「やる気だっていうの?」
「ええ。あなたたちもわたしの通り名を聞いたら嫌でも戦いたくなりますよ」
「通り名……?」

ぴしっ!

シオンは地面にエーテライトを打ちつけ、こう叫ぶのであった。
 

「わたしは冷峰四天王の一人シオン! さあ、かかってきなさい!」
 
 

「ダウンタウン月姫物語」
その6







「……」
「……」
「どうしましたか。あまりの驚きに声も出ないようですね」
「シオン……あなたいくらお金に困ってるからってそんなバイトを始めたの……?」

ずべしゃあっ!

見事な転び方を披露してくれるシオン。

「あなたはわたしが金の為に敵に友人を襲うと思っているんですかっ!」
「じゃあ何が理由なのよ」
「それは答えられません。わたしは貴方の友でありますが、それ以上に冷峰四天王のシオンであるのです」
「……妹。こういう場合何を言っても無駄よ」

呆れた顔をして入るアルクェイドさん。

「拳で語れというやつですか? 少年漫画じゃあるまいし」
「でもそうするしかないじゃないの」
「その通りです。わたしを倒さねば先へは進めませんよ」
「……わかったわ。アルクェイドさん。あなたは手出ししないで下さい」
「はいはい」

私は落ちていた木の枝を広い構えました。

「そんなものでわたしと戦う気なのですか秋葉」
「ごたくはいいからかかってきなさい」
「……遠慮はしませんよ」

シオンが私に向かって走ってきた。

「シュッ!」

エーテライトを枝に絡ませ、私の腕から奪い取る。

「エーテライトの力、御覧に入れましょう!」

ビシビシビシビシビシビシビシビシッ!

エーテライトをムチのように振るい、木の枝は粉々に砕け散ってしまった。

「これぞ必殺まっはたたき! 貴方の体はこれに耐えられますかねっ?」
「……何、そのネーミングセンス」
「わたしとて好きでこんな名前をつけているわけではありませんっ!」

キシャーと唸りながらエーテライトを振り回すシオン。

「無駄な攻撃ね」

左に飛んで回避。

「甘いっ!」
「くっ」

飛ぶ方向を読まれていたのか、シオンの蹴りが私の下腹部を狙っていました。

かろうじてガードはしたものの、なおもシオンの攻めは続きます。

「下段から中段、中段から下段っ!」
「この……調子に乗らないでっ!」

一瞬の隙を突いて足払いで反撃。

「無駄ですっ」
「しまっ……」

無防備な姿を晒してしまう私。

「飛べっ!」
「きゃあっ!」

下段からアッパー、そこからぼこすか連続技を入れられてしまう。

「よくもやったわね……!」

この代償は高くつきますよっ。

「妹ピンチねー。代わる?」
「まだまだですっ!」

私は跳躍し、シオンの頭部を狙った。

「甘いっ!」

後ろに下がって私の攻撃を避けるシオン。

「ぬっ……」

どうやらシオン相手に単純な攻撃では通用しそうにないようです。

ここは私も一旦下がって作戦を……

「逃がしませんっ! 食らえデビルチェーンっ!」
「なっ……?」

シオンはエーテライトを私に向けて投げつけてきました。

「ちょ……これっ?」

エーテライトは生き物のように私に絡みついてきます。

「逃げられないでしょう。これがEXの力というものです」
「わ、訳のわからないことを言わないで下さいっ!」

私は地面に倒れ、完全に動けなくなってしまいました。

「さて、覚悟はいいですね」
「ちょ、ちょっと待って……」
「デビルチェーンで縛られまっはたたきで嬲られる死のコース……受けてみなさいっ!」
「そんなSMみたいな技誰が好んで食らいますかっ!」

ゴッ!

私は倒れたまま檻髪を発動させました。

これならば手足の自由が効かなくても動かす事が可能です。

「なっ……そんな反則まがいの……」
「逆にあなたを縛り付けてあげますっ!」

赤いイメージをシオンの手足に絡みつける。

「……こちらのほうが略奪出来る分効果は上ですねっ!」

檻髪に襲わせている間に私は自分に絡みついたエーテライトを外す事が出来ました。

「くっ……」

地面に縛り付けられたシオン。

完全に立場逆転です。

「さて、檻髪で縛られまっはきっくで嬲られる死のコース……受けてみなさい」
「パ、パクリは感心しませんよ秋葉っ!」
「……じゃあまっはふみふみにしてあげるわ」
「同じですって! ちょっと! そんな……」
「問答無用!」

げしげしげしげしげしげしげしげし。

「……女王さまとお呼びプレイ?」
「そこ、下卑なツッコミを入れないで下さい」

アルクェイドさんへ向けて檻髪を放つ。

「うわ、暴力はんたーい」
「……まったく」

あの人がいると緊迫感が出なくて困ります。

「はぁ……はぁ」

シオンはぐったりとしていました。

これならもう戦う力はないでしょう。

「さあ答えなさい。何故私たちを襲ったんです?」

私は檻髪を解除して尋ねました。

「……それは……言えません」

顔を背けるシオン。

「大層な忠誠心ね」
「……ひとつ言えるのは、冷峰学園へ行くのならわたしたちのヘッドを倒してからにしろという事ですね」
「ヘッド……」

冷静に考えれば、シオンがお金のために私たちを狙うとは考えにくい。

もしかして、シオンはそのヘッドとやらに弱みを握られ、従わざるを得ない状態にさせられているのではないだろうか。

「わかったわ。もう何も聞きません。行きましょうアルクェイドさん」
「いいの? トドメささなくて」
「私をなんだと思っているんですかっ?」

私はそんな鬼や悪魔みたいな人間じゃないんですよっ?

「えー? だって楽しそうに踏みつけてたじゃない」
「あ、あれはその……」

確かにちょっと楽し……って。

「あれくらいしないとシオンを倒せなかったんです!」
「……まあ、そういうことにしておいてあげるわ」
「ぬぅ」

これじゃ私がS属性の人みたいじゃないですかっ。

私はいたってノーマルなんですっ!

「とにかく行きますよっ!」

そんなわけで私たちはまた花園大橋、その先へと歩き出しました。
 
 
 
 
 

「それにしてもあのツインテールはどこ行っちゃったんだろうね」
「さあ」

あの女の件はシオンの登場のせいでうやむやになってしまった感じがしますけど。

まあ、あんな端役の事は忘れる事にします。

もう出番があるかどうかだってわからないんですから。

「それより冷峰四天王の事を考えましょう。四天王と言うからにはあと三人はいるんでしょうし」
「そいつらを倒しながら進んで行くって事?」
「そういうことですね」
「ふーん。ちょっとは手ごたえありそうな感じね。次出てきたらわたしが戦ってもいい?」
「好きになさって下さい」

今回の戦いでわかりましたけれど、お嬢様の私が戦う必要なんてなかったんです。

この人が勝手についてくるのであれば、この人に戦って貰えばいいだけ。

そして最後のボスだけは私が倒し、兄さんに褒めて貰う……と。

完璧なシナリオです。

「えへへ、なんだかワクワクして来ちゃった」
「そうですね、うふふふふふ」
 

さあ、早く出てきなさい次の冷峰四天王!
 

続く


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