みんなが元気よく応えてくれた。
「……フン」
「芸がないな……」
「いや、だからもうちょっと仲良くしようってば」
もしかして、こいつら入れたの失敗だったか?
しかし今更言っても後の祭りだ。
「とにかく……行くぞ! みんな!」
いよいよ決戦の始まりである。
キャプテン琥珀
〜スーパーストライカー〜
その5
ワアアアアアアア!
「うお」
外に出ると凄い観客の数だった。
「さあついに来ましたフィナーレを飾る決勝戦! 両チームベンチで最後のミーティングに入っています」
チャーリの実況が聞こえる。
「うわ、すごいねえ」
「こりゃやりがいがあるってもんだ」
この状況でも動じないチームメイトはとても頼もしかった。
「決勝のカードは今回優勝候補ナンバーワン琥珀ユースと激戦グループに入りながらもチームワークで勝ち抜いてきた志貴ユースとの間で行われます」
「……ブラジル対全日本かよ」
チャーリの実況がまるっきり2の最終戦のそれであった。
まあ雰囲気的には盛り上がるけど。
「果たして勝利の女神はどちらにほほえむのか? 運命のキックオフまであと五分!」
どうやら試合開始までにはまだ少し時間があるようだ。
「ようやく向こうのメンバーがわかるな」
電光掲示板にそれぞれの配置が表示される。
「……うわ」
オレはそのメンバー構成に絶句した。
まずは先頭。つまりフォワードだ。
11 琥珀さん、9 アルクェイド、7 翡翠。
琥珀さんの性格上、前面に出る事はないと思っていたのでこれは意外な配置である。
「中盤は……なんだありゃ?」
6 シエル 10 レン 8 第七聖典ななこ
「レンはこっちのチームにいたよな?」
振り返って姿を確認する。
「……」
うん、間違いない。レンはここにいる。
「ひょっとしてあれじゃニャいのか? パチモンってやつ」
「なるほど」
こいつみたいのが向こうにもいると。
「ディフェンダーは……」
2 軋間紅摩 4 シオン 3 乾一子 5 七夜志貴
「……軋間って誰だっけ」
なんかどっかで聞いた事ある気がするんだけど」
「……」
レン曰く、なんか強くて怖い人との事らしい。
「強敵ってことか」
そんなやつをディフェンスに配置している辺り、琥珀さんの余裕というかなんというかが伺える。
「……で、もう一人が七夜志貴だあ?」
一体何の冗談なんだろう。
「名前から察するに、兄さんの偽者って事でしょう? それなら大した事ありませんよ」
秋葉がふふんと鼻で笑っていた。
「悪かったな」
こいつもなんか嫌な予感がする。
「そしてキーパーが……瀬尾晶?」
「な……瀬尾ですって?」
アキラちゃんというのは秋葉の後輩のごく普通の女の子だ。
そのごく普通の女の子がゴールキーパーだなんて。
「絶対に何かあるな、こりゃ……」
なんていうか前から後ろまで油断出来ないようなやつらばかりである。
まとまりのないこっちのチームで勝てるんだろうか。
「お兄ちゃん。作戦はどうするのっ?」
都古ちゃんが尋ねてくる。
「……あー、えと、どうしたもんだろう」
メンバーがわかったはいいけど、やっぱり対策が立てられない気がしてきた。
「まず中盤の指揮官っぽいシエル先輩をマークして、アルクェイド、翡翠、琥珀さんたちへのパスを封じるんだ」
そのへんの連中にボールを持たれたらやばい事になるのは間違いないからな。
「ゴールキーパーも多分ロングシュートは効かないだろう。ゴール前に切れ込んで直接シュートするしかないと思う」
例えアキラちゃんと言えども、キャプ翼補正がかかっているだろうから油断は禁物なのである。
「……そんなところかな。とにかく、自分たちのペースでサッカーをすることだ」
シュートを撃てなくてもいいからボールを確保している事が大事なのだ。
「安心しろ。あのような惰弱なゴールなど我らの咆哮で突き破ってくれるわ」
くっくっくと笑うネロのおっさん。
「頼りにしてるよ」
ちなみにおっさん、ディフェンスなんだけどな。
「じゃあ俺たちも配置につこう」
「おうっ!」
みんなでそれぞれの場所へと散らばっていく。
俺はてっきり琥珀さんが10番だろうと思っていたので10番をつけてしまっていた。
フィールドの中央に立つ。
「こんにちわ志貴。今日は楽しみましょうね」
「ん」
謎の少女が俺に話しかけてきた。
「えと……」
もしかしてこの子がレンの偽者なのかな?
雰囲気とか結構似てるし。
髪の毛が白い事を除いてはまるっきりレンそのものであった。
普通にしゃべってるけど。
「どうしたの? わたしの姿が気になる?」
「あー、その、なんていうか」
ウチのアルクェイドの偽者とはえらい違いである。
出来るんなら交換して欲しいくらいだ。
「体操着はブルマから出しておいたほうがいい?」
「そりゃもちろん……ってそうじゃなくて」
「マニアックなのね」
くすくすと笑う白いレン。
「わたしがここにいる以上、そっちのレンも反則技は使えないわ。あくまでキャプ翼の世界として勝負よ」
「ああ、それはわかってる」
キャプ翼内の常識でのみ戦うつもりだ。
まあ、あの世界の常識ってのがとんでもないんだけどさ。
「さあ掛け声とともに選手がフィールドに散りました! いよいよキックオフです!」
「じゃ、お互い健闘を」
「うん」
審判が笛をくわえ、白レンがボールを足元へと転がす。
「……」
「……」
緊張の一瞬。
「さあいよいよゲームもクライマックス。目が離せなくなってきました」
「いや、チャーリー喋らせなくていいから……」
ピイイイー!
「しまっ……」
チャーリーのセリフに気を取られているうちにボールを蹴り出されてしまった。
「アルクェイドくんパスキャッチ!」
しかもそのボールはよりにもよってアルクェイドのところに。
「ふふふふふふ」
怪しく笑うアルクェイド。
「食らえ志貴チーム! これがわたしのネオアルクショット〜〜〜〜〜!!」
「ちょ……おま……っ!」
ガゴッ!
なんとアルクェイドはセンターサークル付近からいきなり必殺シュートを撃ってきやがった。
物凄いスピードでボールが俺の横を通り過ぎて行く。
「だ、誰か止めてくれ!」
「え……え、ちょ」
ボールの進行方向に弓塚が立っていた。
「弓塚くん吹っ飛んだー!」
チャーリーの実況と共に宙を舞う弓塚。
「……ゆ、許してくれ」
キャプ翼補正かかってるから多分死なないだろう。
「ふん、下らん技だ……」
次に立ちはだかったのはネロのおっさん。
「おおっ」
このおっさんならきっとあのシュートもなんとかしてくれるはずだっ!
「はあっ!」
おっさんは混沌で包み込んだ右腕を伸ばし、ボールをなぎ払った。
ボールはコート外へと転がっていく。
「フン……容易い事だ」
くっくっくと笑うおっさん。
「おおっと反則だー!」
チャーリーが叫んだ。
「何だと?」
「……あのなぁ」
俺はこのチームで勝つ事が、限りなく辛い事を知ってしまった。
こんな反則ゲーム版じゃ存在しないんだぞ?
「キーパー以外は手使っちゃ駄目だっつーの!」
どうやらオレはポジションは配置からやり直さなくてはいけないらしい。
続く
2軋間 | 11琥珀 | |||
6シエル | ||||
kアキラ | 5七夜 | 4シオン | 10レン | 9アルクェイド |
8ななこ | ||||
3一子 | 7 翡翠 |