「これではっきりしたわね。この子たちを連れてきたのも藤堂ってやつだったのよ」
「そう……みたいですね」

まさか蒼香と羽居まで利用するだなんて。

「ふ、ふふふ……これはきつい仕置きが必要なようです」
 

藤堂……覚悟していなさいよ!
 
 

「ダウンタウン月姫物語」
その18






「一応ここが最上階ね」

私たちは階段を昇り三階までやってきました。

「生徒会室もどこかにあるはずです。探しましょう」
「なんで生徒会室なの?」
「藤堂は冷峰学園の生徒会長ですからそこにいるのが当然です。普通の生徒はまず近寄りませんし。兄さんがいる可能性も高いわけですね」
「なるほど。妹にしてはさえてるわね」
「……一言多いんですよあなたは」

それらしき教室を探して回る。

相変わらず生徒の姿はどこにもない。

「今日って休日だったとかいうオチないわよね?」
「少なくとも世間一般では平日だったはずですが」

まさか私たちに不安を与えるためだけに生徒をおっぱらったというわけではないでしょうし。

「それは考えても仕方のない事ですよ」
「……まーね。えーとこの先は……と」

さらに奥へと進んで行くと。

「あっれー?」

アルクェイドさんが素っ頓狂な声をあげた。

「なんです?」
「あそこ……」

と言われその方向を見てみる。

「……え?」

私まで間抜けな声をあげてしまった。

「あれってさっき倒したメイドよね?」
「え、ええ……」

そう。そこに立っていたのは翡翠。

お馴染みのメイド服といい顔つきといい間違いありませんでした。

「目を覚まして先回りして来たのかしら?」
「……それにしたっておかしいでしょう。階段はあそこしかないのに」

羽居と戦っていたのも階段のすぐ傍だったから気付かなかったというのはあり得ない。

「うーん」
「ふっふっふ、ふふふふふふふ、うふふふふふ」
「……ん」

どこからともなく謎の笑い声が聞こえた。

「誰?」
「ついにここまでやって来たアルねー」
「……アル?」

なんだろう、その胡散臭いキャラクター付けは。

「とおうっ!」

くるくるくる、しゅたっ。

その人物は私たちの目の前に回転しながら飛んできて、華麗に着地した。

「ワタシたちがダブルドラゴンと呼ばれている竜一と竜二アル! ここからは生かしては返さないヨ、覚悟するヨロシ!」
「……」
「……」

怪しい動きをする自称竜一。

「で……言いたい事はそれだけかしら、琥珀」

私は頭を抱えながらその人物の名前を呼んだ。

「コ、コハクって誰の事アルかっ? ワタシ知らないアルよっ? 着物がよく似合う美人で器量よしのコハクさんなんて人見た事ないアル!」
「ええ、そんな琥珀は私も見た事ないわ」

いくらなんでも自分を美化しすぎである。

「へぇ。結構いいチャイナ服ねえ。高かったんじゃない?」

よくわからないところに感心しているアルクェイドさん。

「ええ。でもまあ秋葉さまの口座からちょちょいとお金を引き落としただけなんで」
「……やっぱりあなた琥珀じゃないのっ!」
「はっ! し、しまったアル! はめられたアルよっ!」

今のはハメでもなんでもない。琥珀が勝手に自滅しただけだ。

「さあ覚悟はいいでしょうね琥珀。あなた花園大橋で協力するような事言っておいて……なに? あなたの正体がダブルドラゴン? なら兄さんをさらったのもあなたってことでしょう!」
「そ、それは違いますよー。わたしは志貴さんを人質に取られて仕方なくですねー」
「言い訳無用! 覚悟なさい!」

相手が琥珀なら一切遠慮はいらない。

普段の鬱憤を晴らす意味でも全力で戦ってあげるんだからっ。

「うわ、ちょ、待ってくださいよ」
「聞く耳持ちません!」
「……こうなったら仕方ありませんね。使いたくはなかったんですけれども。ポチっとな」

そう言って翡翠の首筋を押す琥珀。

ガキィーン!

