あの、ゴーマンでコンコンチキでタカビーで人の言う事なんか絶対に聞かない秋葉先輩が!

ちょっとまだるっこしい。

ダイレクトにいこう。

どう考えても商売なんてむかなそうな先輩が。

「何よ変な顔して……」

屋台の店番をしていたのである。
 

『秋葉お嬢さまのたい焼き屋さん』
 
 

わたしはそのネーミングセンスに絶望するのであった。
 
 


ライブアライブ
未来視編
「流動」
その5





「……あの、ここって」

それでもわたしは聞かずにはいられなかった。

いや、もしかしたら同名の別人って可能性もあるじゃないか。

「私の店よ」

駄目でした。

「それより丁度良かったわ」
「え?」
「手伝ってくれないかしら」
「手伝ってって……」

わたしたい焼きを焼いた経験なんてないんですけど。

「フガフガ……お嬢さん、ひとつくれんかのぅ」

なんて会話をしている間におじいさんがたい焼きを買いに来たようだった。

「一万円よ」

高っ!

「そうかい、値上がりしたかのう……」

いや、値上がりとかそういう次元じゃないんですけどっ?

「毎度あり〜」
「うむ……ここのたい焼きは美味い……」

おじいさんはたい焼きをほおばりながら去っていった。

「ああ、あああああ」

なんかものすごい現場を目撃してしまった気がする。

「い、今のまずいんじゃないですかっ?」
「そんな事ないわ。あの人は満足していったじゃない」
「で、でも」
「誰にでも一万円で売ってるわけじゃないわよ」
「ひ、人によって値段を帰るんですかっ?」

それってまるっきり詐欺なんじゃ?

「中身も違うわ」
「……ホントですか?」
「ええ」
「……」

怪しい。

「とにかくそういうことなの。いい。子供は100円、女性は300円から……」
「は、はぁ」

なんだかやたらと胡散臭い先輩の指導を受けるわたし。

「それより先輩」
「何よ」
「アレ、なんとかなりませんか?」
「あれって?」
「あのロボットです」
「……」

タロイモさんは公園の入り口でわたしを待っているようだった。

「あれは……」
「琥珀さんの作ったものなんですけど。わたしをマスターと認識しちゃってて」
「へえ」
「しかもとんでもない武器ばっかりあるんですよ。あんなの町中で使われたら……」
「つまり肉弾戦だけをやるようにすればいいのね?」
「そうなんですが……出来るんですか?」
「なんとかしてあげるから、しっかり売り子をやっときなさいよ」

秋葉先輩はそう言ってタロイモさんに近づいていった。

「あっ……」

大丈夫なのかなぁ。

「すいません、たい焼きください」
「え、あ、はいっ」

買いに来たのはサラリーマン風の男の人であった。

「えーと……」

サラリーマンには確か千円か一万円。

「せ、せんえんで」
「あいよ」
「……」

売れてしまった。

「ああ、ほんとにいいのかなあ」

確かに先輩の言う通りそれぞれ値段ごとにたい焼きはわけてあるんだけど。

中身一緒だよねえ、これ。

「すいません、ひとつ」
「あ、はい……」

女性は300円と。

「くださーい」

子供は100円。

「お願いできるかな」

千円。

「……っていうか」

地味に忙しいんですけど。

「もしかして人気なのかな……」

秋葉先輩、おそるべし。
 
 
 
 
 

「どう?」
「あ、先輩」

しばらくして先輩が戻ってきた。

「一応パンチとキックだけにするようにしておいたわよ」
「ほ、ほんとですかっ?」
「ええ。でもそのせいで大して役に立たないロボットになっちゃったけど」
「十分ですよ」

別にこっちからケンカをしかけるわけじゃないんだから。

「あ」

っていうか今から琥珀さんに返しに行くんだっけ。

余計なことしちゃったかも。

「どうしたの?」
「い、いえ別に」

まあ先輩でいじれるくらいなんだから、琥珀さんだったら楽勝だろう。

「ありがとうございました」
「こっちこそ店番ありがとう」

先輩はそう言って売りもののたい焼きをいくつか袋に入れてくれた。

「後で食べなさい」
「ありがとうございますっ」

これはみんなにわけてあげようっと。

「さってっと……」

肩をぐるぐる回して、それからたい焼きを焼き始める先輩。

「……」

意外と言っては失礼だけど、かなり様になっていた。

「いこっか」
「はい、マスター」
「あ、あはは……」

タロイモさんに苦笑しつつ型月堂を目指す。

「あう」

途中でいきなりウロボロスの戦闘員を見つけてしまった。

「まだうろついてるのかぁ……」

今のうちに大人しくして貰ったほうがいいのかも。

「た、タロイモさん」

秋葉先輩が調整してくれたっていうし。

「ハイ」
「倒してくれる?」
「カシコマリマシタ」

そう言って腕を戦闘員へ向けるタロイモさん。

「タロイモパンチ」

ドゴォッ!

「え」

次の瞬間ものすごい音とともに戦闘員が吹っ飛んでいた。

「ロ、ロケットパンチ?」

いや違う。

タロイモさんの手から伸びたワイヤーがきゅるきゅると回収されているのが見える。

かしゃん。

そして拳が戻っていた。

「撃破完了」
「ど、どうも……」

これならまあ被害も出ない。

「ボディガードとしてはいいのかも……」

やっぱり最近物騒だし……

「ダメダメ」

琥珀さんの悪い思考に洗脳されてしまっているようだ。

わたしはもっと平和な世界で生きるんだからっ。

「マスター?」
「あ、うん、なんでもないっ」

とにかく型月堂へ急ごう。
 
 
 
 

「……あれ」

型月堂はもぬけの空だった。

「おかしいいなぁ」

地下帝国にもいない。

「戻ってるはずなんだけど……」

一体どこにいるんだろう。

「マスター」
「……」
「マスター」
「えっ、あ、はいっ?」

気付くとタロイモさんが部屋の隅でわたしを呼んでいた。

マスターって呼び方、どうも慣れないなぁ。

「コチラデス」
「あ」

そこには見た事の無い階段があった。

「この先に……」

琥珀さんと……きっとまた怪しい実験道具があるんだろう。

「予知しなくても嫌な予感しかしないなぁ」

けれど行くしかないのだ。

「……よしっ!」

覚悟を決めて降りる。

「……あれ?」

いない。

「マスター」

また階段が。

「まだあるんだ……」

降りる。

「いない」

降りる。

「いない」

降りる、いない。

「こ、この階段どこまで……」

ひょっとして無限ループなんじゃないかと思えるような階段と部屋。

「つ、次こそっ!」

足がなんだか疲れてきてしまった。

「……次……こそ!」

希望を込めて階段を降りる。

「……あ」

そこにはドアがあった。

「やっと……」

これで何かあるはずだ。

期待を込めてドアをあける。

すると、その先には狭い通路があった。

「ここは……」

いかにも何かありそうな感じだ。

恐る恐る通路を進んでいく。

すると。

「な、なにあれ……!」
 

わたしの前に、巨大な『何か』の足が見えてくるのであった。
 

ててんてんてん、ててん。



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