「じゃ、また後でね」
「ああ。先輩、シオン、アルクェイド。どうか無事で」
「遠野君たちも気をつけてくださいね」

遠野君たちは作戦の通りまずは逃げてもらいます。

今わたしたちがいるのはシュライン11階大広間。

「この床がガラス張りっていうのは面白いわね……」

アルクェイドの言う通りここの床はガラス張りで、下の階から上を眺められる状態になっています。

「DIOのザ・ワールドを確認するにはうってつけの場所ですね」
「ええ」

つまりここでDIOを迎え撃つわけです。

「シエル……もしかしたら死ぬかもしれないけど、大丈夫?」
「まあ死に慣れてますからねわたしは」

自分で言っててイヤなセリフですねえ、これ。

「いざとなったらあなたに体の部品を再生してもらいますよ」
「そうね……そんな余裕があったらね」
「……」
「代行者。わたしのほうは準備が出来ました」
「了解です。では……各自配置に着いて下さい」
 
 





「徐々に奇妙な冒険」
その48
「DIOの世界 その3」




「……」

ひたすらにDIOを待つ。

わたしは自分の腕の傷を眺めていた。

この傷を見るといつも思い出す。

ロアの呪縛から解き放たれた時に自らつけた傷。

不死身になっていたわたしにとって、それはようやく人として戻れた証である傷だった。

「……」

ロアに乗っ取られる前の幸せだったかつての日々。

それを一瞬で失わせた吸血鬼。

わたしは吸血鬼を許すわけにはいかない。

そしてわたしは代行者となった。

全ての吸血鬼を滅するため。

けれど。

そんな意思は遠野君に出会ってから崩れてしまったのだ。

アルクェイドだって真祖になりたくてなったわけではない。

吸血鬼となっても愛する人のために死んだ吸血鬼すらいた。

「どうしました? 代行者」
「いえ……」

シオンに出会った時嫌悪感を抱いたのは何故だろう。

それはきっと、わたしと同じような運命を辿っていることに気づいてしまったからだ。

わたしは人に戻るためにロアを追った。

彼女も同じ。

自らを取り戻すためにタタリを追っている。

「必ず、倒してみせますよ。タタリを」

わたしはこの傷を見て考える。

わたしは人としての体を取り戻した。

ならばわたしと同じように彼女が自分を取り戻せる手伝いをしてあげよう。

そのために……たとえわたしが犠牲になったとしても。

「来たわよ」
「はい」

わたしは奴を迎えるための印を組み、中央に立った。

「フン……また邪魔をする気か……代行者」
「ええ。とことん邪魔をさせてもらいますよ」
「人数が減っているようだな……逃がしたのか……それとも何かの作戦なのか……フフフ」
「ええ。もちろん作戦はありますよ」

DIOに向かって黒鍵を数本投げる。

「無駄なことを」

三本をあっさりかわし、二本をわたしのほうへと打ち返してきた。

「……」

わたしはその黒鍵を片手で受け止める。

「ム」

それに少し表情を変えるDIO。

「まあ今のであなたを倒せるとは思ってませんから。次行きますよ」

わたしは天井、壁、床と縦横無尽に移動しながら黒鍵を放った。

「無駄無駄無駄ァッ!」

それらはDIOに全て跳ね返されてしまう。

「はぁ。いけませんねどうも」
「遊んでいるのか代行者。その程度でこのDIOを倒そうなどと……」
「では少し真面目にいきますか……セブンっ!」

セブンをDIOの真後ろに召還する。

「無駄ァッ!」
「わわわわわっ!」

セブンの頭上をDIOの足が通過した。

「……?」
「フフフ……既にあなたは罠にはまっていると言ったでしょう?」

DIOの足が部屋内を覆い尽くしていたそれに触れる。

バチィッ!

炎と煙がDIOの足を包み込んだ。

「これは……エーテライト」
「そう。シオンのエーテライトですよ。それがこの部屋中を覆っている。それによりわたしたちはあなたのいる位置を察知し……攻撃を予知することが出来る。さらに……」

もちろんそれだけで罠と呼ぶわけがありません。

「あなたを取り巻く全てのエーテライトにはわたしが火葬式典を施しましてあります。いわばエーテライトによる……いえ……法皇の結界と言ってもいいでしょう」
「チッ……」

残念ながら足が触れたのは一瞬で、大したダメージを与える事は出来なかったようです。

しかしこれでDIOは動けなくなった。

「あなたが触れば発動するエーテライトの結界はッ! すでにあなたの周りを覆いつくしているっ!」

わたしの動きはDIOを倒すためのものではなかったんです。

全てはDIOの周囲にエーテライトを設置するためのもの。

「この状況……どう抜け出すつもりですかっ?」
「……」
「主よっ! この不浄を清めたまえっ!」

エーテライトに囲まれ身動きの取れないDIOに向かい、わたしは跳躍してあるだけの黒鍵を投げていきました。

「マヌケが……知るがいい……『世界』の真の能力は……まさに! 『世界を支配する』能力だということを!」
「!」

来たっ……!
 

世界!!
ザ・ワールド!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「……っ!」

全身に悪寒が走った。

「どうしました? 兄さん」
「……ザ・ワールドだ……」
「志貴さん?」
「『世界』が発動してる……」

今、間違いなくタタリが時を止めている。

「何を言ってるんですか兄さん? 私たちはこうして動いているじゃないですか」
「秋葉。ザ・ワールドの射程距離は何メートルだった?」
「え?」
「……約10メートルなんだよ。花京院が言ってただろ。接近パワー型だって」

今俺たちはシュラインの7階まで降りてきている。

「だから……この距離じゃ『時を止める能力』の影響は受けない」

原作でDIOが言っていた言葉。

もっと追いつけ……もっと近くにだ。近くでなければ「世界」は使えん……

距離がちと……離れすぎていたか。「世界」の射程距離外にすっ飛んでいった……

「な、なるほど……」
「ですが志貴さん、何故世界が発動しているとわかるんです?」
「わかるんだよ……俺はシオンとエーテライトを繋いでたから……」

エーテライトを解して言葉が伝わってくる。
 

『これが「世界」だ。もっとも「時間の止まっている」おまえには見えもせず感じもしないだろうがな……』
 

「まずいな……誰かが狙われてる」
「そんなっ! なんとか出来ないのですかっ?」
「なんとかするつもりだよ……だから俺はここで待ってたんだ」

俺はメガネを外し、七夜の短刀を取り出した。

「ど、どうするつもりなんです?」
「……俺が『世界』の境界線を殺す」
 

TO BE CONTINUED……



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