「え?」
「ん? なに?」

翡翠がガッツポーズを取ると、関節部分から機械のような音が聞こえた。

「ふふふ。これぞ遠野グループと藤堂グループの力が合わさった最高傑作メカ翡翠ちゃんwithダブドラバージョンですっ!」
「め、メカ翡翠?」
「そうです! ぷりちーな翡翠ちゃんの外見にメカの装甲とパワー。さらに忍者の末裔ダブドラのカンフー技をも身につけた最強ユニットなのですよ!」
「……もはや意味がわからないわね」

何故忍者の末裔なのにカンフー技なのか。

「文句はその強さを見てから言ってください。さあ、メカ翡翠ちゃん、ゴーッ!」
「カクゴシロ」

私たちに向かってくるメカ翡翠。

「まったく無駄なお金ばかり使って……!」

こんなものすぐスクラップにしてあげますっ!

ぶおっ。

私の目の前でジャンプするメカ翡翠。

「叩き落としてくれます!」

アッパーカットでそれを迎撃に向かう。

「リュウビランプウキャク」

ブオオオオオオッ!

「ちょ……きゃあああっ!」

空中で不自然に停止して回転するメカ翡翠に私は吹き飛ばされてしまった。

「ダブドラ必殺技その1竜尾嵐風脚ですっ! そう簡単には落とせませんよー」
「舐めた真似を……!」
「ふん、妹は簡単にやっつけられてもわたしはそうはいかないわよっ!」

アルクェイドさんがメカ翡翠に向かって行く。

ぶおっ。

またメカ翡翠が飛んだ。

「……甘いっ」

ギリギリの間合いで急停止するアルクェイドさん。

ブオオオオッ!

メカ翡翠の足はアルクェイドさんに当たらず空しく回転していた。

「そして着地後は隙だらけ……もらった!」

着地際を狙って攻撃を仕掛けるアルクェイドさん。

シャアンッ!

「え……」

一瞬何が起こったのかわからなかった。

攻撃を仕掛けたはずのアルクェイドさんが吹っ飛んでいたのである。

「くう……うっ」

空中で受身を取り着地するアルクェイドさん。

「何をされたんですっ?」
「……アッパーよ。着地した瞬間の反動で……やられたわ」
「それこそダブドラ必殺技その2! 天殺竜神拳ですっ! 連打すればまず接近不能ですよーっ」
「ぬう……」

シャアンシャアンシャアンシャアン。

琥珀の言葉通り小さく飛んでのアッパー攻撃を連打するメカ翡翠。

「あれじゃ確かに近づけないわ」

アルクェイドさんが一瞬渋い顔をしていた。

「でも動きが遅いから余裕で背後に回りこめるわよっ!」

そう言って素早くメカ翡翠の背後へ移動するアルクェイドさん。

「これでっ!」

遠距離から振りかぶる。

一気に突進して攻撃を仕掛けるつもりなんだろう。

「無駄ですよっ! メカ翡翠ちゃん! ダブドラ必殺技その3っ!」

ピキーンとメカ翡翠の目が光った。

「アルクェイドさん! 危な……!」

私の言葉が終わる前にメカ翡翠は体の向きを変えていた。

そして、アルクェイドさんへ向けてものすごいスピードで飛んでいったのである。

そう、イチゴさんのニトロアタックを空中で放つような感じだった。

「ぐ……ああっ!」

膝蹴りを食らって吹っ飛ぶアルクェイドさん。

「これぞ爆魔龍神脚! 遠距離攻撃だって完璧なのです!」
「強い……」

これは間違いなく今までで最強の敵です。

「まずいわよ……これ」
 

このピンチ、一体どう乗り切ればよいのでしょうか?
 
 

続く


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