「閃き度全快の状態は怖いですよ〜。一列全員電球とかありますから」
「……よくわからないんだけどパワーアップしたってこと?」
「まあ見ててくださいな。うふふふふ」

果たして神と化した琥珀さんに皆は勝つ事が出来るんだろうか。

どうか皆が勝って平和な世界が訪れてくれますように。
 

俺にはそう願う事しか出来ないのであった。
 
 

「遠野家人生ゲーム大会」
その12







「姉さんの番なのですから早くルーレットを回してください」
「んー? うふふふふ」

翡翠の言葉に怪しい笑いを浮かべる琥珀さん。

「わたしはパスでいいです」
「……パス?」
「ええ。『かみはなにもしなかった』というやつです」
「何なんですか……その余裕は」
「こ、琥珀さん。本当にいいの?」

この状況で順番を放棄するだなんて狂気の沙汰としか思えない。

「はい。どうぞどうぞ。そちらに順番を譲って差し上げます」
「とことん人を舐めてますね……甘く見ないほうがいいですよっ!」
「全然問題ありません。何なら秋葉さまチームと弓塚さんチームのカードも使っちゃって構いませんよ?」
「な……」

シエル先輩と翡翠の表情が強張った。

「シエルさま……どういたしましょうか。姉さんのこの余裕、ただ事ではありません」
「ええ。何か罠を用意しているのやもしれませんね」
「罠なんてありませんってばー。さささ。どうぞずずいっと」
「……シエル先輩。ここは私に任せてください」
「秋葉さん?」

秋葉が琥珀さんの正面に座った。

「あなたが何を企んでいるかはわからないけどね」
「ですから本当に何もありませんってば」
「その余裕ごと叩き潰してあげますっ!」

ばしっとカードを叩きつける秋葉。

『乱れ雪月花』

「ルーレットの数字を四倍にするカードよっ! これならあなたもひとたまりもないでしょうっ!」
「うわ、そんな恐ろしいカード持ってたのか? おまえ」
「ちょ、妹っ! そんなの持ってたなら最終防衛システムの時に使いなさいよっ!」

ものすごく不満そうな顔をしているアルクェイド。

「う、うるさいですねっ! 今このカードに気付いたんだからしょうがないでしょうっ! それにあなたの出した数字じゃ四倍にしたって勝てませんでした!」
「な、なによっ。そういうカードがあるって知ってればもうちょっと余裕が……」
「過ぎたことでケンカしてもしょうがないだろ。いいから回してくれよ」

この状況でも協力できないのかこいつらは。まったくもう。

「ぐ……。さ、さあ。翡翠。これを使って回しなさいっ!」
「なんだか卑怯な気がしますが……」

翡翠は他のチームのカードを使う事にためらいがあるようだった。

「いいのよっ! あっちのほうがどう考えたってずるっこなんだからっ! やっちゃえやっちゃえ!」
「ふふふ。さすがはアルクェイドさんですね。あなたこそは世界を救う素質あり! とみました」
「え? そんな。照れるなー。えへへ」
「敵に褒められてどうするんですかっ!」
「ジョークよ、ジョーク!」
「うーむ」

琥珀さんに褒められること=死の宣告と同じような感じがするのは気のせいだろうか。

「……ではこういたしましょう。秋葉さまが回してください」
「え? 私が?」
「ええ。宜しいでしょうかシエルさま」
「わたしは構いませんよ。ただ、琥珀さんが承諾してくださいますかねえ」
「ええ。どうぞご自由に」
「上等じゃない」

