「ば、バカにしているんですか……!」

秋葉の怒りが頂点に達したその瞬間。

ずさっ!

シオンのタックルがボールを奪い取っていた。
 

「これも戦略ですよ、秋葉」
 
 



キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その15







「しまっ……」

いくら叫んでも後の祭り。

「さあ行きますよ代行者!」

シオンは即座にパスを出した。

「カットだ!」
「うふふ、それは無理な相談ですねー」
「……くっ」

さっきのななこさんの速攻を防ぎにいったせいで、みんな動きが鈍くなっていた。

「シエルくんパスキャッチ!」

ボールは先輩の元へ。

「今度は油断しません! 確実に決めさせてもらいます!」

シエル先輩はペナルティエリア内へ切れ込んでいった。

「ぬ……」

身構えるおっさん。

先輩はまだシュートを打たない。

「……はっ!」

シエル先輩のやろうとしている事がわかった。

「なんとしてでも止めるんだ!」
「さすが遠野くんです。いち早く気付くとは。でも」
「シエルくんにネロくんが向かう!」
「ぐっ……」

既に先輩とおっさんは一体一の状態になってしまっていた。

「……」

こうなるとキーパーはシュートに備えるか、ドリブルに備えるかしか出来ない。

「さあ、わたしのシュートを見せてあげましょう!」

先輩は何故か親切にシュートを打つと宣言してくれた。

「小癪な……」

ばしっ!

シュートが放たれる。

「おっさん! そのシュートは……!」

一見威力がないただの低いシュートであるが。

かくん。

「なにィ!」

おっさんの手に触れる直前で角度を変え、下へ落ちた。

「スライダーシュート……!」

それこそピエールの得意とした必殺技である。

「今度こそ!」

決められたかっ?

「ネコアルクダーイブ!」
「な!」

べちん。

飛び込んできたネコアルクによってシュートが弾かれる。

「おまえ……!」

なんでこんなやつがいるんだろうと思っていたけど。

「ふ、惚れるんじゃないぜべいびー」

ここでのフォローは嬉しすぎる。

なんて凄いやつなんだ、こいつは。

「もっと美人だったら惚れてたな!」
「……アチキを美人じゃないとぬかすとは、目が腐ってるんじゃにゃいのか?」

ボールは高く舞い上がっていく。

「セブンっ!」
「は、はいっ」

先輩の掛け声でななこさんが飛んだ。

「させるかっ!」

復帰した有彦が同じくボールを追う。

「遠野くんチーム……」

屈んだままの先輩が何かを呟いていた。

「あなたたちと戦っていて、わたしたちはストライカーとしての差を思い知らされました……」
「ちょ……」

待って、そのセリフは。

「だからそれを補うためにわたしたちはこのシュートを編み出したんです!」

立ち上がり、きっと上空を見つめる先輩。

「セブンっ!」
「マスター!」

そして先輩が宙を舞った。

「うりゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

二人はボールへ近づいていき。

「ななこくんたちのスライダーキャノン!」

合体技が放たれた。

「うぬっ……!」

通常のツインシュートよりもさらに不規則な動きを見せるボール。

おっさんは懸命に飛んだ。

「だが届かない!」

しかし無常にも。

「ああっ! ななこくんのスライダーキャノンに志貴チームゴールは突き破られたぁー!」

ボールはミットを貫通してすっ飛んでいった。

「……同点か」

これで2ー2。

「やりましたねマスターっ!」
「どうせならスライダーキャノンを撃つ前に得点したかったです」
「……ぬう」

自分の手をじっと見つめているおっさん。

「しょうがないさ、今のは」

本当だったらそのまえのスライダーシュートやキャノンシュートで決められてもおかしくなかったのだ。

「……いや、少しいいか?」
「ん」

先輩たちが遠ざかっていくのを確認してからおっさんがそんな事を言った。

「どうしたんだ?」
「……通常のシュートなら反応は出来る」
「ああ」

実際おっさんのセービング率はかなり高い。

「だが、高いボールや低いボールからシュートを打たれると、反応が鈍るのだ」
「……高いボールや低いボール……?」

それってダイレクトシュートに弱いってことか?

