「……ん」
声がしたのでアルクェイドのほうを振り返った。
(違うわよ、これ。エーテライト)
あ、そうか。
会話なんてしなくてもエーテライトで繋がってるんだっけ。
(これからDIO戦でしょ。もしわたしがタタリだったらどう行動するかを志貴に教えておくわ)
別に俺だけじゃなくてみんなに教えればいいじゃないか。
(駄目よ。これは志貴しか出来ない事なの。それも、確証があるわけじゃない。チャンスもあるかわからないけど……覚えておいて。大事なことだから)
「……」
俺はアルクェイドの話に意識を集中させた。
「徐々に奇妙な冒険」
その47
「DIOの世界 その2」
「今言える事はひとつ……タタリ……DIOといえども吸血鬼。代行者の持っている一連の武器が通用するということです」
「そうですね。それに太陽の光……ですが。今は真夜中。期待は出来ません」
「DIOが現れ次第、わたしと代行者で攻撃を仕掛けます。しかも、ザ・ワールドでなければ回避出来ないような攻撃を」
「それで倒せればよし、もし回避されたら……」
「タタリがザ・ワールドまで具現化しているということです」
「……」
「そうなったらわたしの出番ね。なんとかするわよ」
「アルクェイドさん……」
「とにかく、今はDIOを探そう」
アルクェイドとの会話は終わった。
後は俺がそれを実行できるかどうかにかかっている。
「ヌケサク。この階の上はどうなってるんです?」
秋葉が袋に入ったヌケサクを投げ捨て尋ねた。
「お……屋上です。部屋ひとつぶんくらいの建物があります。DIO様は昼はいつもそこにいます」
「屋上まで行く道はこれだけ?」
さっき先輩が登ろうとしたエレベーターの逆側には昇りのエレベーターがあった。
「な……ないです。こ……これひとつだけです」
「案内なさい」
「は、はいっ」
ヌケサクに案内され屋上へ。
屋上にはひんやりとした空気が流れていた。
「あそこね……」
ヌケサクの言ったとおり、部屋ひとつぶんくらいの建物が屋上にあった。
バゴオッ!
片手で入り口を破壊するアルクェイド。
「ひえええっ!」
部屋の中には原作にもあったDIOの棺桶があった。
「気をつけてください。奴はその棺桶の中とは限りません。どこか……その辺に潜んでいるのかも」
「……」
「これから会う男は……ずっと昔にわたしを吸血鬼にした……懐かしい相手ではない……倒すべき相手としてわたしがずっと追っていた相手です」
「シオン……」
シオンは震えていた。
「後悔はありません……今までの旅に……これから起こる事柄にわたしは後悔はありません」
「今ひとつ言える事は、俺は『白』の中にいるってことだな。DIOは『黒』シオンは正しい事をしようとしているんだ」
「ありがとうございます、志貴」
僅かに笑うシオン。
「志貴。あなたは棺桶の右に行ってください。代行者。あなたは左側です。秋葉と琥珀は中央に。タタリが現れたら攻撃します。ヌケサク。あなたがその棺桶のフタを開けなさい」
「ひ、ひいいえええ」
シオンに睨まれたじろぐヌケサク。
「うえええDI……DIO様ァ……わたしはあなた様を裏切ったわけではないのですから〜〜」
「ごたくはいいわよ。さっさと開けなさい」
「ヒイッ! DI、DIO様〜〜ァ。フェッフェ。こいつらをブッ殺してやっておくんなさいましよおおおおお!」
ヌケサクがゆっくりと棺桶のフタを開けていく。
「……」
俺はヌケサクからずっと目を離さなかった。
ガパァッ!
「!」
ヌケサクが……消えた。
「え!? ……………………オレ?」
「えっ!」
「な……中にいたのは……おれだったァー今フタを開けていたのにィ〜〜」
細切れにされたヌケサクが棺桶の中でうごめいている。
「うっ……」
「秋葉さま」
琥珀さんが秋葉の目を隠していた。
「ヌケサクが棺桶の中に……俺は一瞬も目を離さなかった。入った瞬間も……入れられた瞬間もわからなかった」
」「超スピードとか催眠術じゃあ断じてないですね……これは」
「本当に……ザ・ワールドが?」
「いえ。違うと思います」
するとシオンがそんな事を言った。
「どういうことなんだ?」
「ヌケサクはタタリの作ったイメージ。出すのも消すのもタタリの自由のはずです。ですから時など止めなくても一瞬で移動させることなど簡単なことです」
「そ、そうか……遠距離スタンドでもそういうのいたしな」
それは第四部の話ではあるけど。
「ご名答。フフフフフ」
「!」
「なっ?」
振り返ると建物の入り口にDIOが立っていた。
「さすがだなシオン……わたしが吸血鬼にしただけのことはある。その通り。ヌケサクは作り出したイメージだからな……消すも出すも自由……あの程度の雑魚ならその程度造作もないことなのだよ」
「……っ」
背筋に寒気が走る。
「このDIOともなるとまた違ってはくるがね」
「何故……そんなことをわざわざ……」
そう、どうしてDIOはそんな自分のトリックをばらすような事を言うんだろう。
「フフフ……シオン。君は考えている。ひょっとするとこいつはザ・ワールドまで具現化出来ていないのではないか? とね。それとも……時を止めることが出来るのに出来ないフリをしているのか……」
「……」
やばい。このままの状態でいるのはやばい。
「逃げるわよっ!」
アルクェイドもそう判断したのか、別の壁に大きな穴を開けて俺の手を掴んだ。
「アルクェイドっ。俺なんかより秋葉と琥珀さんをっ」
「志貴が死んだらなんにもならないのよっ! とにかく逃げてっ!」
「二人はわたしに任せてくださいっ!」
先輩が秋葉と琥珀さんを担いで俺のほうへと飛んできた。
「何をしているんですかシオン! 早くっ!」
「く……ここまで来て……っ!」
階段を飛ばして降り、廊下を走りぬける。
「タタリが本当に時を止められるかどうかはまだわからない……けど、あのままあそこににいたら確実にやられていたわ」
それは俺も思ったことだった。
わざわざ姿を現して自分の不利になるようなことを言うタタリ。
不気味であり、恐怖だった。
確実に時を止められるとわかっていたほうがまだマシだったかもしれない。
「DIOを具現化させた力があからさまに違いましたね……今まで出会ったどのスタンド使いよりも存在感があった」
「真祖っ! まさかこのまま逃げるというのですかっ? わたしはこのままおめおめと逃げ出すのはごめんですよっ?」
シオンは悔しそうな顔をしていた。
「逃げるつもりはないわよ。ただ、状況を作るだけ……あなたも言ってたじゃない。ザ・ワールドを使わざるを得ない状況を作り出すって」
「アルクェイド。どうするというんですかっ?」
「策があるわ……わたし、シオン、シエルはヤツを迎えうつ。志貴と秋葉、琥珀は逃げながらヤツと戦う。そして観察してもらうの」
「観察……?」
「ええ。タタリの弱点を……ね」
TO BE CONTINUED……