秋葉がルーレットに手をかける。

「おとうさまはもういないのよ!」

謎の叫び声と共にルーレットを回す秋葉。

『10』

「うわ、すげえ! マジでかっ?」
「す、すごいっ! クリティカルヒットだよっ!」

10×4×1000$で40000$也。

「ふふ……ふふふふ! 見ましたかっ! これが私の底力ですっ!」

勝ち誇ったような笑みを浮かべる秋葉。

「……シエルがゴールする前にそうなってくれればよかったのに」
「何か言いましたか?」
「なんでもなーい」

アルクェイドは鼻歌を歌って誤魔化していた。

「姉さん。これで姉さんの資金はほとんど無くなりました」
「うん、そうみたいだねー」

今の攻撃で琥珀さんの資金はほとんどなくなった。

次に攻撃を食らったらその時点でほぼ終わりである。

「でもまだまだですっ。いきますよー」

そう言って二枚のカードを取り出す琥珀さん。

『七英雄』
『アストラルゲート』
『アビスゲート』

「アストラルゲートは混乱+透明状態に。アビスゲートはルーレットを回すごとに資金回復ですっ!」
「さ、三枚も使うなんて卑怯よっ!」
「あはっ。閃きポイント最大だって言ったじゃないですか。最大状態だと三枚までカードを使用できるんですよ」
「そ、そんなルール知りません!」

シエル先輩が叫ぶ。

「やだなぁ。ちゃんとルールブックに書いてありますよ? 皆さん読まないではじめられたのが悪いんでしょう?」
「ぐっ……」

そもそもの人生ゲームのルールなんてそれこそルーレットを回して進んでお金の多いほうが勝ちという単純なものである。

だからそんなもののルールブックを読む人間は誰もいなかったのだ。

「姉さん……最初の『七英雄』の効果は何なのでしょう」
「うふふふふふ。その名の通り。七回連続での行動が可能となりますっ!」
「そんな滅茶苦茶なもの認めるわけないでしょうっ!」

秋葉の髪の毛が真っ赤に染まる。

「わわわわわ、待て! 落ち着け! 話せばわかるっ!」
「……構いませんよ。使いたければ使ってください琥珀さん」
「え?」

ブチ切れまくっている秋葉と対照的に先輩はいやに冷静である。

「こういう輩を正攻法で倒すのが正義の味方の務めですから」

いや、違う。淡々とした口調の中ではあるが、その体からは熱気が発せられていた。

「……わたしたちが全て堪えたその時が姉さんの終わりです」

それは翡翠も同様である。

「ふふふ。七英雄の力、受けてみてください!」

七枚のカードを取り出す琥珀さん。

「ま、まさかカードも七枚使うっていうのっ!」
「ひきょーもの! 正々堂々勝負しなさいよー!」
「シエルさんは構わないと言ってましたよー」
「……」

シエル先輩が拳を握りしめていた。

「さて取り出すたるは必殺技ばかり」

琥珀さんはそう言って七枚のカードを取り出した。

『テンプテーション』
『ソウルスティール』
『メイルシュトローム』
『水鳥剣』
『ストーンシャワー』
『月影』
『サイコバインド』

「てややー!」

それらのカードを使用しながらルーレットを回していく。

「……」

先輩と翡翠はその動作をただ黙ってじっと見ていた。

「えー。占めて17794000$になりますどうぞー」
「まあ、ずいぶん安いんですね」
「ええ。途中数字を出すのにミスってしまいましたので」

これでシエル先輩チームもほとんど一文なしに。

「さあ……堪え切りましたよ。わたしたちの番です。もう次の貴方のターンが回ってくる事はあり得ませんよ。全力で倒しにかかります」
「うわ、怖いですよー。そんな事言わないで下さいな」
「もう姉さんの負けです」
「まだわからないじゃないの。ルーレットの数字によっては……」
「関係ないんですよ」

シエル先輩が一枚のカードを琥珀さんへ見せる。

「……!」

その瞬間琥珀さんの顔色が変わった。

「そ、それはどうして……何故そのカードを」
「俺が渡したんだ」
「志貴……さん」

そこでようやく琥珀さんは気がついたのだ。

俺がシエル先輩側に立っていたことに。

「そうですか……なら、仕方ないですね」

寂しそうに笑う琥珀さん。

「先輩。カードを使用すると言って下さい。それで終わります」

俺に出来るただひとつの事は、このゲームを終わらせる事だけであった。

このままではあまりにも気の毒である。

「わかりました。使わせていただきますよ」

先輩がカードを置いた。

そのカードの名は『チェーンソー』。
 

『かみ』はバラバラになった。
 

続く



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