「皆さん……なんとしてでもタタリを倒してください。お願いします。わたしも最大限に努力します」
「……ああ」
「元よりそのつもりです」
「……翡翠さんまで巻き込むとは……許せませんね……」

翡翠を助けるためにも早急にタタリを見つけることが必要となってしまった。

「……行きましょう、みなさん」
「おう」
「わかりました」
「任せてください」

四人の意思は結束し、打倒タタリへの闘志を燃やすのであった。
 
 



「徐々に奇妙な冒険」
その23
「運命の輪と正義と恋人と太陽及び審判と女教皇」









「……遠野君。こんな能力を持つスタンドっているんですか?」
「いるにはいるけど。こりゃ……」
「なんだかとんでもないことになってますね……」

屋敷から一歩出た途端、外は異世界と化していた。

数メートル先も見ることも叶わないほどの深い霧。

それなのに空の上には延々と照り付ける太陽がはっきりと見える。

「正義(ジャスティス)と太陽(サン)……それに」

目の前にはなんだか不恰好な車が止まっていた。

そして車のすぐ横に座っている優男。

「そこの四人……お命ちょうだいいたします」
「恋人(ラバーズ)と運命の輪(ホイールオブフォーチュン)……いくらなんでもスタンド安売りしすぎじゃないですかね」
「……ああ」

なんと俺たちの前にスタンド使いが四人も同時に現れたのだ。

「志貴。こちらも四人。支障はないと思いますが」
「うーん……」

味方も敵も難癖あるやつばかりなのだが。

「逆に四人も一気に現れたことは好都合でしょう。一網打尽に出来るじゃないですか」

先輩もいやに冷静な事を言っていた。

「ずいぶんと余裕があるのぅ。この我ら四人を相手にして生き残れると思っているのかな……フヒャヒャヒャヒャ」

霧の中から正義の本体、エンヤ婆が現れる。

「四人? 何を言っているのですか。三人の間違いでしょう」

不敵な笑みを浮かべているシオン。

「あ〜ん? 何を言ってるんだてめえ」

腕だけ出した運命の輪の男。

「既に恋人が攻撃を仕掛けていた。よりにもよってこのわたしに。無駄な事でしたね。攻撃方法さえしっていれば防御はたやすい」
「え?」
「ギャアアアアアアアッ!」

ばたん。

「ス、鋼入り(スティーリ)のダンっ!」

突如恋人の本体、鋼入りのダンが地面へ倒れた。

「し、シオン。これは?」
「わたしの耳の中へ恋人が入ろうとしたからエーテライトで縛り、千切っただけです」
「ち、千切った……」

スタンドのダメージは本体へのダメージ。

ということはもう鋼入りのダンは再起不能ということである。

「貴方には恨みも何もありませんでしたが……原作通り、ツケの領収書です」

ぽいとシオンが鋼入りのダンの上に紙を捨てた。

「お、おのれッ! ならば運命の輪ッ! 轢き殺してやれいっ!」
「あはっ。それも無理な話だと思いますねー」
「何ッ?」

いつの間にやら運命の輪の車のすぐ傍に立っている琥珀さん。

「だってほら、こんなに太い腕なら、注射なんて簡単に出来ちゃいますしー」
「……」

確かに運命の輪の太い腕に注射器が刺さっていた。

「腕だけ出してかっこつけたりするからいけないんです。ま、本体は貧相だから仕方ないでしょうけどねー」
「おお、おのれっ……」

なんともう二人もスタンド使いが片付いてしまった。

「志貴、どうやら原作通りでなくてもコイツらは倒せるようです。能力を発揮する前に倒してしまえば大した事はありません」
「先手必勝ってやつか」

むしろ本体は貧弱なやつのほうが多いかもしれない。

「な、ならば太陽っ! 太陽……?」

エンヤ婆が空を見て不思議そうな顔をしている。

「……あれ」

俺も空を見て驚いた。

あれだけ照りつけていた太陽が見えなくなっていたからだ。

「あの。遠野君。そこの影で鏡のついた変な車に乗っていた男がいたんでとりあえず気絶させておいたんですが……」

先輩がマヌケそうな顔の男を連れてやってきた。

「アラビアファッツ……太陽の男だ」
「え? こいつが? 大した事ありませんでしたよ?」
「うん……太陽は原作でもザコだから」

なんとこれで三人。

「お、おのれ……おのれおのれおのれえええっ!」

残る敵はエンヤ婆ただ一人となってしまった。

「諦めたほうがいいと思いますよ? 貴方ではわたしたちには勝てません」
「フン……ほざけっ! まだにわしのスタンドは敗れていないっ! 正義は勝つ!」
「……ぬ」

霧がより濃さを増した。

ざっざっざっざっ……

集団の足音が聞こえる。

「正義のゾンビか……」

ぶおんっ!

