「おまえの敗因は……たったひとつだよ……DIO。たったひとつのシンプルな答えだ」
 

それは承太郎に負けた敗因とまったく同じ理由。
 

「てめーは俺を怒らせた」
 

DIO…
『世界』
―――――完全敗北…死亡
 
 



「徐々に奇妙な冒険」
その55
「遥かなる旅路」










「……」

全ての諸悪の根源、DIO……いや、タタリは死んだ。

朝日を待つまでもない。

完全にこの世から消え去ったのだ。

「終わった……」

その場に膝をつく。

今までの疲労が一気に出てしまった感じだ。

「は……あ」

仰向けに寝転がる。

星がいやに綺麗だった。

「アルクェイドー。生きてるか?」

そのまま声をかける。

「うん……ボロボロだけどね」
「ごめん」
「謝らなくていいのよ。志貴はちゃんとDIOを倒してくれたじゃない」
「まあ……な」

正直実感が沸かなかった。

そりゃ死の点を突いたんだから生き返ってくるはずないんだけど。

あのDIOのことだ。

ひょんなことで生き返ってきたり……

「……」
「わっ」

気付くとシオンが俺の顔を覗きこんでいた。

「し、シオン。大丈夫なのか?」

確かシオンはDIOに体中の血液を抜かれてしまったはず。

「問題ありません。予測済みでした」

いや、だからどうやって助かったのか知りたいんだけど。

「知らないほうが幸せだと思います」
「……」

まあとにかくシオンが無事な事だけは確かなようだ。

それだけで十分だろう。

「ふふ……ふふふ」
「?」

すると突然笑い出すシオン。

「愚かなり人間……こいつの体……頂いたぞっ!」
「なっ……まさかっ!」

タタリがシオンの体を乗っ取ったっていうのかっ?

俺は慌てて身を翻し立ち上がった。

「てめえ!」

七夜の短刀を抜きシオンに向けて構える。

「……冗談です。うそだよぉ〜んというやつです」
「シ、シオン?」
「悪かったです。ちょっとふざけただけです。正真正銘わたしです。シオン・エルトナム・アトラシア」

くすくすと笑うシオン。

「一九八一年の映画『類人猿ターザン』の主演女優は?」

俺は本物か確認するべく問題を出すことにした。

「ボー・デルク」

即座に答えるシオン。

「『今夜はビートイット』のパロディ『今夜はイート・イット』を歌ったのは?」
「アル・ヤンコビック」
「秋葉と言えば?」
「ナイチチ」
「……本物みたいだな」
「志貴。最後の質問は秋葉がいる時にもう一度して欲しいのですが」
「勘弁してくれ」

どうやら間違いなくシオンのようだ。

「これで貸したものは返してもらったかしらね……」

気付くとアルクェイドが俺の隣に立っていた。

「立てるのか?」
「なんとかね。戦えって言われたら無理だけど」
「そうか。よかった」
「……」

シオンはDIOのいた場所をじっと見つめている。

「タタリにはみんなが貸していたんですよ……百年以上昔から大勢の人間が……あらゆるものを貸していたんです」
「シオン……」
「結局わたしが人間に戻る方法はわかりませんでしたが……タタリが滅んだ事により呪縛に悩まされることはなくなりました。ありがとうございます。志貴。あなたのおかげです」
「い、いや、俺はそんな大した事は」

ほとんどアルクェイドが戦ってたようなもんだからな。

「妹……シエル……琥珀……終わったわ……」

遠い目をして呟くアルクェイド。

「いやいやみんなきっと生きてるから」

勝手に殺されちゃ困る。

「あれ? そうだったっけ?」
「そうだよ。怪我はしてるかもしれないけどさ」

多分まだヴァニラと戦った階あたりにいるはずだ。

「代行者が傷を治しているでしょう。心配は不要です」
「だな……」

きっとみんな大丈夫だ。

「様子を見に行きましょうか」
「そうね。倒したって報告しに行かなきゃいけないし」
「それが懸命です」

そんなわけで俺たち三人はシュライン内へと再び入っていった。
 
 
 

かつこつかつこつ。

階段を登っていく音が響く。

かつん。

「!」

下でなった音に思わずびくついて苦笑したり。

「何もいませんよ。もうタタリは死んだのですから」
「そ、そうだよな」

なんせ一晩のうちに第三部のスタンド使いに全部に襲われたからなあ。

僅かなことにも驚いてしまうのも無理がないことだと思って欲しい。

「次の階だっけ?」
「……だと思うけど」

上を見るとヴァニラ・アイスに空けられたと思われる巨大な穴が開いていた。

「これ、後で直して置かなきゃ駄目よねえ」
「どうやってだよ」
「お金使って」
「……リアルすぎてイヤだ」

そのへんはマンガみたいにうまくいくもんじゃないらしい。

「まあそれも正義の味方の仕事ということでしょう」
「いや、違うだろう」

さっきまでシリアスだった反動なのか、アルクェイドもシオンも妙に軽いノリになっていた。
 
 
 
 

「シエルー。琥珀ー。妹ー。生きてるー?」

アルクェイドがヴァニラと戦った部屋を覗きこむ。

「……あ」
「ど、どうしたっ?」

慌てて俺も部屋を覗いた。

「……」

たゆん。

するとその胸を露にした琥珀さんが。

「きゃ、きゃーっ。志貴さんが覗いてますよっ」

滅茶苦茶わざとらしい琥珀さんの悲鳴。

「な、遠野君っ? なんてことをっ!」
「え、ちょ、俺はただみんなの様子を見に来ただけでっ!」

俺は慌てて逃げ出した。
 
 
 
 
 

「……なんであんな状況になってるんだ?」

いや、多分先輩が琥珀さんの胸の傷を治療してたからなんだろうけど。

「綺麗だったなあ……」

思い出してついにやけてしまう。

「はっ!」

いかん、いくらなんでも気が緩みすぎだろう。

でもボスは倒したんだから別にいいよな。

「君」
「ははははははは、はいっ?」

いきなり背中を叩かれた。

慌てて振り返ると見知らぬ顔が。

「……誰?」
「それはわたしのセリフだ。わたしはここのビルの警備員だ。警報が鳴ったから何事かと見に来たんだよ。……何があったんだね? これは」
「え、ええと……」

まずい、どうやらホントに一般人の人みたいだ。

タタリがジョジョのキャラクターを具現化して……なんて言っても絶対信じてくれないだろう。

「巷で噂の殺人鬼かね?」
「え」

俺が答えあぐねているとその警備員さんはそんな事を言った。

「最近噂になっているあの殺人鬼だ。なんでも爆弾などを利用して大量殺人を行うとか……」
「……」

なんかまた噂が肥大化しているようだ。

だがもう元凶のタタリはいない。

いずれそんな噂も消え去っていくだろう。

「そ、そうです。その殺人鬼が爆弾で建物を破壊したんだと……」

俺はせっかくなのでその噂を利用することにした。

「そうなのか。わかった。わたしはあちらの様子を見てこよう。君はあっちを見てきてくれ」
「あ、はい。わかりました」

幸いにも警備員さんはシエル先輩たちのいる上の階へ行くという選択をしないでくれた。

「……まあ、一応フリだけしておこうかな」

言われた通り探して来てくれと言われた方向の部屋を覗いてみることにする。

まあ当然なんにもないわけなんだけど。

「……」

あれ。

部屋の中には足があった。

女の子の足だ。

いや、もっと正確に言えば女の子が倒れている。

しかもそれは俺のよく知っている女の子であった。

「あ……アキラちゃん?」
 

どうしてアキラちゃんが……こんなところに?
 

TO BE CONTINUED……



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