『いいともー!』
ちっとも息が合ってないメンバーなのにその言葉だけは妙に一致するのであった。
「乾家に遊びに行こう」
その7
「じゃ、ゲームを起動して……と」
さっそくCDを入れ替えゲーム起動。
「コントローラーは誰が持ちましょうか?」
「何問かごとに交代でいいんじゃないですか? 残りのメンバーはその方のフォローってことで」
「そうするか」
とりあえず間近にあったので俺がコントローラーを持ってみた。
『爆裂! タイガークイズ』
「有彦、これってどんなクイズゲームなんだ?」
タイトルからはまったく予想出来ない。
まさか延々と虎に関する問題が出てくるんだろうか。
「いたってオーソドックスだ。ジャンルを選んで答えていく。ノルマを超えればクリア」
「シンプルですねー」
「……虎の意味は?」
「主人公がタイガー道場の師範なんだよ」
「い、意味がわかりませんねー」
「そのギャップがいいんスよ」
有彦とこのゲームを作った主のセンスは意味不明だった。
「と、とにかくスタート」
オープニング。
タイガー道場で修業を行っていたタイガーは新たな必殺技を習得すべくクイズで己を鍛えるのであった。
「……」
もういい、ストーリーに関しては突っ込まないことにする。
『ジャンルを選択してください』
「このジャンル画面が出たらコントローラを移すことにしようか。わかりやすいし」
「そうですねー。それならお互いの得意ジャンルで頑張れそうです」
「だな」
さて俺はどのジャンルを選ぼうか。
『スポーツ 歴史 チャンバラ ブルマ』
「いや、最後のほうおかしいっ。絶対おかしいぞこれっ!」
「何がおかしいんです? いたって普通のジャンルじゃないですか」
真顔でそんなことを言う琥珀さん。
「そうだな。どれを選んでも全問正解できるだろ」
「……」
もしかして俺のほうがおかしいんだろうか。
「有彦さん、琥珀さん、あんまり志貴さんをいぢめてはかわいそうだと思うんですが」
ななこさんがそんなツッコミを入れる。
「志貴さんってば一瞬本気で信じかけてましたしねー」
「え? 冗談だったの?」
「たりめーだボケ」
べし。
「ををうっ! 殴ったな遠野っ!」
「琥珀さんはともかく有彦まで調子に乗るんじゃねえ」
「あはっ。ケンカしてはいけませんよー。仲良く、中欲です」
「なんかよくわからないけど二回目のヤツは間違ってる気がする」
「目の錯覚です」
「……」
もういい。さっさとジャンルを選んでしまおう。
『ブルマが選択されました』
「え」
何故にブルマ?
「ああ、言い忘れたけど選ばないで時間が経つと勝手にジャンルが決定されるからな」
「そういう重要な事は先に言えっ!」
なんてこった。よりによって一番意味不明なジャンルにされるとは。
『ふっふっふ。来たわねタイガー! このブルマの守護神、イリアに楯突くとはいい度胸よっ!』
画面にはブルマを履いたちっちゃな女の子が表示されていた。
「……有彦、素晴らしいゲームだな、これ」
「だろう」
男二人して親指を立てあう。
「志貴さんはブルマが好き……と。秋葉さまに報告しなくては」
「しなくていい、しなくていいから」
いや、しかし秋葉のブルマ姿というのも捨てがたいか?
『さあ、ブルマに関する問題に答えてみなさいっ!』
「……っと」
喜んでる場合じゃなくて、この難易度の高そうなヤツを攻略しなきゃいけないんだよな。
『第一問 以下の中から浅上女学院のブルマを選べ』
「無理」
つーか何故に浅上?
「無理でもやるんだよっ!」
有彦は無駄に燃えていた。
「浅上は全国的に有名ですからねー。クイズの問題に入っていてもおかしくはありません」
「そうだったのか。……あ。琥珀さんならどれだかわかるんじゃないかな」
「そうですねー。えーと」
ちなみに画面にはさっきの女の子が様々なブルマを履いている絵が表示されている。
間違ってもこんな画面秋葉には見せられないなあ。
「確か3番だったかと」
「3番だね。よし」
さっそく3番を選んでみる。
『だいせいかーい!』
画面の中の女の子がくるくると回り可愛いポーズを取っている。
「有彦、俺このジャンルが選ばれて本当によかったよ」
「だろう?」
「むー……目の前に美女が二人もいるのに二次元の少女に目を奪われるなんて」
琥珀さんはむくれていた。
「ですよねー。酷いです」
ななこさんも同様である。
「本当の美女はきっと自分で美女なんて言わないよ」
「そんな事はありませんよー。美人だと思っていれば自ずと美人になるものです」
「……」
そんなもんなんだろうか。
「琥珀さん。このジャンルに関しては協力しないほうがよいのでは。野郎二人でハァハァしてればいいんですよぅ」
「は、はぁはぁって」
なんだか酷い言われようだった。
『第二問っ! 以下の中からハミパンしているブルマを探せっ!』
「有彦、このゲーム販売して問題ないものなのか?」
「全く問題はないと思うぞ」
「ハミパンって何でしょう?」
「ん? それはだな。ブルマからパンツがはみ出て……」
「説明しなくていいからっ!」
「志貴さんのえっち」
「有彦さんのスケベ」
「……ぐぅ」
さっさとこのジャンルをクリアしてしまわないと俺たちの評価が地に落ちてしまいそうである。
「えーと……どれだ……」
仕方なしにハミパンしているブルマを探す。
「ほら、顔がにやけてますよ。えろえろですねー」
「しょ、しょうがないだろっ」
「あった! 遠野っ。これだっ!」
「なにぃっ! どれだっ!」
画面に食い入る俺。
「うわ。必死ですよ? もう末期症状です」
「いえいえななこさん。これはむしろこの症状を利用して朝起きたらブルマ少女が立っていたというシチュエーションで攻めることが可能なのではないでしょうか?」
「それはよさげですね。そのまま朝の運動と直行しそうです」
「あはっ。下半身が鍛えられそうですねー」
「……」
俺としてはこっちの二人組のほうがえろえろだと思うんだけど気のせいなんだろうか。
『だいせいかーい! ……なかなかやるわねタイガー! じゃあ第三問っ!』
そんな事を考えているうちに第三問。
『婦人、子供用の下着としてブルマを発明した人物の名前を挙げよ』
「ぬ……」
ここで難問がきたか。
「これに正解すりゃ一応クリアだけどな」
『1・ブルーマー婦人 2・男爵ディーノ 3・ロベルトジャイロ 4エル・シド・ピエール』
「……本当に正解あるのかこれ?」
全部はずれなんじゃないかって感じがしてたまらないんだけど。
「あるんでしょうねー。マニアック小僧な志貴さんならわかるんじゃないでしょうか」
「マニアック小僧って……」
また変な称号がつけられてしまった。
「適当に答えてみろよ。こうなったら勘だ、勘」
「うーん……」
仕方ない、ここはひとつギャグに走ってみるか。
「せっかくだから俺は1番を選ぶぜっ」
そんなわけでどう考えてもはずれっぽい1番を選択してみた。
『だいせいかーい! く、悔しいけどわたしの負けよっ。通りなさいっ!』
「……マジ?」
後ろを振り返る。
「マニアック小僧決定ですね」
「マニアック小僧確定だな」
「マニアック小僧以外の何者でもありませんね」
またも変なところで意見の合致する人たちであった。
続く