時計を見る。

時間は五分を切っていた。

もうすぐ前半が終わる。

「……ここで点差をつけておけばっ!」

後半でも余裕を持ってプレイできるはずだ。

「行くぞみんな!」
 

どちらのチームにとっても、この五分が重要な勝負のしどころである。
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その19








「通さないわよ志貴っ」
「おっと」

アルクェイドが俺に向かってきた。

「ていっ」

まだ距離のあるうちにパスを出してしまう。

「あ、ちょっと! ずるいわよ!」
「おまえと正面からぶつかって勝てるわけないからな」

ボールは味方に任せて走る俺。

「……っ」

アルクェイドは俺を追いかけるのを止めてボールへと向かっていった。

「来るならこーい!」

中央からライン際へ向けてドリブルして行く都古ちゃん。

「どうせまたパスでしょ……させないわよっ!」

ばっとジャンプするアルクェイド。

「……」
「あ、あれ?」

都古ちゃんは普通にドリブルしてアルクェイドの横を通過していった。

「ず、ずるいっ!」
「……いや、おまえが勝手に飛んだだけだろ」

まあ確かに必殺ワンツー持ちのパスは警戒しちゃうけど。

「行くよお姉ちゃんっ」
「ほい来た」

ここでワンツー発動。

「と、止めるんです!」

先輩が叫ぶ。

「無駄だよっ!」

しかし、名のあるプレイヤーでも必殺ワンツーを止めるのは至難の技だ。

「都古くん高いボールに動きを合わせる!」

あっという間に都古ちゃんはゴール前だった。

「やらせん!」
「まったくいけない子だな!」

軋間と七夜が都古ちゃんに立ちはだかる。

「よしっ!」
「行け〜!」

都古ちゃんのところへ駆けていく蒼香ちゃん。

恐らくまたスカイラブハリケーンをやるつもりなのだ。

「……有彦は?」

確かウチのゴール前にいるはずなんだけど。

「タイ!」
「うおっ」

どういう原理なのか、有彦は琥珀チームゴール前にワープして来ていた。

ずごっ!

発射台となり都古ちゃんと蒼香ちゃんを撃ち出す。

「……あれ」

そしてあっという間に姿がなくなってしまった。

後ろを見ると、遥か遠くに有彦の姿が。

「しゅ、瞬間移動?」

確かにゲーム中でも次藤はどっからともなく現れるが。

「まあ……いいか」

深く考えたら負けだ。

「こぼれだまになったー!」
「げ」

バカな事を考えているうちにイチゴさんにシュートが防がれてしまったらしい。

「取るんだ!」
「させるかっ!」

ボールに両チームのメンバーが密集する。

「頂きますよっ」
「……あっ!」

ボールを取ったのはディフェンスの位置まで下がって来ていたシエル先輩だった。

ピエールはディフェンスも一級品なのだ。

「さあ反撃です!」

そしてピエールには一瞬で反撃を行える反則技があるわけで。

「止めろ! 止めるんだ!」
「無駄です! エッフェル攻撃に敵はいませんっ!」

先輩がボールを蹴りあげる。

「ナイスパスですマスターっ!」

ななこさんへボールが渡ってしまった。

「出たっ! シエルくんたちのエッフェル攻撃!」

さっきの都古ちゃんたちと同じようにとんでもない速度で進んでいく二人。

さすがにゴール前からゴール前とはいかなかったが、ハーフラインよりはゴールに近い位置へと進んでいた。

「その展開もいささか飽きたな!」

ワラキアが向かう。

「シンプルな作戦ほど崩しにくいんですよっ」

大きく横にかわすシエル先輩。

そのままパスを出す。

「頼みましたよセブンっ!」
「わっかりましたー!」

パスを受け取ったのはななこさんだった。

「行きます! キャノンシュートっ!」

猛ダッシュでペナルティエリア内へ切れ込み、シュートを放つ。

「そんなシュートでっ!」

弓塚のなぎ払うようなパンチング。

「ああっ?」

ボールはあっさり弾かれた。

「よし、こぼれ玉を……!」
「取らせないわっ!」

白レンがこぼれ玉に向かっていく。

「前半最後の点を貰うのはわたしたちよっ!」

宙を舞い、華麗にボールをトラップ。

「おお……」

って見とれてる場合じゃなくて。

「ボールを取るんだ!」
「甘いわねっ」

横にボールを蹴る白レン。

「任せてください!」

低いボールへシエル先輩が動きを合わせた。

「セブンっ!」
「は、はいマスターっ!」
「……っ」

その掛け声は、さっき点を取られてしまったスライダーキャノンだ。

ばしいいっ!

二人の足が同時にボールを蹴り出す。

「シエル先輩のシュート……」

警戒するような表情の弓塚。

「止める!」

右腕を大きく伸ばして飛ぶ弓塚。

「……こんのおっ!」

ボールに向けて腕を振り回す。

パンチングというよりは、叩きつける感じに近かった。

どごっ!

地面に叩きつけられ高く跳ね上がるボール。

「おっしゃ! 任せとけっ!」

有彦が素早く反応し、ボールへ飛ぶ。

「そら、反撃だ!」

そして大きくボールをクリアした。

「いいぞ弓塚っ!」

さすがSGGK、あの先輩たちの合体シュートを防ぐとは。

「ちいっ……やりますねっ!」

先輩が渋い顔をしていた。

「さあ反撃です!」

有彦からのボールを受け取ったのは秋葉だった。

「秋葉! 無理はするな!」
「わかっていますよっ」

すぐ傍にいたネコアルクにパスを出す。

「にゅふふふふ。困った時のネコアルク。さあ、アチキを崇めよ、アチキを称えよー!」
「いいからさっさと行きなさい!」
「……にょわ。怖い妹だニャー」
「その呼び方は止めなさいっ!」

秋葉に怒鳴られ渋々といった感じでドリブルを始めるネコアルク。

「おっとやらせないぜ」

七夜がネコアルクに立ちはだかった。

「にょわ?」
「さっきは不覚を取ったが……これならどうだっ!」

スライディングを放つ七夜。

「そんなスライディングがアチキに通用するかー!」

ジャンプしてそれをかわすネコアルク。

「もらった!」

それを見ると同時に、ネコアルクへ向けてなんだかよくわからない蹴りを放つ七夜。

「う、うにょー!」

ボールもろともネコアルクは吹っ飛んでいった。

「くそっ……」

やはり向こうも相当必死なようだ。

ここで点を取るのと取られるのとじゃ、後半への気概がまるで違うからな。

「ボールを追うんだ!」
「やらせません!」

ボールは大きく転がって、センターサークル付近へ。

「……」
 

そこには琥珀さんがキックオフの時のまま、突っ立っていた。
 

続く



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