「久しぶりの地上だ。長かった……オレの出番が来るまでが。そして……」
「お、おまえはっ!」
「……」

そいつは俺の事なんかまるで興味ないように、横を通り過ぎていく。

「……ちょ」

秋葉は信じられないものを見たような顔をしていた。

「会いたかったぜ秋葉ぁぁっ!」

そいつが秋葉に向かって飛びかかる。

「来ないで下さいこの馬鹿シキがあっ!」
 

渾身の右ストレートが遠野シキに炸裂するのであった。
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その27











「ぐわああああっ!」

物凄い勢いで吹っ飛んでいくシキ。

「このまま一気に……!」
「や、止めてくださいよ秋葉さま〜。あれでも一応ウチのメンバーなんですから」

さらに追い討ちをかけようとする秋葉を琥珀さんが止めに入った。

「何故邪魔をするんですっ。琥珀、何故シキを表に出したんですかっ!」
「仕方ないでしょう。欠員が出てしまったんだからっ」
「しかもミスブルーのせいでねー」
「ア、アルクェイド」

先生に向かってこんな軽口を言えるのはこいつくらいだろう。

「わーってるわよ。だから反省してるってば」

苦笑いする先生。

「ふふふ……ははははは!」

シキが笑いながら起き上がった。

「さすがは秋葉だ。実の兄を殴り飛ばすとはな。いい。実にいい」
「私の兄さんはこっちの兄さんだけです!」

秋葉が俺の腕を掴んだ。

「……なんだ。まだいたのかお前」

ぎろりと俺を睨みつけるシキ。

「いちゃ悪いか」
「大いに悪いな。おまえのせいで秋葉が間違った道に走ったらどうしてくれるんだ」
「……」

向こうの方が悪影響しか与えてない気がするんだけど。

「まあいい。これは試合だ。琥珀チームとして出場する以上、秋葉であっても遠慮はしない」
「どうぞご自由に。こちらも手加減するつもりはありませんので」
「いい返事だ」

シキはにやりと笑った。

「ほんとになんでこんなの出したんですかっ」

秋葉が小声で琥珀さんに尋ねた。

「……残りの控えが久我峰さんだったもので……」
「最悪の選択肢だったわけね……」

確かにあのオヤジよりはシキのほうがマシだよなあ。

「さあ行くぞ! 試合再開だ!」
「ちょ、仕切らないで下さいよシキさま〜」
「大丈夫かな……」

色々と不安を抱えつつ、試合再開。

「ていっ」

スローインをやったのはシエル先輩だった。

「よっと」

ななこさんがそれをトラップする。

「来い! オレに持ってこい!」

シキがそんな事を叫んだ。

「え」

戸惑うような表情をするななこさん。

なんせシキはディフェンスの位置にいるのだ。

「あんなの気にしないでいいですっ! 攻めちゃって下さい」
「あ、はい……」

しかし先生とシキを使わないとなると、琥珀さんチームの人数は9人になってしまう。

「今がチャンスなのか……」

琥珀さんが遠慮しているうちに先取点を。

「攻めるんだみんな!」
「了解っ」

蒼香ちゃんがななこさんへ向かっていく。

「む……またあの怪しげな合体技ですかっ?」
「嬢ちゃん」
「お姉ちゃん!」

都古ちゃんが蒼香ちゃんと並ぶように走る。

「う……」

身構えるななこさん。

ずざぁっ!

まず蒼香ちゃんが地面をすべった。

「そ、そこから乗っかるんですよねっ。そんな技……」
「……」
「あ、あれ?」

蒼香ちゃんは普通にななこさんの横を通り過ぎて行ってしまった。

「もらったー!」

そこへ都古ちゃんのタックルが襲う。

「そ、そんなっ!」
「ボールゲットー!」

見事ななこさんからボールを奪っていた。

「……時間差タックルだな」

要するに順番にタックルを仕掛けただけなんだけど。

スカイラブのほうを警戒しすぎたから成功したんだろう。

「都古ちゃん、よくやった!」
「え、えへへ」
「さあ攻めるよ嬢ちゃん!」
「うんっ」

必殺のジェミニアタックではなく、小さなワンツーで切れ込んでいく二人。

「厄介な事を……」

シオンはどちらへ向かうか考えあぐねているようだった。

「こちらです!」

都古ちゃんのほうへと向かっていく。

「無駄だよっ!」

そこでワンツーを止め、蒼香ちゃんとはまるで違う方向へパスを出す都古ちゃん。

「……」

レンが走りこんでいた。

ライン際をてこてこドリブルしていく。

「させん!」

軋間が立ちはだかった。

「レン!」
「……っ!」

レンは構わずにドリブルを続ける。

「駄目だっ!」

あいつを抜けたやつは今まで誰もいないのに。

ずばっ!

「レンくんかわした!」
「なっ……」

なんとレンはあの軋間をかわしていた。

「す、すごいぞ!」
「……これはヤバげですね……」

そのままペナルティエリア内へと切れ込んで行く。

「させません!」

翡翠が向かっていった。

「……」

再びドリブル。

ずばっ!

「翡翠くんボールを取ったー!」
「あ、あれ……?」

ディフェンス能力で勝るはずの軋間を抜いたのに、翡翠にはあっさりボールを取られてしまった。

「翡翠! 貰うぜっ!」
「あっ」

翡翠のボールを奪い去る謎の影。

「し、シキさんっ!」
「オレの時代だ!」

味方の翡翠のボールをシキが奪っていた。

「なんつー自分勝手な……」
「ああもうっ!」

琥珀さんも辟易しているようだった。

「翡翠ちゃんから奪ったならちゃんと決めて下さいよ!」
「当然だ! オレを誰だと思っている!」

いや、シキだから心配なんだと思うけどなあ。

「止めます!」

秋葉が向かっていった。

「秋葉か……兄の邪魔をするなんて、まったくいけない子だな!」

シキの目が赤く血走っているように見えた。

「……っ」

あの目はまずい。

「秋葉! 駄目だ!」
「っ!」
「吹っ飛べ秋葉っ!」

シキは秋葉にシュートをぶつけるつもりだ。

「ちょ……」

秋葉の顔面向けて弾丸のようなシュートが飛んでいく。

ガキイッ!

「え?」

ギギ……ギギギギギ。

漏電の音。

「あ、あなた……」
「問題……アリマセン。……防衛、成功」

再びメカヒスイがシュートを防いでいた。

「な、なんだ貴様!」
「アキハサマ ニ 危害ヲ 加エテハ ナリマセン」

どうやらメカヒスイは秋葉を守るようプログラムされているようだ。

「生意気な! 吹っ飛ばしてやる!」

こぼれたボールに再び向かうシキ。

「や、やめろ!」

そんな立て続けにシュートを食らったらいくらメカヒスイでも……

バギャアアッ!

「メカヒスイくん吹っ飛んだー!」

堪える事が出来ずに、メカヒスイは吹っ飛んでいた。

てん、てんてん……

ボールの威力は相殺され、秋葉の足元に力なく転がっていった。

「……」

ぎろりとシキを睨み付ける秋葉。

「……この借りは必ず返します!」
 

その髪の色が、紅く染まっていった。
 

続く



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