「あ」

一人思い当たる人物がいた。

「……メオンか」

ドライブシュートならば100%防げるのに、ただのヘディングが防げないという強いんだから弱いんだかよくわからないキーパー。

「そいつが誰だかは知らんが、この事が向こうにばれたらまずいのではないのか」
「確かに……」

それがばれたらもう向こうはダイレクトシュートしか狙ってこないだろう。

「ねえ遠野くん、わたしがキーパーやろうか?」
「弓塚?」
「ほら、わたし結構頑丈だし」
「うーん……気持ちは嬉しいんだけど、いいよ」

女の子にキーパーやらせるのもなあ。

なんせキャプ翼ゲーの中で最も吹っ飛ぶ確立が高いポジションである。

それに、なんとなく弓塚はスーパー頑張りゴールキーパーなんじゃないかなという気がしてたまらなかった。

「よし、俺がやろう」
「遠野くんが?」
「ほう。貴様がか」
「俺だったらキャプ翼ゲーのシュートに詳しいからさ」

つまりシュートがどういう軌道で飛んでくるかわかるということだ。

「止められるんじゃないかな」
「……なんかどっかで聞いた話のような」
「そ、そう?」

言われて見ると確かに。

「ならば再びディフェンスに戻ろう。黒猫にルールは学んだ。先ほどのような無様な姿は見せん」

やる気満点のおっさん。

「問題がないのなら早く始めるぞ」
「あ、ああ」

まあ、多分大丈夫だろう。

「ポジション交代ー!」

大声で叫んで配置の変更を知らせる。

「志貴さんがキーパーですか……」
「ふふ、面白くなってきたじゃないの」
「頼りなく見えるけどねえ」

琥珀チームは様々な反応をしていた。

「見てろよ」

華麗にセービングしてやるぜ。

ピーッ!

ウチのチームのキックオフ。

「……」

なんか向こうのほうでごちゃごちゃ動いていた。

「こうやって見るとゴールって結構遠いんだなあ」

フィールドで走ってるとそんなに感じないけど。

「……」

遠くのほうでボールが行ったりきたり。

「……ヒマだ」

敵が居ない時のキーパーはやる事が何もなかった。

「おっといかんいかん」

みんなが頑張ってるのにキーパーがこれじゃな。

「よし!」

頬を叩いて気合を入れる。

「兄さんっ! そっちへ行きますよっ!」
「うおっ」

ボールがこちら目掛けて飛んできていた。 

「こ、これを待っていたんだ」

いよいよキーパーの見せ場である。

「さあかかってこい!」

乱戦の中、一人が空高く飛び上がった。

「行くわよアルクオーバーヘッド!」
「……うわぁ」

いきなり最終兵器かよ。

「くそっ!」

有彦がシュートへ向かって飛んでいく。

ずごっ!

「乾くん吹っ飛んだー!」

現実世界だったら即死なんじゃないかって勢いで飛んでいく有彦。

「おまえの犠牲は無駄にはしないぞ!」

なんとしてでも止めてみせる!

「とうっ!」

ボールへ向かって跳躍。

パンチがもう少しでボールに。

もう少しで。

「だが届かない!」
「……っ!」

ずばっ!

ボールが目の前を高速で通り過ぎていき、ネットを貫通して壁にぶち当たっていた。

「……」

壁にはめり込んだボールの跡が。

「あれに当たったら……」

俺も有彦のようになってしまうのだろうか。

「い、いや、俺はキーパーなんだ!」

むしろぶつかってこその仕事なのである。

「遠野くん、大丈夫?」

弓塚が声を掛けてきた。

「あ、ああ。次こそ止めてみせるさ!」

たぶん。
 

志貴チーム 2
琥珀チーム 3
 

続く



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