ただのツインシュートでは、威力はそこまで高くない。

ボールは真逆の方向へ飛んでいってしまった。

「駄目か……!」
「まだまだです!」
「秋葉!」

飛んでいったボールに真っ先に追いついたのは秋葉だった。

「見ていて下さい……メカヒスイの敵、必ず討ってみせます!」

鋭い目で琥珀チームゴールを睨み付ける。

秋葉の髪の毛が、みるみるうちに赤く染まっていった。
 


キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その35







「さあ覚悟しなさいシキっ!」

有無を言わさずシキの方向へ走っていく秋葉。

「……メカヒスイにトドメさしたの先生なんだけどなあ」

この際余計な事は言うまい。

「来たか秋葉! この兄の愛を受けるがいい!」

シキは嬉々として秋葉へ向かっていく。

「だ、だまらっしゃい!」

大きく足を振り上げる秋葉。

「ファイヤー!」

檻髪の発動によって、ファイヤーショットはまさに燃える弾と化していた。

「……!」

ゴール目指して一直線に飛んでいくボール。

「てりゃ!」

すかっ。

「に、逃げた?」

ファイヤーショットはギリギリのところでシキに当たらなかった。

「シキ! 正々堂々勝負なさい!」
「冗談。オマエのシュートをまともに受けたらどうにかなっちまう」

それは生命の危険とかから判断すると正しい選択なんだろうが、ディフェンスとしては間違った行動だと思う。

「まったくもう、しょうがないわねー」

苦笑いしながら先生がボールへ向かっていった。

「これで……どよ!」

ジャンプして、ボレーキックの要領でボールを蹴り飛ばす。

ずごっ!

「や〜ら〜れ〜た〜!」

だがファイヤーショットのほうが威力が高く、先生は大きく吹っ飛ばされていった。

「……守って見せます!」

次に向かっていったのは、なんと翡翠だった。

「待て!」
「……え?」

軋間が叫んで翡翠を止める。

「お前が行く必要はない。赤朱の力ならば……こちらの方が上だ!」

地面を踏みつけると紅い炎が軋間を包み込んだ。

「しかもペナルティエリア外からのシュートなど、言語道断!」

加速のついたパンチング。

ばきいっ!

「こぼれだまになったー!」
「……生意気なっ!」

やはり軋間からゴールを奪うには、もっと決定的なチャンスを作らなきゃ駄目だ。

レンのサイドワインダー倒せたまではよかったのだが。

イチゴさんの事を忘れていたのがいけなかった。

向こうのチームにはキーパーが二人いると考えてしまっていいだろう。

「……無茶苦茶厄介じゃないか」

やはりロングシュートではなく、ペナルティエリア内から一気に決めないと駄目か。

「せいっ!」
「あっ!」

シオンが都古ちゃんの足にボールを当てて、ライン外へ押し出していた。

「ちょ! ずるい!」
「これも作戦です」
「……向こうのゴールキックか」

これで攻撃の手が切られてしまう。

「次が勝負だな……」

延長戦はかなり短い。

出来て二度の攻撃が限度だろう。

「弓塚! みんな! 絶対守ってくれよ!」

とにかくここで点を取られたら不利になるのは目に見えている。

攻めも大事だが、守りきらなくては意味が無いのだ。

「わかってる!」
「任せておきたまえ」

気合を入れるディフェンス勢。

「行けっ!」

軋間が大きくボールを蹴り上げた。

「来ましたね!」

シエル先輩がボールをトラップする。

「エッフェル攻撃に注意するんだ!」
「了解っ!」

有彦がまっさきにななこさんのマークについた。

「あ、あうー」

長身の有彦に阻まれては、ななこさんへのパスはまず無理だろう。

「そう何度もワンパターンな攻めをやると思わないで下さいね!」

ドリブルで切れ込んでくる先輩。

普通に個人技もレベルが高いので、かなり厄介な存在である。

「そぉら!」

ワルクェイドのタックル。

「誰かさんと同じで野蛮ですねえ」

華麗にそれを避ける。

「ちょっとシエル。誰かって誰よ?」

アルクェイドが先輩に並ぶように走っていた。

「おや、自覚はしていたんですね」
「むー!」

などと口喧嘩をしながら華麗なワンツーを繰り広げる。

「何気に息が合ってるんだよな……」

ライバルコンビとでも言おうか。

そういえば日向と翼もうまいコンビプレイをやってた気がする。

「厄介な連中が……」
「フン。大した事はないな」

ネロのおっさんとワラキアの悪人コンビがこれを迎え撃ちに行った。

「む……せいっ!」

アルクェイドへ向けてパスを出す先輩。

「カット!」

ワラキアがそれを弾く。

「甘いわよ!」

しかしそれをアルクェイドが止め、トラップする。

「それは貴様だ! 真祖の姫よ!」

その着地ぎわをネロが襲いかかった。

「うわっ?」

ボールはこぼれ玉に。

「貴方もまだまだですね! 勘が鈍ったんじゃありませんか!」
「ぬっ……!」

シエル先輩がこぼれたボールを素早く拾っていた。

「ナイスシエル!」
「当然です!」

そのままドリブルで突き進む先輩。

「くそっ、しょうがねえな!」

有彦がななこさんのマークを外れ、先輩へと向かっていった。

「来ましたね乾くん!」

待ってましたとばかりにパスを出すシエル先輩。

「ちっ!」

ボールへ向かって飛ぶ有彦。

だがボールには届かない。

「待ってましたー!」

この軌道は、ペナルティエリア内へのななこさんへのパスだ。

「やらせないよっ!」

身構える弓塚。

「ええーいっ!」

すかっ。

「ス、スルーだって?」

ななこさんの後ろには、琥珀さんが隠れていた。

「いっけー! ドライブオーバーヘッド!」
「弓塚っ!」

バランスを崩している状態だったら、この技でも止められるか危うい。

「……え?」

落下する琥珀さんの表情に変化が起きた。

「そうくると思ってた!」

なんと弓塚はバランスを崩してないどころか、完璧なまでにシュートに反応していた。

旋風一閃、ボールをキャッチする。

「や、やりますね……さすがは弓塚さん」
「もう迷わない! 遠野くんチームのGKとして、頑張るんだからっ!」

どうやら弓塚は完全に吹っ切れたようだ。

「それ! 反撃いっくよー!」

ボールを大きく蹴り上げる弓塚。

「いよーし!」

ネコアルクがそれを受け取った。

「予測済みです!」

そこをいきなりシオンがタックルで襲いかかってくる。

「にょわ!」

かろうじてかわすネコアルク。

「貴方を確保です」
「悪いが三人がかりだ。取らせてもらう」
「攻めを終わらせるわけにはいかないんでなぁ」

だがそこをさらに翡翠、シキ、イチゴさんの三人が取り囲んだ。

「……ほほう。これはいわゆる見せ場ってヤツか?」

ネコアルクの目がきらりと光る。

「た、頼むぞネコアルク!」

ここで奪われたら貴重な攻撃のチャンスを失ってしまう。

「まっかせとけー!」
 

ネコアルクは叫びながら三人へ向かって行った。
 

続く



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