「ぐ……ああっ!」

膝蹴りを食らって吹っ飛ぶアルクェイドさん。

「これぞ爆魔龍神脚! 遠距離攻撃だって完璧なのです!」
「強い……」

これは間違いなく今までで最強の敵です。

「まずいわよ……これ」
 

このピンチ、一体どう乗り切ればよいのでしょうか?
 
 

「ダウンタウン月姫物語」
その19






「ふっふっふ。どうですかメカ翡翠ちゃんの力っ! 今ならごめんなさいと言えば許してさしあげますよ?」
「ふざけた事を言わないで! 誰があなたなんかにっ!」

イチゴさんや蒼香になら負けても悔いは残らないだろうけど、琥珀に負けるというのだけは我慢できない。

「アルクェイドさんっ! たかがメカごときにいいようにやられてどうするんですかっ! あなた強いんでしょうっ?」
「……わかってるわよ。油断しただけ。次はやられないんだからっ」

再びメカ翡翠へ向かっていくアルクェイドさん。

「あ、ちょ!」

頭に血が登ってしまったのかまるで止まる様子がない。

「メカ翡翠ちゃん、竜尾嵐風脚っ!」

ブオオオオオオッ!

「くっ……うっ」

回転キックを食らい。

「天殺竜神拳っ!」

シャアンッ!

「うあっ!」

アッパーでかちあげられ。

「トドメの爆魔龍神脚ーっ!」

キャシューンッ!

「きゃあああああっ!」

落下したところに突撃を食らって吹っ飛んでいった。

「なんて連携なの……」

隙がまるで見当たらない。

「まだまだっ!」

首をぶんぶん振りながら起き上がるアルクェイドさん。

「戦えますか?」
「当たり前でしょっ!」
「そうですか……ならっ!」

一人相手では強敵ですが二人がかりならどうでしょうか。

アルクェイドさんが右から、私が左から向かっていった。

「無駄ですよっ! 竜尾嵐風脚っ!」
「ぐっ!」
「生意気な……っ」

その回転攻撃に近づく事が出来ない。

「ふっふっふ。メカ翡翠ちゃんは攻撃防御ともに完璧なのです!」
「……そんな事認めないわっ!」

琥珀の作ったメカが完璧であるわけがない。

どこかにつけいる隙があるはず。

「妹。二人で攻撃するってのは間違いないと思うわ。一瞬攻撃のタイミングが鈍ったから」

さすがは格闘バカのアルクェイドさん。やられてもただでは起きてきませんでした。

「ならあなたが接近戦で行き、私が遠距離でサポートというのはどうでしょうか」
「……なんかずるくない? それ」
「あなたのほうが頑丈じゃないですかっ!」
「まあいいけど……ちゃんとやってよねっ」

