「ノロいノロい。どうした? 真祖の姫君のスピードはその程度なのか?」
「……ちょっと油断しただけよ。あなたの『世界』がどのくらいの力か試してみたかっただけ」
「そうか……それはよかった。危うく真祖の力はこの程度なのかと思うところだったよ」
「あなただってわたしに大したダメージを与えてないでしょ?」
「フン。下らない挑発にのってやって……もうちょっとだけ試してやるか」
「……」

まさか、アルクェイドの身体能力をDIOが上回っているっていうのか?

「覚悟なさいよ……八つ裂きにしてあげるんだから」
「よかろう。やってみろ。このDIOに対して!」
 

対峙する二人を見て俺は言いようのない不安に駆られるのであった。
 
 




「徐々に奇妙な冒険」
その50
「DIOの世界 その5」






「せいっ!」

アルクェイドが裏拳を放つ。

「無駄だ」
「……っ」
「フン! フン!」

DIOはそれを回避し、ザ・ワールドがアルクェイドに向けてダブルパンチを放った。

「くう……う」

それをかろうじてガードするアルクェイド。

「このおっ!」

そのままザ・ワールドのアゴ辺りを狙って蹴りを放つがあっさりと空中に逃げられてしまう。

「フン!」

空中からザ・ワールドの手刀がアルクェイドの首を狙う。

「甘いわ」

アルクェイドの肘が手刀を弾き返した。

びりびりとザ・ワールドの手が震える。

「おらあっ!」

そこを狙ったパンチがDIOの頬をかすめた。

「ぬうう……」
「今度はちゃんとやるわよ……オラオラオラオラオラオラオラオラ!」

間髪入れずのオラオラのラッシュ。

「フン! フン!」

ザ・ワールドの拳とアルクェイドの拳がぶつかりあった。

「突きの速さくらべか……」
「わたし……不謹慎なのかもしれないですけれど」

柱の影に隠れている琥珀さんがぽつりと呟いた。

「すごく……この状況、楽しんでたりします」
「……ああ」

気持ちはわからなくもない。

マンガと遜色ない屈指の名場面を目の前で見せられてしまっては。
 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」

ドガガガガガガッ! ガガンガンガンガンガガッ! ガガガガガッ!

ものすごい音を立てながらアルクェイドとDIOの体が宙に浮いていく。

「おお……お」

どういう原理なのかはわからないけど、俺はその光景に目を奪われていた。

まさに原作どおり。

だが、原作どおりということは。

ビシイッ!

「う……くぅっ!」

アルクェイドがザ・ワールドのパンチを受けてよろめいた。

「フフフ。やはり我が『世界』のほうがパワー精密さともに上だ! もうわかった……満足だ……ここらで遊びのサービス時間は終わりにしよう」
「まずい……」

確実にアルクェイドのほうが押されてしまっているのだ。

まさかDIOがここまでの力を持っているだなんて。

「や、やらせませんっ!」

秋葉が檻髪を発動しDIOの腕に絡みつけた。

「そして食らいなさいっ! 我が赤主……」
「バカが……貴様の能力が一番なまっちょろいぞッ!」

DIOはあっさりと檻髪を引き千切ってしまった。

「なっ……」
「死ねい!」
「やらせないわよっ!」

アルクェイドが手刀を放ち秋葉に向かうDIOを阻害する。

「無駄ァッ!」

ザ・ワールドの拳がアルクェイドの腕を下から突き上げ、ガードががら空きになってしまった。

「まずいっ……」
「フフフ。そんなに死にたいか真祖」
「このおっ!」

届かないのを承知で俺は七夜の短刀を振った。

「おっと」

それでDIOの注意が俺のほうへと向いてくれた。

「そうか、貴様もいたんだっけな……あまりに矮小な存在なので気づかなかったよ」
「……っ」

DIOの言葉に苛立ちを感じたが、それは事実である。

俺はここに来て何も活躍をしていない。

「代行者もシオンの治療で動けない……ふふふ。どうだね真祖。ここはやはり先ほどと同じ方法でこいつらを始末してやろうと思うんだが」
「ふざけないで……っ! あなたの狙いはわたしでしょうっ? わたしを狙えばいいじゃないっ!」

DIOの言葉を聞いて表情を歪めるアルクェイド。

先ほどと同じ……つまりそれはシオンを倒した時と同じ攻撃方法。

それは。

「とどめを刺すのはやはり『世界』の真の能力ッ!」
「……ッ!」

反射的に俺は飛んだ。

この射程では世界の射程距離から逃れられないとわかっていても。
 
 

「『世界』(ザ・ワールド)ッ! 時よ止まれ!」
 

空中に体が固定された。

まばたきひとつできない。

けれど。

(時の止まった世界が……見える?)

直視の魔眼のせいだろうか。

俺は時の止まった世界を認識出来ていた。

DIOの攻撃を仕掛けようとしていた秋葉も、秋葉を止めようとしていた琥珀さんも、シオンを抱えて逃げようとしていたシエル先輩も静止している。

それを俺は認識出来ているのだ。

「さて真祖。君とこのDIO以外の連中の時は静止してしまったわけだ」

その静止した時の中、DIOとアルクェイドだけが生きた動きをしていた。

「何よ……わたしの時間は止められない不完全な能力のくせに……」

大きく息をしているアルクェイド。

「それは君が『世界』の調律者だからさ。このDIOが時を止められるということは真祖も時を止められるということ」
「……」

アルクェイドはDIOと会話にまったく集中できていないようだった。

視線は泳ぎ、周りの何かを気にしているような感じがする。

「先ほどの時間停止……君は代行者を庇おうとしたが我がザ・ワールドはシオンを狙った。今回はメンバーが増えたからな……さらに守れる確率が減ったわけだ……フフ、フフフ」
「そんなまだるっこしいことしないでわたしを狙えばいいでしょうっ!」
「それは出来ないな。こいつらがいるから君は全力を出せないでいる。こいつらは味方どころか障害だ。このDIOが有利に戦えるためには必要不可欠な存在なのだよ」

俺はその言葉を聞いて愕然とした。

そう、DIOが強いんじゃない。

アルクェイドが本気を出せないだけなのだ。

全ては俺たちがここに来てしまったせいで。

「黙りなさいっ!」
「はっはっは……真祖たるものが弱きモノを庇い力を出せないとは滑稽だ。それはごく短い時の流れでしか生きない人間の考え方だと思っていたが」
「みんな……わたしの大切な友達よ。あなたになんて殺させない」
「ならば守ってやればいいじゃないか……出来ればの話だがな」
「……っ」

ザ・ワールドの姿がDIOの傍から消えた。

時間停止なんてしなくてもザ・ワールドは高速の動きができるスタンドだ。

アルクェイドでもそれを追うのはやっとなんだろう。

「次は貴様だ」
「!」

俺の目の前にいきなりザ・ワールドの姿が現れた。

……殺られるっ?
 

TO BE CONTINUED……



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