慌ててチームのメンバーを呼び寄せる琥珀さん。
「うーむ」
策士策に溺れるというかなんというか。
「……先取点、取っちゃった」
点を入れたはずの弓塚が呆然としていた。
志貴チーム 1
琥珀チーム 0
キャプテン琥珀
〜スーパーストライカー〜
その11
「お待たせしましたー。これで行きますよっ」
「……ん」
アキラちゃんは何故かフォワードに回され、イチゴさんがキーパーになっていた。
イチゴさんの居た場所には翡翠が立っている。
「イチゴさんか……」
また厄介そうな人がキーパーになってしまった。
「みんな、油断は禁物だぞ!」
シュート数では圧倒的にあっちのほうが上だし、攻撃はさらに厳しくなるだろう。
「この一点をなんとしてでも守るんだ!」
「任せてお兄ちゃんっ!」
「脇役舐めてると痛い目見るって教えてやるぜ!」
「笑止。この私を抜く事など不可能」
頼もしい答えだった。
なんとなくチームワークも出来つつある気する。
「向こうは必殺ワンツーがあるからニャー。切れ込まれるとやばいぞー」
「だなあ」
琥珀さんと翡翠には要注意だ。
「話はそのくらいでいい? そろそろいくわよ?」
白レンが少し苛立った顔をしていた。
「あ、うん、ごめん。いいよ」
「……やられた分はしっかり返すわっ!」
そんな事を言いながらパスを出す白レン。
「七夜くんパスキャッチ!」
「……やけに後ろにパス出したな」
七夜は向こうのゴールの一番傍にいるのだ。
「さて、始めるか」
周囲のメンバーに何か合図をする七夜。
「行くわよ〜!」
ボールも持ってないアルクェイドが勢いよく駆け出した。
「……ボールキープしておいて味方をあがらせる作戦か?」
「あたしがマークしておくよ」
蒼香ちゃんがアルクェイドについた。
「む……ついてこれるかしらっ?」
アルクェイドの動きは気になるが、取りあえずボールを取りに行かなくては。
「行くよニセモノー! 今度はあたしがボールを取ってやるっ!」
都古ちゃんが七夜に向かっていった。
「やれやれ、俺の妹はどうしてこう凶暴なのばかりかね」
ほんとだよなぁ。
「都古くんのタックル!」
「無駄だな」
再び消えるフェイントで避ける七夜。
「必殺ドリブル持ちに切れ込ませるとまずいな……」
こっちに必殺タックル持ってる味方いないのか?
「アチキが行くぜー!」
今度はネコアルクが向かっていった。
「よっと」
さらにかわす。
「……まずい」
七夜に構ってる間にゴール前に選手が集まってしまう。
「……」
「お」
レンが七夜の前に現れた。
「レン。おっさんにルールを教えるのは?」
びしっと親指を立てる。
「そうか。間に合ったか!」
これでゴールも安心だ。
「黒猫相手じゃ分が悪い……」
七夜はパスを出した。
「……来たわね」
ボールを受け取ったのは白レンだった。
「レン。今度は抜かせて貰うわよ」
そして自らレンへと向かっていく。
「抜くっ!」
白レンが左右に不規則な動きを始めた。
「お……おっ?」
白レンが二人に増え、三人に増えた。
「!」
レンは一人の白レンを狙ってスライディングを仕掛けたが、その白レンは消え去ってしまった。
「分身ドリブル……」
あれは確かカルロスの技だ。
「みんな、白レンに気をつけろ!」
「警戒したって無駄な事よ」
「うわっ」
羽居ちゃんが抜かれていた。
「カット!」
「当たらないわね!」
なんとワラキアまでも。
「もうゴール前じゃないか……!」
白レンは既にペナルティエリアの中だ。
「ちっ……こっちはオトリかっ!」
アルクェイドをマークしていた蒼香ちゃんが向かっていく。
「行くわよミラージュシュート!」
蒼香ちゃんが追いつく前に白レンがシュート体勢に入ってしまった。
「おっさん!」
「任せておけ!」
ずっしりと構えるネロのオッサン。
光を放ち不可思議な軌道を描くボール。
「ヌン!」
豪腕一閃。
「こぼれ玉になったー!」
「よしっ!」
このボールを手に入れて反撃だ!
「来た来たっ! 待ってたわよー!」
高いボールに動きを合わせるアルクェイド。
「げ!」
ここでこいつかよ!
「ネロくん倒れている!」
しかも白レンのシュートを防いだおっさんは倒れたままであった。
「……だ、誰かっ!」
「任せろっ!」
有彦が向かっていく。
「ふん、このわたしからボールを……」
ぱしっ。
「有彦くんボールを取った!」
「……マジかよ!」
嬉しい事のはずなのに驚いてしまった。
「な、なんでっ!」
叫び声を上げるアルクェイド。
「むー、アルクェイドさんは高いボールのせりあい弱いんでしょうか……」
琥珀さんがそんな事を言った。
「……?」
チャンスのところを失敗したのにいやに冷静だな。
なんか嫌な予感がする。
「有彦! こっちにくれっ!」
とにかくボールをキープしておこう。
「おうっ!」
有彦が俺に向かってパスを出した。
「よっと」
「な!」
俺の目の前に七夜が割り込んでくる。
そしてボールを取られてしまった。
「お、おまえ……!」
「オマエにボールが来る事は既に読んでいた……混沌相手にシュートを撃っても防がれるだろう事も」
「なんだと?」
ボールを蹴り上げる七夜。
「しまっ……!」
一瞬言葉に意識を奪われてしまった。
「真祖が奪われたのはちと予想外だったが。結果は変わらない」
「誰がそんな……琥珀さんかっ?」
「もちろんそれもあるさ。けど、もっと確実なヤツがいる」
「……確実な……?」
まさか。
まさか……!
「アイツはさ。競り合いが弱いんだよ。体力ないしな。だからキーパーに配置したのは間違いだった」
ゴール前では競り合いが続けられ、ボールが宙へと舞った。
「未来を予知する……つまり試合の展開を読むという事だ。キャプ翼の世界でさ。そういう事に関して天才がいただろう?」
一人の少女がそれを追って飛んだ。
「試合は半分しか出られない……だがその能力は翼をも超える」
宙返りをして頭上にあるボールを蹴りあげる。
「アキラくんのハイパーオーバーヘッド!」
ガラスのエース、三杉淳。
「ペナルティ内からのあいつの必殺シュートは……」
「……」
余程のキーパーでないと止められないだろう。
まだルールを覚えたばかりのネロのおっさんじゃ。
「だが届かない!」
ゴールミットが揺れた。
「決まった! ゴ〜〜〜ル!」
「……くそっ」
あっという間に追いつかれてしまった。
「ふふふ。この調子でばしばし行きますよー! まだまだ隠し玉はあるんですからっ」
琥珀さんはしてやったりという顔で笑っているのであった。
志貴チーム 1
琥珀チーム 1
続く