再び突進を仕掛けるアルクェイドさん。

「檻髪といきたいところだけど……」

琥珀の関わったメカから略奪なんてしたくはない。

「よってその辺の道具を投げて援護しますっ」

教室のドアを開けると体育会系の生徒が多いのか、ダンベルやらタイヤやらが転がっていた。

「……タイヤが転がってるのはおかしい気がしますけど」

とにかく使えるものならなんでもいい。

「え、えいっ!」

担いでタイヤを放り投げた。

ごろごろごろ……ぱたん。

「あ、あら?」

思いっきり投げたはずのタイヤは大した距離を飛ばずに床に落ち、転がって倒れてしまった。

「ちょっと何遊んでるのよ妹っ!」
「あ、遊んでませんっ! ……これならっ!」

今度は小さい鉄の玉を投げてみる。

ひょーん……ごん、ごんごん……

「……さっきよりも進まない」

高さは天井近くまで行ったけれど飛距離はてんで駄目であった。

「遊んでるじゃないのっ!」
「で、ですから遊んでいませんって!」

どうしてこうなってしまうんでしょう。

「きゃああっ!」
「ん」

見るとまたアルクェイドさんが竜尾嵐風脚を食らって吹っ飛んでいた。

「妹っ。ちゃんと援護してよっ!」
「……いえ、わかりましたアルクェイドさん。これなら勝てるかもしれません」
「え?」
「今度は私が前に出ますっ」

わたしは鉄球を持ってメカ翡翠へ向かって行った。

「ふ、甘いですよ秋葉さまっ! メカ翡翠ちゃん! 竜尾嵐風脚!」

メカ翡翠が跳躍する。

「甘いのはそっちよ! いくら技が強力だって何度も見れば!」

アルクェイドさんがやったように目の前で緊急停止する。

そのまま空中で回転しているメカ翡翠。

そして回転が終わり落下を始めた。

「今よっ!」

思いっきり振りかぶって鉄球を投げる。

鉄球はさっきと同じように真上へ飛んでいき。

ごん。

メカ翡翠の顔面に突き刺さった。

どてん、ごずん、めき、ピピ、ピピピピ……

激しく転がって地面に倒れるメカ翡翠。

顔からはぷすぷすと煙が出ていた。

「そ、そんなっ!」
「ちょろいもんよ」
「やるじゃない妹っ」

しょせんはメカ、人の臨機応変さには勝てなかったということです。

「リロード……」
「げ」

ところが顔から煙を出しながらもメカ翡翠は立ち上がってきた。

「さ、さすがはメカ翡翠ちゃんですっ。こんな危険な鉄球はポイしちゃいますっ!」
「あ、ちょっと!」

鉄球攻撃にはさすがに危険を感じたのか、琥珀は窓を開けて鉄球を投げ捨ててしまった。

「今ので倒せないなんて……」
「倒せないなら何度でもやるのよ。まだアイテムはたくさんあるんだからっ」
「……ええ。そうですね」

まだタイヤもダンベルもある。

同じ事をやればいいだけだ。

「むうう……メカ翡翠ちゃん! もっと積極的に攻撃しちゃえっ! 反撃できないくらいにっ!」
「カシコマリマシタ」

さっきまでは私たちの攻撃に対応するだけだったメカ翡翠がこちらへ向かってくる。

「妹はタイヤッ。わたしはダンベルでいくわよっ!」
「ええっ」
「バクマリュウジンキャク」

アルクェイドさんへ向けて突進して行くメカ翡翠。

「えーいっ!」

そして思いっきりメカ翡翠へ向けてダンベルを投げつけるアルクェイドさん。

キンッ。

「きん?」

気付いた時にはアルクェイドさんがまた吹っ飛ばされていた。

「……よく飛ばされますね、あなた」
「いったあ……もう! わたしじゃなきゃ死んでるわよっ!」

簡単に立ち上がってくれるのは頼もしいけれど、緊迫感が薄れてしまうのが困る。

「爆魔龍神脚で突進中はアイテム攻撃なんてへっちゃらですよーだっ。突進中は全部跳ね返しちゃうんですっ!」
「……イカサマみたいな性能ね」

まったく、一般人の私にこんな連中をどうしろというんだろうか。

「もうっ! まだるっこしいことやめたっ! ガチンコ勝負でいくわよっ!」
「あ、ちょっとアルクェイドさん!」

アルクェイドさんはまた突撃していってしまった。

「まったくもう」

ここは作戦を変えてみよう。

「……メカ翡翠はだいたいあなたの命令で動いてるわよね。琥珀」

私は琥珀を睨み付けた。

「うわ、嫌なところに気がついてくれましたね秋葉さま」

後ずさる琥珀。

「ってことはあなたを倒せばメカ翡翠も役立たずになるんじゃないかしら?」
「……えへっ♪」

その笑顔はで私は確信した。

「覚悟なさいっ!」

琥珀を倒せばメカ翡翠は止まる。

「うわ、ちょっときゃーっ!」
 

ならばちゃっちゃと倒して進ませて貰いますっ!
 

続く


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