琥珀さんがPKを蹴る選手となった。
そして。
「決まった! ゴール! 琥珀くんのペナルティキックが志貴チームのゴールに突き刺さったぁ〜!」
三分の一の確立に見事勝利した琥珀さんが、チームに貴重な勝ち越し点をもたらすのであった。
つまり延長戦の後半は、なんとしてでも俺たちが点を入れなくてはいけないのである。
志貴チーム 6
琥珀チーム 7
キャプテン琥珀
〜スーパーストライカー〜
その38
「どうするかな……」
延長戦の後半戦は普通の後半と違ってすぐに始まってしまう。
作戦を立てる時間がほとんどないのだ。
「どうするも何も……点を取るしかないでしょう?」
「それはわかってるけど」
向こうだってさらにディフェンスに力を入れてくるはずだ。
「何を言っても始まらんさ」
蒼香ちゃんがそんな事を言った。
「今のところ黒猫さんのサイドワインダーが一番強いみたいだね」
これは都古ちゃん。
「だなぁ」
「私のファイヤーショットもお忘れなく」
「うん……」
純粋な威力だけなら秋葉のファイヤーショットのほうが上回るんだろうが。
「どっちも強いバージョンを打つには発動条件あるからなぁ」
サイドワインダーはライン際限定、ファイヤーショットは秋葉の檻髪が発動してないと駄目。
「もっと決定的な何か……」
それこそ先生のマッハシュートや琥珀さんのサイクロンみたいな。
「羽居。あなた何か必殺シュート持ってないの?」
秋葉が羽居ちゃんに尋ねた。
「ないよ〜」
「……そう」
予想通りではあったが残念である。
「そういえばさ、さっきシキに何て言ったの?」
羽居ちゃんに囁かれてから、シキの動きは明らかに鈍っていた。
「あ、うん。いくらバチスタくんでも反則は駄目だよって」
「バチスタだってわかってたの?」
「なんとなくだけどー。バチスタくんって反則たくさんしてた気がしたから」
「……確かに」
ステータスは低いのにも関わらず、反則でカルロスやら日向を止めてくれる事が多かった。
「ちなみに……羽居ちゃんがリマとかマリーニだったとかないよね?」
同じタイプだから正体を見切ったとか。
「それも多分大丈夫」
「そ、そうか」
「……でも、そろそろちゃんとやらないとまずいよね」
「い、今までやってなかったの?」
「そういうわけじゃないんだけど……秋葉ちゃんと一緒で」
要所でしか力を発揮出来ないキャラという事か。
「……期待してる」
向こうもこっちも大分戦略が見切られて来ている。
予想外の事をしなくては、ディフェンスの突破すら厳しいだろう。
「あとワラキアも正体不明か」
羽居ちゃん、ワラキアの二人が後半の鍵になりそうである。
「頼む。なんとしてでも点を取ってくれ」
「ディフェンスをやっているほうが性に合っているのだがな」
渋い顔をさらに渋くしているおっさん。
「攻めろというなら攻めてやるが。防御が薄くなるぞ?」
「まあ……なんとかするよ」
俺は大幅なポジションチェンジを始めた。
「やっと来ましたねー。遅かったで……?」
俺たちの配置を見て目をぱちくりしている琥珀さん。
それはそうだろう。二大悪人が揃って前面に出てきているのだ。
「……華がなくなってしまいました。悲しいです」
「言わないでくれ」
俺だってその面に感しては後悔してるんだから。
「ま、ディフェンスは任せてくれや」
「一点もやらないよー!」
ワラキアとおっさんのいた位置にはそれぞれ蒼香ちゃんと都古ちゃんが立っている。
攻撃のスカイラブ殺法は通用しなくなってきたが、ディフェンスならまだまだいけるはずだ。
「そんな奇をてらった配置で勝てるとでも……」
「ただそれだけじゃないさ」
それは自ずとわかる事である。
「じゃあ、頼むぞみんな」
「まかせとけー!」
10番に配置されたネコアルクがびしっと拳を天に向けた。
「んじゃ行くぞー! おりゃー!」
ネコアルクのキックオフ。
「……」
最初からライン際付近にいてもらったレンにボールが渡る。
「あ、ずるいっ!」
「これも戦略だ!」
能力を発揮出来る場所が特定されてしまうキャラは出来るだけ発動しやすい位置にいてもらう。
滝だって常にライン際付近に配置されていたからこそ、得意技がそれになったのだ。
「……ん?」
走っていくレンを見て、琥珀さんチームのポジションも変わっていることに気がついた。
まずディフェンスに下がっていた先生がMFに戻っている。
シエル先輩と翡翠が後ろへ下がって、代わりにシキが前面に。
シキの反則という可能性の低いものに頼るよりも、先輩らの高いディフェンス能力を優先したということか。
「くらえ!」
早速とばかりにシキがレンにタックルを仕掛けた。
「……」
ずばっ!
