くそ、先取点は琥珀さんチームなのかっ?

ガッ!

「おおっとこぼれだまになったー!」
「え?」

ところがゴールに入るかと思われたボールは謎の物体によって弾かれていた。

なんだ? 何があったんだ?

「にゅふふふふふ……ヒーローは遅れてやってくるもんだニャ」

ボールを弾いた物体がむくりと置きあがってそんな事を言った。
 

「お、おまえは……ネコアルク!」
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その7







「少年よ! ボールを抱け! カウンターを仕掛けるぞっ」
「え……お、おうっ」

慌ててボールを追いかけていくオレ。

「おかしい、あいつが役に立っている……」

役に立つと思って入れた奴らが役立たずで、期待してなかったやつが大躍進。

さすがは夢の中だ。

何が起こるかさっぱりわからない。

「都古くんボールを取った!」
「お」

幸いこぼれ玉を拾ったのは都古ちゃんだった。

「よーし、いっくぞー!」

都古ちゃんは普段とほとんど変わらない速度でドリブルをしていく。

「おおっと通さないわよちびっ子!」

センターラインをやや越えた辺りでアルクェイドが都古ちゃんに立ちはだかった。

「む……!」

一旦足を止める都古ちゃん。

「抜くっ!」

都古ちゃんはそのままアルクェイドに突進していった。

「やらせないわよ! 食らえ! アルクタックル!」

ものすごい勢いでスライディングを仕掛けるアルクェイド。

「とうっ!」

都古ちゃんはボールをカカトで蹴り上げ、さらに自分もジャンプしてアルクェイドのタックルをかわした。

「し、しまった!」
「……い、今の技はヒールリフト」

ゲームでは翼の得意とするドリブル技だ。

けどさっき翼の技を琥珀さんも使ってたよな?

「どうなってるんだ……?」

味方が強い技を持ってるってのは嬉しいけど。

「都古ちゃん!」

ようやく都古ちゃんに追いつく事が出来た。

「お兄ちゃん。このままゴールまで突っ走るよ!」
「ああ、うん、頼む」

いよいよここから先は敵エリアである。

癖の強そうなディフェンダーが一杯だ。

「やれやれ。真祖もだらしないですね」
「仕方ないだろう? アイツは攻撃専門だからな」

シオンと七夜の俺が向かってきた。

「ここは一旦横にパスを……」
「とつげきー!」
「……って」

都古ちゃんはドリブルの速度を緩めず突っ込んでいった。

「真祖には通用したかもしれませんが、その程度のドリブルで……」

しゅばっ!

都古ちゃんはシオンの横をそのまま通り過ぎていく。

「……」

あのシオンが、なんてらしくない。

「……ふ」

いや、違う。

自分で動く必要がないと判断したんだ。

「甘いな都古」
「お、お兄ちゃ……?」

俺と同じ顔をした七夜の出現に動揺した都古ちゃんは。

「よっと」
「あっ!」

あっさりボールを奪われてしまった。

「くそっ……」

俺とあいつの見た目の違いはメガネがあるかないかくらいだからな。

ちょっとあっちのほうが目つき悪い気がするけど。

「さあ、行くぞ」

七夜は妙にゆっくりとした速度でドリブルを始めた。

そして俺に目線を向ける。

「……かかって来いってか」

思わずかちんときてしまった。

同じ俺なんだ。

ボールが取れないはずがない!

「行くぞ七夜!」
「来いよ、偽善者」

七夜に向けてスライディングを仕掛ける。

「……ふん」

向かってきているはずの七夜の姿が急に薄くなり。

「!」

完全に見えなくなった。

「七夜くんの消えるフェイント!」
「……ネイかっ!」

気付いた時にはもう遅い。

「残念だったな」

七夜は遥か先まで進んでしまっていた。

「く、くそっ!」

慌てて立ち上がる俺。

都古ちゃんをそのまま進ませたシオンも七夜と一緒にオーバーラップしている。

「みんな止めてくれ! 止めればディフェンスはがら空きだぞ!」

けどこっちのディフェンス勢も頼りないんだよなあ。

「い、行くよ遠野くんのニセモノっ!」
「偽者とは心外だな。あっちのほうが出来そこないなのに」

しゅぱっ!

七夜は消えるフェイントを駆使してどんどん進んでいく。

「うにょー! 姿が見えないぞー!」

さっき意外な活躍をしたネコアルクまで抜かれてしまった。

「ま、まずい!」

七夜とゴールとの間に、ネロのおっさんとワラキアしかいなくなっている。

下手すりゃそのままシュートでも決まっちまうぞ?

「ここは確実に決めさせてもらうぞ……」

七夜はパスを出した。

「貴方をダメージです」
「ひ、翡翠っ?」

翡翠がペナルティエリア内に構えていた。

「……行きます!」

飛んでくるボールに合わせて小さくジャンプする翡翠。

まずい。

そのままシュートするつもりだ。

「貴方を……」
「カット!」
「!」

突如空中に現れたワラキアが、ボールを止めた。

「ルールは理解した……制限ありというのは退屈だがね」

そんな事を言いながら着地するワラキア。

「レン……!」

どうやらレンがルールを教えるのが終わったようだ。

これで互角、いや、それ以上の勝負が出来るっ!

「パスだワラキア! こっちにくれ!」

キャプ翼ゲーにオフサイドという概念はない。

ディフェンスが誰もいないところにパスを出したって反則にはならないのだ。

「宜しい。受け取るがいい」

ばしっと長い足でボールを蹴るワラキア。

ひょーん。

「やらせませんっ!」

シエル先輩がボールへ向かって飛んだ。

「だがとどかない!」

チャーリーの言葉通り先輩はボールをパスカットする事が出来なかった。

「……よしっ」

他にボールを邪魔するものはなく、俺はワラキアのパスを受け取る事が出来た。

「行くぞっ!」

ディフェンスはほとんど残っていない。

「みんなペナルティエリアへ走れ!」

そこに俺がパスを出してシュートだ。

「任せてくださいっ!」

秋葉が凄いスピードで中央へと切れ込んでいった。

「ふふふ、瀬尾……私のシュートを受けられるかしらね?」

大丈夫だろうか。秋葉にパス出して。

「い、いや、これも勝負。変な遠慮は……」
「……」
「……っと!」

俺の目の前にごつい男が立っていた。

確かこいつは軋間ナントカ。

「ええと……」

良く知らない相手なので対策がし辛い。

「……」

右へ行こうとすると右へ、左へ行こうとすると左へと動くそいつ。

「くっ……」
「何をしているんですか兄さん! ディフェンスが戻ってきてしまいますよ!」

そうだ。こんなやつに構っている場合じゃない。

「抜いてやる!」

俺はドリブルで軋間に向かっていった。

「……」

軋間もこっちへ走ってきた。

だが速度はそんなに速くない。

タックルをしてくる気配はなかった。

これなら簡単に抜けそうだ。

さっと横に飛んで軋間を避け、そのまま駆け抜け……

「ヌン!」
「!」
 

次の瞬間、俺の体は宙を舞っていた。
 

続く



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