軋間もこっちへ走ってきた。

だが速度はそんなに速くない。

タックルをしてくる気配はなかった。

これなら簡単に抜けそうだ。

さっと横に飛んで軋間を避け、そのまま駆け抜け……

「ヌン!」
「!」
 

次の瞬間、俺は宙を舞っていた。
 
 

キャプテン琥珀 
〜スーパーストライカー〜
その8












「……ぐっ!」

地面に激突するときになんとか受身を取れた。

反則の笛は鳴っていない。

「体ごとぶつかってきたのか……?」

何が起こったのかさっぱりわからなかった。

そしてこの程度の事はキャプ翼ゲーでは反則にならないのだ。

「油断したっ!」

軋間はどうやらディフェンスキャラとして一級品らしい。

近寄られる前にパスしておくべきだったのだ。

「ボールは……」

左方向へ飛んでいくボール。

「まったく兄さんは……!」

秋葉がそれを追っていった。

「……よっと」
「な!」

しかしそのボールは秋葉が追いつく前に取られてしまった。

「惜しかったねえ」
「イチゴさんか……っ!」

今までほとんど動いてなかったのに。

やるべき場所ではきちんと仕事をする人なんだよなあ。

「あたしらがディフェンスやってる以上、そう簡単にシュートは撃たせんさ」

大きくボールを蹴り上げるイチゴさん。

「……この人数……辛いな」

誰が何をしているのか把握出来ない。

いや、だがそれは琥珀さんだって同じはずだ。

現にまだ一度しかシュートを撃ってないじゃないか。

「ナイスパスです一子さーん」
「……って言ったそばから!」

琥珀さんにボールが渡ってしまった。

ゴールデンコンビは琥珀さん側からも発動可能なはずだ。

またゴール前に切り込まれてしまう。

「誰か止めてくれ!」

サッカーというのはチームプレイである。

俺一人であがいたってしょうがないのだ。

仲間を信じるしかない!

「任せて遠野くんっ!」

弓塚が琥珀さんに向かって突っ込んでいく。

「ひょいと」

琥珀さんはヒールリフトで華麗に交わしていた。

「……やっぱり琥珀さんも使えるんだ、あれ」

いや、誰が使えたって問題ないんだろうけどさ。

「油断大敵だぜ、リボンのねーさん」

ずしゃあっ!

弓塚を抜いた直後を狙って蒼香ちゃんがスライディングを仕掛けていた。

「うわっと」

これは琥珀さんもかわせない。

が。

「おおっと反則だー!」

何故かチャーリーに反則を取られてしまった。

「……おいおい、なんでだよ」

不満そうな顔をしている蒼香ちゃん。

「キャプ翼ゲーの反則ってランダムだからなあ」

日向がタイガータックルしても反則取られないのに、普通にタックルした岬が反則を取られたりするのだ。

むしろ強い相手がボールを持っていると反則してくれって気にすらなる。

「琥珀チームのフリーキックです」
「……問題は琥珀さんがポジション配置をどうやってくるかどうかだけど……」

オフサイドのないこのゲームでは、フリーキックやコーナーキックの時に究極のポジション配置が可能なのである。

あれをやられてしまうとかなりきつい。

「ま、まだ序盤ですし、ここは大人しくしておきましょう」

琥珀さんにしては珍しくフェアな事を言っていた。

「てりゃ〜!」

ポジションを変更しないままパス。

「……ふふっ」

ボールは白レンに渡った。

「さあ行くわよ。わたしについて来れるかしら?」

華麗なボール捌きを見せる白レン。

「……!」

ウチのレン、つまり本物のレンが白レンに向かっていった。

「やる気?」
「……」
「そう。勝負よ!」
「……!」

ぶつかり合う二人。

「レンくん吹っ飛んだー!」
「レ、レン!」

吹っ飛んだのはうちのチームのレンだった。

まさか本物がやられるだなんて。

「し、しまっ……!」

いや違う。

「こぼれだまになったー!」

ボールも遥か彼方へと飛んでいたのだ。

「みんな! レンの犠牲を無駄にするな!」
「……いや、まだ死んでないと思うんだけどニャー」

ネコアルクがボールを取ってくれた。

「ふふふ、アチキの華麗なドリブルを見るがよいわー!」

どどどどどと砂煙を立てて走っていくネコアルク。

「そう簡単に行かせないわよっ!」

今度は本家アルクェイドがネコアルクに立ちはだかった。

「おおっ? アチキに勝るとも劣らぬナイスバディ。やるなお主!」

いや、明らかにこっちのほうが負けてるって。

「褒めてくれてありがとう。でも、手は抜かないわよっ!」

偽者の白レンがレンをふっ飛ばしたんだ。

こっちだって!

「にょーわー!」

ネコアルクは星になった。

「……まあ期待するだけ無駄だったよな」

活躍したのは最初だけだったか。

「反撃いくわよー!」

ああ、また厄介なやつにボールが。

「真祖の姫君……そのドリブル、阻止させて貰おう!」

ワラキアがアルクェイドに向かっていく。

「邪魔よっ! どきなさいっ!」

ドリブルのスピードをさらに上げるアルクェイド。

「アルクェイドくんのごういんなドリブル!」

チャーリーの実況が入る。

ああ、ワラキアの運命も決まったな。

「ギェエエエエエー!」

ワラキアも星になった。

「……とかアホな事言ってる場合じゃないな」

このままじゃディフェンダーが全滅しちまうぞ。

「っていうか……」

あとディフェンス誰がいたんだっけ。

「うわ〜。すごいドリブル〜」
「……羽居ちゃん……」

っていうか数あわせでオフェンスに入れたはずなのに、なんでそんなところに?

いや、待てよ。

今まで活躍しそうになかった連中が意外な動きを見せている。

もしや羽居ちゃんも奇想天外な動きをっ?

「よしっ! ゴール目前っ!」
「普通に追いついてないしっ!」

アルクェイドは単機でゴール付近まで進んでしまっていた。

「はやーい。わたしにはあんなの出来ないよ〜」

っていうか追うつもりすらないんじゃないかあれ?

「ああもう!」

またもや大ピンチだ。

今度はネコアルクもいない、ワラキアもいない。

いるのはネロのおっさんだけだ。

けどレンがルールを教えてくれたんだよな?

「……」
「ん」

いつの間にやら復活していたレンが小さく首を振った。

「え? ワラキアまでしか教えるの間に合わなかった……?」

って事は。

今ゴールを守ってるのは腕力はあるが知識は0の駄目キーパー。

「今度こそ決めるわよっ! 食らえ志貴チーム! これがわたしの……!」

一方こちらは誰もが認めるエースストライカー。

しかもペナルティエリア内からのシュート。

「……こんなの」

止められるはずないじゃないか。

「ネオアルクショットー!」
 

ウチのチームにとって絶望的な状況の中、再びアルクェイドの必殺シュートが放たれた。
 

続く



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