能力がバチスタだとわかった事で精神的余裕も出来たのか、あっさりとかわすレン。
「ちっ……」
この様子だと、シキに警戒する必要はもう無さそうだった。
「ライン際のカペロマンくんは確かに厄介ですけど……!」
「二人同時ならどうでしょうか!」
琥珀さんと翡翠が向かっていく。
「……」
翼と岬が相手ではいくらライン際のカペロマンでも厳しいだろう。
「レン! パスを出すんだ!」
「……」
俺の指示通り、レンはすぐさまパスを出した。
ボールは秋葉の元へ。
「そこよっ!」
「えっ?」
ボールを受け取った直後の秋葉を白レンが襲う。
「調子に……乗らないで!」
秋葉はかろうじてそれをかわした。
「もらいーっ!」
さらにアルクェイドのタックル。
「なっ……!」
ばしいっ!
「っ……!」
地面に倒れる秋葉。
ボールはこぼれ玉になった。
「あ、足が……」
なんとか起き上がったものの秋葉はぐらついていた。
どうやらアルクェイドとの激突で足を痛めてしまったようだ。
「秋葉ちゃんっ」
こぼれ玉を拾ったのは羽居ちゃんだった。
「羽居! 構わずに行きなさい!」
「う……うんっ」
秋葉のいる場所から遠ざかるようにドリブルで進む羽居ちゃん。
「えいっ!」
「残念〜!」
「あっ!」
ななこさんをかわし、ライン際へ突き進む。
「おおっと行かせないわよー?」
今度は先生が羽居ちゃんに向かっていった。
「くらえーっ!」
先生の鋭いタックル。
「……えいっ!」
二人の足がぶつかり合った。
ばしっ!
ボールは再びこぼれだまに。
「さすが……やりますねっ」
「ふふん。ただ能天気な娘ってわけじゃなさそうね……」
先生がにやにやした顔で羽居ちゃんを見ていた。
「そぉらっ!」
こぼれたボールをワルクェイドが拾い、ネロのおっさんへと回す。
「ドリブルか……」
なんとなくぎこちないおっさんのドリブル。
「や、やっぱりディフェンスに置いておくべきだったか……?」
「貰った!」
「うぬっ……!」
おっさんはシオンのタックルを受け、ボールを奪われてしまった。
「翡翠、頼みます!」
「えいっ!」
シオンから翡翠へパスが渡り、翡翠が大きくボールを蹴り上げる。
「だ、駄目だこのままじゃ……」
ゴール前にたどり着く前に全て防がれてしまう。
「俺たちが……負けるのか……」
「……」
気付くと秋葉が俺の傍に立っていた。
「秋葉……?」
「兄さん。サッカーは強い者が勝つんじゃありません」
「……!」
秋葉の髪が一気に赤く染まる。
「サッカーは……勝った者が強いんです!」
続く
2翡翠(岬) | 11シキ(バチスタ) | |||||
6琥珀(翼) | ||||||
k軋間(ゲルティス) | 5一子(若島津) | 4シオン(松山) | 10先生(コインブラ) | 9白レン(カルロス) | ||
8アルクェイド(日向) | ||||||
3シエル(ピエール) | 7 ななこ(ナポレオン) |
2蒼香(政夫) | 11ワラキア(?) | |||||
6ネロ(メオン) | ||||||
kさっちん(若林) | 5有彦(次藤) | 4羽居(?) | 10 猫アルク(ディアス) | 9秋葉(シュナイダー) | ||
8ワルクェイド(ザガロ) | ||||||
3都古(和夫) | 7レン(カペロマン) |