「決まった! ゴ〜〜〜ル!」
「……くそっ」
あっという間に追いつかれてしまった。
「ふふふ。この調子でばしばし行きますよー! まだまだ隠し玉はあるんですからっ」
琥珀さんはしてやったりという顔で笑っているのであった。
志貴チーム 1
琥珀チーム 1
キャプテン琥珀
〜スーパーストライカー〜
その12
「ま、まあ、まだ最初に戻っただけだ。取られたら取り返す。基本だからな」
みんなに向けてそう叫ぶ俺。
「……ぬう」
ネロのおっさんがいぶかしげな顔をしていた。
「ど、どうしたんだ?」
元々悪人面だけど、そういう顔をしているとさらに怖い。
「いや……ちとな」
「アキラちゃんに入れられたのはしょうがないさ」
2の三杉は無茶苦茶に強いからなあ。
「そうだな。一度ではまだ早計というものだ」
「あん?」
どうも会話がかみ合ってない気がする。
「まあいい。ゴールは守る。貴様は点を取りに行け」
「あ、うん」
取りあえず頷いておいた。
「……とは言ったものの」
さてどう切れ込んでいくか。
「私が突っ込みますか?」
秋葉が尋ねてくる。
「うーん」
今までの流れだと、意外な人物が意外な強さを持ってるんだよなあ。
「……ってことは」
もしや。
「兄さん、よからぬ事を考えていませんか?」
「いや、もしかしたらがあるかもしれないだろ。やってみよう」
「期待するだけ無駄だと思いますけどね」
俺はセンターサークルに立った。
「あら、戻ってきたんですね、志貴さん」
くすりと笑う琥珀さん。
「今度は俺たちが攻める番だ」
琥珀さんめ、見てろよ。
「行くぞっ!」
さっそくその人物目掛けてボールを蹴る。
「?」
「羽居っ! パスが行ったわよっ!」
そう、今までぱっとした活躍をしていない羽居ちゃんだ。
ディフェンスは駄目かもしれないけれど、オフェンスではどうだろう。
結構強かったりするんじゃないか?
「えっとー」
「考えてないでいいからさっさと進みなさいっ!」
「あ、うんー」
てってってって。
「……遅い」
なんつー遅いドリブル。
「あの子だけ補正かかってないんじゃ……」
そんな気さえしてしまう。
「何よそのドリブルっ! バカにしてるのっ!」
アルクェイドが突っ込んでいった。
「……いや、まだわからないぞ」
遅いドリブルかもしれないけれど、意外と避けてくれるんじゃ。
「アルクェイドくんボールを取った!」
「駄目じゃん!」
完璧なまでにダメダメだった。
「……中身バチスタとかじゃないよなあ」
それだと補正かかっててもあんな感じなのかも。
「羽居に期待するほうが間違ってるんだよ、おまえさん」
蒼香ちゃんがアルクェイドに向かって行った。
「む……パスっ!」
珍しくパスを出したアルクェイド。
「なっ」
これは予想外だったのか、蒼香ちゃんは何も出来ずにボールを逃してしまった。
「シエルくんパスキャッチ!」
「また先輩か……」
「さあ行きますよ!」
実はオフェンスでもディフェンスでも先輩からボール奪えた事ないんだよなあ。
「……でもやるしかないんだ」
俺は先輩へ向かって行った。
「食らえ!」
渾身のタックル。
「残念でした」
「なにィ!」
丸っきり敗者のセリフを言ってしまう俺。
「わたしのドリブルはそう簡単に止められませんよ!」
やたらと華麗なドリブルで進んでいく先輩。
「調子に乗るなー!」
今度は都古ちゃんが立ちはだかった。
「協力するよ」
蒼香ちゃんも追いついてくる。
「二人でかかってきても……」
ドリブル突破を試みる先輩。
「嬢ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
目配せしあう二人。
「……お?」
これはまさか。
ずざーっ!
蒼香ちゃんがスライディングをする。
その足は普通のスライディングと異なり、足の裏が空に向けられていた。
「とうっ!」
都古ちゃんが飛ぶ。
着地先はもちろん。
がしっ!
蒼香ちゃんの両足と都古ちゃんの両足が重なり合う。
「都古くんスカイラブで飛ぶ!」
そう、これこそ全国の子供たちが憧れた必殺技。
「食らえスカイラブタックル!」
立花兄弟の必殺技、スカイラブ攻撃だ。
「なっ……!」
そしてこの技は演出が異常に長いが、その間は他のプレイヤーの動きは全て静止してしまう。
まさにキャプ翼ゲーの世界ならではの技である。
ばすっ!
「都古くんボールを取った!」
「しまっ……!」
ついにあのシエル先輩からボールを奪う事が出来た。
「やったぞ!」
まさかあの二人が立花兄弟だったとは。
「お兄ちゃん、どうするっ?」
「行くしかないだろっ!」
彼らはオフェンスディフェンス共に活躍できる万能プレイヤーなのだ。
「お姉ちゃん!」
「嬢ちゃん!」
都古ちゃんがパスを出した。
「ジェミニアタックですかっ……!」
琥珀さんが叫んだ。
「気付いてももう遅いさ!」
最初のパスを止められなかった時点で必殺ワンツーは発動するのだ。
「で、でた〜! 息の合ったコンビプレイに琥珀チームの守りは突破されていく!」
アルクェイドをすり抜けシオンをすり抜け二人は一気に切れ込んでいった。
「よーしっ!」
都古ちゃんが高いボールに動きを合わせた。
「行くよっ!」
「あたしたちの空中ワザ!」
再び蒼香ちゃんのスライディング。
がしっ!
スカイラブで飛ぶ都古ちゃん。
「都古くんのスカイラブハリケーン!」
そして強力な勢いのついたヘディングシュートが放たれた。
「……っ!」
軋間がブロックに向かうが届かない。
「ふ」
イチゴさんが怪しく笑ってた。
「キエエエエエ〜〜〜ッ!」
叫び声と共にゴールポストを蹴る。
「三角飛び……!」
これも全国の子供が憧れた必殺技のひとつだ。
「あーっ! あたしがやろうと思ってたのにー!」
都古ちゃんが叫んだ。
ばしっ。
「一子くんゴールを守った!」
「うわっ」
必殺シュートだというのにあっさり片手でキャッチされてしまった。
「やはり必殺持ちキーパーは違いますねー」
「くそっ」
イチゴさんも切り札の一人かっ。
「駄目か……あともう一人いれば……」
蒼香ちゃんがそんな事を呟いていた。
「あと一人か……」
誰かはわかっている。
最初は鳴物入りでの登場だったのに、いつの間にか「これはいっタイ!」などの迷言を発するようになってしまったディフェンスの男だ。
「ランダムだからなあ」
誰が誰になっているかはわからない。
和夫と政夫が同じチームになれただけでもよしと考えるべきなんだろうか。
「さあ行くよ! 反撃だ!」
イチゴさんがボールを蹴り上げた。
「とにかく攻撃を防がないと……!」
速攻で攻めていったのは二人だけだから選手はまだ残っている。
「ふふふ、そう来ましたか。ならばこちらもそろそろ……」
琥珀さんが再び怪しい笑みを浮かべていた。
続く