「……この好機……逃すわけにはいかないわよっ!」
「わかっています。今こそ……タタリを滅します!」
「DIOっ!」

アルクェイド、シオン、そして俺が一気にDIOを狙う。

「な……なんだと! まさか……!」

バグオグシャアアッ!

そして全員の攻撃がDIOを捕らえた。

俺はDIOの動を、シオンは腕を。

そしてアルクェイドがDIOの脳天を打ち抜いていた。
 

「苦労したわ……あなたが時を止めようがこのまま頭を打ち抜かせてもらうわよ……DIO!」
 
 



「徐々に奇妙な冒険」
その52
「DIOの世界 その7」










メキメキメキメキ……

DIOの骨が折れる音が響く。

「オラアッ!」

そのままアルクィドが腕を振り切った。

ブギャアアーーッ!

DIOはビルの窓をぶち破り、地面へと落下していく。

「はぁ……はぁ……」
「や、やったかっ?」
「ううん……手ごたえはあったけど……あいつは吸血鬼だから……まだ安心できないわ」
「そ、そうか」
「追いましょう。これを逃したらもう倒すチャンスはありません」

シオンはひらりと窓から飛び降りていった。

「お、おい! ここ何階だと思ってるんだ!」
「平気よ。ほら、エーテライトが引っかかってるでしょ」
「あ」

俺の足元にはしっかりと固定されたエーテライトの先端があった。

「わたしたちも行くわよ。ほら、志貴捕まって」
「……」

アルクェイドが手を差し出したが、俺はその手を握ることに抵抗を感じた。

「どうしたのよ。ほら」
「いや……俺は行かないほうがいいよ。きっと」
「どうして?」
「だって、俺は全然役に立ててないじゃないか。DIOが言ってたけど、俺はおまえが全力を出せないようにしちゃってる……邪魔者なんだよ」
「まあ、確かに今のところはそうね」
「うぐ」

自覚はしているけどそうあっさり言われると傷つく。

「でもね。志貴にはいざってときの爆発力があるでしょ。わたしを十七分割した時みたいに。DIOは志貴を侮っているから、むしろ最後の切り札になり得るのよ」
「買いかぶりすぎだって」
「……それに、ここにいると辛いわよきっと」
「……」

後ろを振り返る。

瀕死の琥珀さん。

壁に叩きつけられたまま動かないシエル先輩。

DIOに何度も踏まれたせいで動けない秋葉。

「……兄さん」

秋葉が弱弱しい声で俺を呼んだ。

「秋葉っ。大丈夫か?」
「ええ……なんとか……先輩も琥珀も……私が助けますから……安心してください」
「助けるって……どうやって?」
「共有ですよ……忘れましたか? 兄さんにも生命を与えてあげたじゃないですか」
「……あ」

そうだった。秋葉にはもうひとつ能力があったのだ。

それこそが命の共有。

秋葉の命を半分捧げる事で対象の相手を生かす技。

かつて俺は秋葉のその力によって生きながらえていたのだ。

「でも……それを使ったら余計おまえの体力がなくなっちゃうんじゃ」
「……大丈夫ですよ。シエル先輩は治癒の技を持っているらしいですから。まず先輩を治して……先輩に私と琥珀を治してもらいます」
「そ、そうか」
「兄さんは……行くべきです。星の白金のカードを引いた兄さんは……行かなくてはならないんです」
「……」
「だってよ志貴。どうする?」

アルクェイドが再び手を差し出す。

「……わかった」

俺は覚悟を決めた。

勝てる勝てないなんてどうでもいいからとにかく俺も戦おう。

秋葉やシエル先輩、琥珀さんが命を賭けて戦ってくれたのに、俺がここで行く事をやめたら本当にただのバカになってしまう。

勇気を出すのは今だ。

「それでこそ志貴よ」

アルクェイドはぎゅっと手を握り返してくれた。

「じゃ、行くわよっ!」

地上数十メートルの高さをアルクェイドと一緒に飛び降りていく。

「喋っちゃ駄目よ。舌噛むからね……あたっ」

本来なら緊張感を持って戦いに挑みたいのだが、アルクェイドのせいでなんだかそんな気になれなかった。
 
 
 
 
 
 

「ついに追い詰めましたよ……タタリ」
「こ……ろ……して……やる」

俺たちが地上に到達するとタタリとDIOが対峙していた。

「覚悟しなさい」
「……」

起き上がるDIO。

ヨロリ。

「な、なにィッ!」

ドシャアッ!

しかしDIOは立つことが出来ず、地面にぶっ倒れた。

「な……なんだ!? いったい……こ……こんな! バカなッ! あ……足に力が……」

DIOの体は痙攣している。

「無様ね……」

アルクェイドが冷たく言い放った。

「脚に力が入らんッ! たっ。立ち上がれないッ!」
「……」

まるで原作と同じセリフ。

俺はそこに不安を感じていた。

なぜならこの後DIOはジョセフの血を吸ってパワーアップをしてしまうからだ。

いや、しかしナイフでやられた琥珀さんはシュライン内にいるんだからまず安全だろう。

なら何故DIOはこのやり取りを続けているんだろうか。

そこが不気味でしょうがなかった。

「アルクェイド。さっさととどめを……」
「わかってるわ」
「頭痛がする……は……吐き気もだ……くっ……ぐう……」

アルクェイドが一歩一歩DIOに近づいていく。

「なんてことだ……このDIOが……気分が悪いだと? あの真祖に頭を破壊されて……立つことが……立つことができないだと!?」
「終わりね。死になさい」
「……」

ニヤリとDIOが笑ったように見えた。

「アルクェ……」
「『世界』時よ! ……」
「無駄よ……そんな技わたしには通用しない! 死になさいタタリ!」

アルクェイドが渾身の右ストレートを放った。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッー!」

続けてオラオラのラッシュ。
 

ブショアアアアアッ!

DIOは血まみれになって吹っ飛んでいく。

「かかったな真祖! これが我が『逃走経路』だ……きさまはこのDIOとの知恵比べに負けたのだッ!」
「……?」

なんだ?

DIOの吹っ飛んでいく方向にはなにひとつない。

それなのに高笑いを続けるDIO。

「……ちょ、シオンっ?」
「え?」

ところがそのDIOの吹っ飛んで行く方向にシオンが走り出した。

「なんだ……? 自分でトドメを刺すつもりなのか?」

俺はその程度にしか思っていなかった。

だが。

「まずいわ志貴。シオンの目がおかしかったの!」
「目が?」
「そう! あれは吸血鬼に支配された目!」
「な、なんだって!」
「この娘の心は完全にこのDIOが支配した! さあシオン! 我が肉体を受け止めるのだっ!」

がしっ……

DIOの言うとおり、シオンは吹っ飛んで行くDIOを受け止めごろごろと転がっていった。

「バカな……」
「何故この女の事を気に掛けていたと思う? それはこのDIOが自ら吸血鬼にした女だからと言っただろう? つまり……」

ドスッ。

DIOはシオンの首筋に腕を突き刺した。

「シオン!」

なのにシオンは表情ひとつ変えない。

ただ虚ろな表情をしているだけである。
 

「そうだ……シオンこそが我が逃走経路……このDIOが血を吸うために生かしておいたのだ!」
 

TO BE CONTINUED……



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