「わっと」

大男の豪腕が俺の頭の上をかすめた。

「先輩! シオン! 琥珀さん、大丈夫っ?」
「この程度、わたしにとっては大した敵ではありませんっ!」

ボゴォッ!

次々とゾンビを灰にしていくシエル先輩。

「そうです志貴。たかが吸血ゾンビの一匹や百匹程度で……」

シオンもエーテライトを駆使して吸血ゾンビを近づけさせてない。

「わたしたちの障害にはなりませんよっ、これくらい」

琥珀さんだけは屋敷の塀に逃げていた。

「さすがに仲間が強いと楽だなあ……」

スタンド使いをもものともしていない。

「お、おのれおのれおのれおのれッ! ならばこれならどうだいッ!」

ばしいっとエンヤ婆が杖を地面に叩きつける。

「……お前の願い事を三つ言えっ!」
「きゃはははははは! ヒヒャホホフハホハホホホ」

その途端に霧の中からエンヤ婆とは別の声が聞こえた。

ひゅンっ!

「志貴っ、危ないっ」
「うわっ……」

すぐ真横をヤリのようなものが通りすぎていった。

「ジャ、審判(ジャッジメント)と女教皇(ハイプリエステス)か……」
「第一の願いは痛みの叫びを出させる事。第二の願いは恐怖の悲鳴をあげさせること。第三の願いは……後悔の鳴き声」
「ん」

背後に誰かの気配。

「私が気を失っている間にずいぶんと愉快な事になっているみたいですね」
「あ、秋葉っ」
「YES,I,AM! チッチッチ」

アブドゥルっぽいポーズをする秋葉。

「気がついたのか」
「ええ。私とした事があんなことで気を失ってしまうなんて迂闊でした。もう同じ轍は踏みません。敵は何体ですか?」
「ええと……正義と女教皇と審判と……三体だ」

審判が出てきた事で魔術師の炎を暗示する秋葉が戻ってくる辺り、奇妙な縁を感じてしまう。

「ふん。下らない。シオン! 琥珀! シエルさん! 聞こえますか! 聞こえたら私のほうへ来て下さい!」
「あ、秋葉さまっ?」
「無事でしたか……秋葉」
「何かやるつもりみたいですね……」

全員が集合してきた。

「さて皆さん。わたしの後ろに居てください。被害を受けますからね」
「……やるのか、あれを」
「ええ。これだけの数に試した事はないですけど、まあ余裕でしょう」

秋葉の能力は非常に広範囲を覆うものなのである。

その広さは学校の敷地全体ほどを覆うくらいだから、ここ周辺にいるスタンド使いと吸血ゾンビを捕らえるなんてわけのないことだ。

「サポートしますよ、秋葉さま」
「ええ。宜しく頼むわ」
「何を言ってるんだいッ! いいかい、この正義に……」
「ふふふ……全て……奪い尽くしてさしあげますっ!」

秋葉の髪が真っ赤に染まる。

「紅赤主! 檻髪っ!」

そして次の瞬間、霧全体が真っ赤な色に染まった。

「こ、これはっ? な、んぱっ、はっ……なにィ〜」
「ふふふ……力を略奪されればスタンド使いといえども……っ!」

なんだかこっちのほうが悪役なんじゃないかってくらい邪悪な顔をしている秋葉。

「あはひィ―――ィ」

ボデェン。

正義が気を失ったのか、霧が晴れた。

カメオとミドラーらしき二人も倒れている。

「どうやら終わったようですね」
「……正義に太陽に恋人と運命の輪……女教皇と審判で六体か……」

まさかここまで一気にスタンドを倒せるとは思ってなかった。

「これなら案外ディオとかが出てきてもあっさり倒せるんじゃないかな」

一応本当に倒したのか確認するためエンヤ婆の傍へ歩いていく。

「ちょ、兄さん! 前へ出ては駄目です!」
「え? あ……」

くらりと眩暈がした。

「秋葉っ! 志貴に何をしたんですかっ!」
「し、視界に入ってきたらもう略奪の対象なんですよ! 兄さんっ! 兄さん……っ」
 

秋葉の叫び声がいやに耳に響く中、俺は気を失ってしまうのであった。
 

続く



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