのサボテンに勝てるのではないだろうか。

ふとそんな事を考えてしまった。

「モノは試しよね」

これで勝てれば面倒な事をしなくても済むし。

「覚悟なさい!」

私が近づくとオバケサボテンは即座に反応して攻撃を仕掛けてきた。

ばこっ!

「痛っ……!」

買ってきた盾で防いだのに手がしびれてしまった。

「こ、このっ!」

ノコギリで攻撃を仕掛ける。

ずばっ!

「……」

少し胴体(?)が切れたものの、オバケサボテンはまるで衰えた様子もなくパンチを放ってきた。

「くっ……!」

まずい、このままじゃ力押しでやられてしまう。

「に、逃げるが勝ちよ!」

三十六計逃げるに如かず。

私は即座にオバケサボテンから離れた。

「……」

サボテンには足がないので追いかけてくる事はなかった。

「駄目だわ……」

今の私じゃあれに勝てそうにない。

「……地味にアイテムを探さなきゃいけないのね……」

そういうのは私のキャラクターじゃない気がするのだけれど。

「仕方ないわ……」

白鳥は一見華麗に見えても水の中では必死に足を動かしている。

華麗さの裏には努力も必要なのだ。

「……絶対に兄さんには見せられない姿よね」

ノコギリ片手にアイテムを探す私。

なんて滑稽な図だろう。

「ええい!」

その怒りをぶつけて木を切りまくっていく。

「……あ」

すると木を切ったところにはしごが現れた。

「どういう仕組みなのかしら……」

元々地下の空洞があったところに木を生やした?

「……まあどうでもいいわ」

とにかく大事なのはアイテムがあるかどうかだ。

はしごを降りた先には宝箱があった。

「さすがにあの人はいないわね」

知得留先生の姿が無いことに胸を撫で下ろす。

撫でる胸すらないとかいうツッコミはいらない。

がちゃ。

「……あ」

中にはハート型の石が入っていた。

確かこれを持っているだけで体力が増えるというものだ。

「いい感じだわ」

こんな感じで他にもアイテムがあるはず。

「せいっ!」

ずばっ。

「このっ!」

ざしゅっ。

木の切断と雑魚退治を同時に行いながら歩いていく私。

「……ん」

行き止まりの道の中央にいかにも怪しげな木が生えていた。

「これは……」

まさに切ってくれと言わんばかり。

「よし!」

ならば切ってやろうじゃないの。

案の定、木の下にははしごがあった。

「これで……」

何かがあるはず。

「待っていましたよ秋葉さん。このアイテムを持っていって下さい」
「……貴方、どこから入ってきたんです?」

そこには例の知得留先生がいて、隣に宝箱が置かれていた。

「それはヒミツです」
「そ、そうですか」

別に私も知りたくて聞いたわけではない。

ただ貴方は何がしたいんだと暗に言いたかっただけなのだ。

「……」

宝箱を開ける。

「これは?」

中には月の形をした石が入っていた。

「それはスピードストーンです。あなたの攻撃回数を増やしてくれます」
「……ふぅん」

言われてみれば確かに体が軽くなったような。

「ではわたしはこれで」
「まさかそれだけ言うために潜んでたんですか?」
「……」

知得留先生は何も答えずにはしごを昇っていってしまった。

ほんと、何者なんだろう。あの人。

「よっと」

はしごを昇るとちょうど目の前をモンスターがうろついていた。

「……試してみようかしら」

さっそく攻撃を仕掛けてみる。

ずば、ずばっ!

まるで自分の体じゃないみたいに軽い。

「すごいわ……」

敵に反撃の間を与える事なく倒せてしまった。

「これならあのオバケサボテンも!」

苦もなく倒せるはずだ。

わざわざこんなアイテムを用意してくれてるなんて、実にありがたい。

「ありがたいけど嬉しくはないわ……」

あんな怪しげな人物の力を借りなければマトモに戦えないだなんて。

実に複雑な心境だった。

「ま、まあいいわ」

とにかく大事なのは先に進む事だ。

そんな些細な事でうだうだ言ってはいられない。

「覚悟なさいオバケサボテン!」

私は来た道を引き返してオバケサボテンの元へと向かった。
 
 
 

「……ほんとにすぐ生えるのね」

オバケサボテンのところに戻るとさっきノコギリで切ったはずの左右の木がもう生え揃っていた。

「このサボテンもすぐ甦ったりしないでしょうね……」

そんな不安を抱きつつノコギリを構える。

体力も全快、準備は万端。

「覚悟っ!」

オバケサボテンめがけてノコギリを振り回す。

ずばずばっ!

「!」

攻撃回数が増えただけで効果は段違いだった。

どごっ!

「……っ」

 相変わらずパンチの威力は凄いけれど。

「このっ!」

手数で圧倒すれば!

ずばずばっ!

オバケサボテンは確実にダメージを受けていた。

「まだまだですっ!」

激しい攻防が続く。

そしてついに。

ずばっ!

「……!」

オバケサボテンはまっ二つになって地面へ倒れた。

 「はぁっ……」

 倒せはしたものの、私の体はボロボロになってしまっていた。

「……でも」

そのフォローは万全だ。

ここに来る手前で体力を回復するイケイケ玉を発見したのである。

一旦そこまで引き返して体力を回復。

「いないわね……」

 戻ってきて復活していたらどうしようと思ったけれど、さすがにあれだけのものがすぐに復活するということはないみたいだった。

これで先に進むことが出来る。

景色を堪能しつつ山を登っていく。

わさわさ。

「?」

しばらく進んでいくと何かの動く音が聞こえた。

「……うそ……でしょ?」

私の目の前には信じられない光景があった。
 

先ほどのオバケサボテンが大量に発生して、しかも移動していたのである。
 

続く



感想用フォーム 励みになるので宜しければ感想を送って下さいませ。
名前【HN】

メールアドレス

更新希望ジャンル
屋根裏部屋の姫君   ななこSGK   トオノの為に鐘は鳴る   短編    ほのぼのSS   シリアスSS
その他更新希望など(なんでもOK)

感想対象SS【SS名を記入してください】

感想、ご意見【良い所でも悪い所でもOKです】



続きを読む

戻る