「逃がさないっ!」
「シオンっ!」

シオンの足元に玄関にあった人形が落ちている。

俺は思い出していた。

あの人形は呪いのデーボの操る人形だったのだ。

「うけうけうけけけけけけっ!」
「なっ……!」

ザシュッ!
 

俺の目の前でシオンの背中から鮮血が飛び散った。
 
 







「徐々に奇妙な冒険」
その9
悪魔 その2









「あうっ……くっ……」

前のめりに倒れるシオン。

そしてそのままピクリとも動かなくなってしまった。

「うけけけけけけーッ! よくも! よくも俺の片目をつぶしてくれたなっ!」

ぐるぐる首を回すエボニーデビルの人形。

「て、てめえっ!」

俺はメガネを外し、そいつに向けて短刀を振った。

「へたっピィィッィ!」

くるくると回転して俺の背後に飛んでくるエボニーデビル。

「くっ……」

慌てて振り返り攻撃。

「アギ、アギ、アギアギィーッ!」

飛び回るエボニーデビルに刃を振るが、全て当たらず避けられてしまった。

ガチャンと音を立てガラス瓶を割るエボニーデビル。

「ヘーイ! 殺人鬼と言ってもスピードは大したことねえみてえだなぁ〜〜!」
「く、くそっ……こうなったら滅法やたらに突くしかないっ!」

やけくそとばかりに短刀を振り回す。

「おめえ勘がッ! ドっにぶィゼィィィッ!」
「うわ、うわわっ……」

首筋に飛び掛ってきたのをなんとか避けた。

「ブギィィィッー!」

ガシャンガシャンとビンを鳴らして飛び回るエボニーデビル。

「く、くそっ……」

追いかけるが追いつけず、一方的に体力を消耗してしまう俺。

「はぁ、はぁ……」

力尽きてその場に座り込む。

「うけっ! うけっ! うけけけけ!」

その周りをエボニーデビルは何をするわけでもなくただ回っていた。

「何だ……何をしてるんだっ?」

いや、違う。

さっきからこいつはずっと、液体をばらまいているのだ。

「ヘイ! 遠野志貴! 今からテメーのタマキン噛み切ってやるぜーッ! メーン!」

ぶははははと笑いながら首を回すエボニーデビル。

「なんて……卑猥な野郎だ」

漫画で知ってはいたが、実際に見ても反吐が出るようなやつである。

「このっ!」
「おおっーと!」

俺の攻撃をかわし、エボニーデビルはシャングリラに飛びついた。

「このトンチキがァーッ! てめーのひっついてる床をよおーく触ってみろよなあ」
「……」

手はじっとりと濡れていた。

「ビールやジュースや酒でビショビショだろーがァ! 俺はわざとぶちまけてたのさあーっ!」
「……ああ、よく知ってる」

それはもう途中から気づいていたことだ。

しかし俺はあえてそのままにさせてやった。

こいつが気づいてない事がひとつあるのである。

「ああん? 何か言ったかぁっ? これから俺はこの漏電しているヘアドライアーでその濡れたところへ、どおおすると思うねえ〜?」
「……」
「乾かしてやるんじゃねーぜッ! ギャハハハハハハハハ!」

ひとしきり笑った後、ぴたりと笑いをとめるエボニーデビル。

「死ね。 感電してあの世へいきな。うらみはらさでおくべきか」
「……ひとつ教えておいてやる。食らう前に自分から倒れておけばな、傷は浅くなるんだよ」
「あ?」
「パレル・レプリカ・フルトランス!」
「ぎゃあああああああーッ!」

シオンの放った銃弾でエボニーデビルは横に吹っ飛んだ。

ばちぃん!

そしてドライヤーも吹っ飛び、濡れていないベッドの上に落下していた。

「はは。やっぱり無事だったんだな、シオン」
「当たり前です。あの程度でこのわたしが倒されるはずがありません」

そう、俺は途中でシオンが動いていることに気づいたのだ。

そしてこいつが油断した一瞬にシオンがなんとかしてくれるだろうと。

まあ、他力本願な方法ではあったが、上手くいったので結果オーライだ。

「タタリ。何故あなたはこうも雑魚ばかりを再現するのですか?」

倒れたエボニーデビルにシオンが問いかける。

「フフフ……演出だよ、シオン。物語は徐々に作っていくものだからね」

それはジョジョと徐々でかけてるんだろうか。

「それに……時間稼ぎでもある。何も君たちだけを襲う必要はないわけだからな。ヒャハハハハハハハ」

大笑いするエボニーデビル……いや、タタリ。

「な、なんだって?」
「ヒャハハハハ! 殺人貴君。君も大した事なかったな。シオンがいなかったらこいつが君を殺していたところだったよ!」
「……そうか。よし。もう一度かかってこい」
「ヒャ?」
「どうした? てめー、俺の○○○○を噛み切るとか言ってたなあ。やってみろ! このド低俗野郎が」
「はっはっは。これはいい。では遠慮なくそうさせてもらおう。ガルルルルルーッ!」
「俺はてめーの……そこ以外を切り刻む」

俺の短刀が届く範囲ならこんなやつものの数ではない。

一瞬でエボニーデビルを十七個のカタマリに分解してやった。

「な……まさか、これは……」
「さよならだ。もうお前は終わりだよ」
「ヒャハ、ヒャハ、ヒャハハハハ……なん……あり得……晴らしい……」

エボニーデビルは意味不明な事を言って塵になって消えてしまった。

「……これでタタリ本体を倒したことにはならないかな」

メガネをかけ短刀を仕舞う。

スタンドを倒せば本体も倒せるってのがスタンドの常識だけど。

「いえ。あくまであれは分身です。本体には大した痛手になっていないでしょう」
「そうか……」

世の中そんなにうまくいかないのである。

「それよりも志貴。今タタリが恐ろしい事を言っていませんでしたか」
「ああ。君たちだけを襲う必要はない……か。まさか」

もしかして、シエル先輩やアルクェイド、秋葉たちは既に襲われているんだろうか。

「もう一度家に電話をかけてみるよ。なんだか嫌な予感がする」
「はい。そのほうが賢明です」

すぐに遠野家へ電話をかけた。

プルルルル、プルルルル。

プルルルル、プルルルル。

「……出ない」
「志貴」
「まずいぞ……秋葉には力があったって実戦経験なんかほとんどないんだ。それに翡翠や琥珀さんなんかもっと……」
「……遠野家へ向かいましょう。まだ間に合うかもしれない」
「わかってる!」
 

俺とシオンは遠野家へ向けて全速力で駆け出すのであった。
 
 

続く



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