「都古ちゃん、この紙くれたのどんな人?」

聞いてもわからないだろうけど尋ねてみる。

「なんかメガネかけてた」
「……そっか」

あまり詳しく知るとまた怖そうなので、そこまでに留めておいた。

「とにかく、これで俺たちが決めれば」

1?1のイーブンとなる。

「次の選手は……おまえだっ!」
「いよっしゃー!」
 

意気揚々としたネコアルクがペナルティエリアへと向かうのであった。

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その47








「奴か……」

ネコアルクを見て軋間は渋い顔をしていた。

「正反対のタイプだからな」

シリアスモードしか出来ないやつとギャグしか出来ない奴と。

噛みあわないのは当然だろう。

「にゅふふふふ。アチキのあふれ出る天才パワーに恐れをなしているのか?」
「奴の心は読めん……」

そりゃ読めないだろうなあ。

「なーう! 貴方のハートにキャツラーヴ!」

理解出来る奴がいるとしたら、そいつは相当に変な奴だ。

「ふーん。なかなかいい事言うじゃないの」
「……アルクェイド」
「ん? なに?」
「何でもないよ」

類は友を呼ぶ……か。

「さてキシマなる男。アチキがシュートを撃てば当然のごとく決まる。それでは面白くにゃかろう」
「ぬ」

ネコアルクが軋間に対して何やら生意気な事をほざいていた。

「だから先にシュートを撃つ方向を教えておいてやろう。これにゃらいくらオマエでも防げるだろう?」
「ちょ、ばか! おまえ何言ってるんだ!」

勝負がかかってる大事な時だというのに。

「心配するな少年。この天才に不可能はにゃい!」
「……おまえだから余計に心配だってのに」

こいつはアルクェイドよりもさらに何をしでかすかわからないのだ。

「アチキを信じろ! アチキはいつだってピンチを救ってきただろう?」
「……それはそうだけど」

わざわざピンチを作る必要もないと思うのだが。

「というわけでど真ん中に蹴ってやろう。キシマ。おまえはただ突っ立っていればよいのだー」
「ぬう」

困惑の表情で身構える軋間。

「いっくぞー!」

ネコアルクがボール目掛けて砂埃をあげて走っていく。

「食らえ!」
「っ?」

そして何故か明らかにボールに届かない位置で足を振り上げた。

「巨大化キーック!」
「なっ!」

なんとネコアルクの足が巨大化してボールへ伸びていった。

どごっ!

肉球たっぷりの足で蹴り飛ばされるボール。

「うぬっ……!」

軋間の反応が一瞬遅れた。

ずばっ!

「いよーしっ!」

ネコアルクのシュートは宣言どおりど真ん中であった。

「真ん中に打ったはいいんだが……」

なんかずるい気がする。

「少年よ。これはさる名僧が長年の修行の末編み出した技なのだ。その名もロシア魔術殺法!」
「ロシア魔術殺法ですって!」

シエル先輩が叫ぶ。

「知っているんですか? シエル先輩」
「ええ。まさかこの目で……って」

思わず解説をしようとしていたが、はっと我にかえったような顔をする。

「そ、その手には乗りませんよ。ええ、わたしを雷電扱いしようったってそうはいきません」
「いや、自分で勝手に説明を……」
「遠野くん?」
「なんでもございません」

とにかくこれでイーブンになった。

「ぬかった……」

軋間が珍しく悔しそうな顔をしていた。

「オマエも手強かったぞ。足りないのはそう、ネコミミだけだった……」
「気持ち悪い事言わないでくれ」

一瞬想像しちまったじゃないか。

「むぅ……さすがは志貴さんチームです。一筋縄ではいきません」
「そりゃなあ」

俺だって未だにネコアルクの事は把握出来てないし。

こいつは一体何者なんだ。

「萌えとロマンを与えにやってきたスーパーヒロインなのだー」
「……人の心を読まないでくれ」

などとバカな会話をしている間にキーパー交代。

「次はちゃんと止めるんだから」

頬を叩いて気合を入れる弓塚。

「あんまり気張りすぎなくてもいいんだぞー」

弓塚の場合気合の入れすぎで失敗するパターンが多いからな。

「う、うん」
「薄幸生活が伊達じゃないって事を見せてやれ!」
「ツインテールのおねえちゃん頑張ってー!」
「ツインテール! ツインテール!」
「つ、ツインテールじゃないもん!」

応援なのかいぢめなのか。

とにかくみんなからの声を聞いたおかげで、少しは気持ちが安らいだようだった。

「行くよっ」

身構える弓塚。

かつかつかつかつ。

「ん」

ボールの前に歩いて来たのはシオンだった。

「決着をつけましょうか、さつき」
「……シオン」
「だ、ダメですシオンさん!」

それを見た琥珀さんが慌てて止めに入る。

「何故ですか琥珀! さつきと決着をつけるのはわたしであるべきです!」
「残念ですがシオンさんでは無理なんです!」
「何故そう言い切れるのですか!」
「それは……」

気まずそうに視線を逸らす琥珀さん。

「言って下さい。でなければ納得出来ません」
「……」

琥珀さんは目線を逸らしたまま、申し訳なさそうに言った。

「若島津くんにすら止められた松山くんが……若林くんを敗れるはずがないんです」
「……!」

それを聞いた瞬間シオンががくりと膝を突いた。

「確かに……それは……」

シオンはなまじ計算能力が高いせいでそれがどれだけ無理な事か悟ってしまったんだろう。

「せめてマンガが違えばよかったんですが……」
「……うろたえるな、小僧ども」

もしシオンがそれになっちゃうとアルクェイドすら勝てなさそうな気がするんだけど。

「まあ今回はサッカーなんだからさ」
「わかりました。わたしとて子供ではありません。大人しく譲るとしましょう」

そう言ってシオンは下がって言った。

「次回は聖闘士を……」
「蟹と魚が誰かで揉めそうな気がする」

ああでも蟹は一撃必殺だからむしろ俺なんだろうか。

イヤだ。イヤすぎる。

「……ふう。ではでは本当の三番手の登場です」

苦笑いしつつ琥珀さんが選手を呼んできた。

バカな事考えてないで試合に集中しよう。

「中堅か……」

ここには手堅い選手を持ってきてるはずだ。

「カモン翡翠ちゃん!」
「了解です」
「鉄壁の鉄壁だな……」

翡翠は地味ではあるが、細かく琥珀さんチームのフォローをしていた。

気付くとこんなところに選手がいた、というのも大抵翡翠が絡んでのものである。

「しかも岬は意外と熱いタイプ……」

普段は温和であるが、勝負どころでは熱い心で突っ走るタイプである。

「必ず勝ちます」

翡翠の目も燃えていた。

「……止めるんだから」
「貴方を突破です」

睨みあう翡翠と弓塚。

「……む」

その空気には先ほどまでの能天気なものがまるでなかった。

ざわめいていたギャラリーも急に静かになってしまう。

「行きます!」
「来いっ!」
 

そして静寂の中、翡翠のシュートが放たれた。
 

続く



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