「わわっ?」

何やらわたしの座っている椅子とその周辺が動き出した。

「ミュージック、スタート!」

そして琥珀さんが指を弾くと音楽が流れ出す。

「この曲は……?」

それは何故かとても聞き覚えのある曲であった。
 

「いっまはーむかしのーバッビッロニーアー」
 
 

ライブアライブ
未来視編
「流動」
その7







「その歌は……」

確か秋葉先輩がよく口ずさんでいる歌だ。

「これですか? これは秋葉さまとわたしで作ったブリキ大王のテーマです」
「……二人で作ったんですか」
「はい。秋葉さまが一番、わたしが二番、二人で三番です」
「あー」

なるほどなんとなくそんな感じがする。

「わたしはG秋葉がいいって言ってるのに秋葉さまが聞いてくれないんです」
「そりゃまあ……」

自分の容姿で自分の名前がついたロボットは嫌だろう。

タロイモさんもそうだけど。

「あーついーこころーがーよーびさーますー」

いつの間にか歌は〆に入ろうとしていた。

「ぶーりきーだいおー」

がたん。

「あ、到着したみたいですよ?」
「ええっ!」

叫び声をあげる琥珀さん。

「ちゃんと歌い終わってからつくように調整したのにっ?」
「……あは、あはは」

どうしてそんなつまらない事に情熱を注ぐんだろうこの人は。

「まあとりあえず進んじゃいますよ?」

移動した場所は狭く、ドアがあるだけだった。

「うーん、もうちょっと前の儀式を増やすべきでしたかねぇ」

勘弁してください、ほんと。

琥珀さんに苦笑しつつドアを開ける。

「わ」

そこはいかにもって感じの部屋だった。

いや、部屋じゃない。これは。

「G秋葉のコクピットですよ」

何に使うのかわからない、いくつもののレバーとスイッチ。

マンガの世界みたいな電子機器。

「取り合えず操作してみます?」
「は、はぁ……」

不安を感じつつも椅子に座ってしまうわたし。

「念じながら操作してみてください」
「……わかりました」

目を閉じて一点集中。

動いて……ブリキ大王!

念じながらスイッチを押す。

ぶおんっ。

「え?」

いきなり成功?

なにか揺れて……

「揺れて……ええええっ!」

違う、揺れるなんてものじゃない、これは、これは!

「椅子、いいいいい椅子ー!」

わたしの座っている椅子がぐるぐると回転を始めてー!

「あんまりしゃべると舌噛んじゃいますよ?」

冷静に分析しないで助けてくださいっ!

叫びたいけど叫べない。

「はぅぅ……」

散々目が回ったところで椅子は止まってくれた。

「まあそう簡単に動かせたらつまらないですもんね」

このスイッチ本来はどういう動きをするものだったんだろう。

「い、意図的じゃないですよね?」
「そんな事するわけないじゃないですか。これはわたしが魂を込めて作った自信作ですよ?」
「……」

とすると余計にタチが悪い気もするんだけど。

「他のも試してみてくださいな」
「……わかりました」

渋々ながら色々試してみる。

が、どれもろくな結果は出なかった。

明かりが消えるだけだったり、上から部品が落っこちてきたり。

「やっぱり駄目ですねえ」
「……ホントに動くんですか? これ」

ただの不良品のような気さえしてきた。

「し、失礼ですね! 理論は合ってるんですよ! 強大な精神力さえあれば……!」
「……」

精神力……か。

確かにわたしには足りなさそうだなぁ。

「取り合えず今日は諦めますよ」

ここでいくらがんばっても動く気配がなさそうだった。

「ですね。残念です。アキラさんならあるいはと思ったんですが……」
「あは、あはは」

適当に笑って誤魔化すわたし。

「まあいずれまた挑戦するつもりがあったらいつでもどうぞ」
「わかりました」

とはいったものの、そんな機会あるのかなぁ。
 
 
 
 
 
 

「では失礼しました」

結局わたしはタロイモさんを引き連れて帰る事になったわけで。

ここに来た意味は正直なにひとつなかった。

ただ疲れただけである。

「あ、アキラさん」
「はい?」
「何か改造できそうなアイテムとか、イメージの沸きそうなものがあったら頂けませんか?」
「といいますと?」
「いえ、何か強いアイテムを作れるかもしれないので」
「はぁ」

といってもそんなイメージの沸きそうなものって……

「あります」

そういえばすっかり忘れていた。

「これ、翡翠さんから預かったんですけど」
「こ、これは……!」

目を見開く琥珀さん。

「翡翠ちゃんのパンツじゃねーか!」

興奮のせいか口調までおかしくなっている。

「はい、そうなんですが」

正確に言えば、翡翠さんに琥珀さんがプレゼントしたものだそうだ。

無論履かずに返品コースなのだが。

「おおお、そこはかとなく翡翠ちゃんの香りが」

それはただの香水の香りである。

「これは素晴らしいモノを頂きました!」
「は、はぁ」
「ちょっと待っててください! すぐ戻ります!」

ものすごい勢いで地下へ駆けて行く琥珀さん。

どすんばたん、がたん、どかん。

「……何してるんだろう」

わたしはこのまま逃げ出してしまいたい衝動に駆られていた。

「お待たせしましたっ!」

しかし予想に反して琥珀さんが素早く帰ってくる。

「これを贈呈します!」
「これは……」
「獣神シャツにパワーリスト、アイアンフットに金のかみかざり、昭和ヒヨッコッコ砲に魔法のペンダントを3つつけちゃいます!」
「えええっ? そ、そんなにですかっ?」
「いいんですっ!」

なんだかよくわからないけどRPGだと最強っぽいアイテムのような気がする。

「なんなら昭和キントト砲もつけますよっ? あ、ライダーブーツよりアイアンフットのほうが強いんで騙されないで下さいね?」
「はあ」

さらにアイテムが増えてしまった。

「昭和ヒヨコッコ砲と昭和キントト砲はメカヒスイちゃんの装備にも出来ます。すごい威力なんで是非使ってくださいな」
「……す、凄い威力は遠慮して欲しいんですが」

街中に被害が出るのは勘弁して欲しい。

「環境に優しい兵器です。癒し効果もあるんですよっ?」
「そ、そうですか」

半ば強引に渡されてしまった。

「いやー、実にいい取引でしたねっ!」
「……」

いいんだろうか、これで。

なんだか騙しているようで悪い気がする。

「……えと」
「なんですかっ?」
「い、いえ、なんでもないです、はい」

これは翡翠さんに頼んで本当のパンツを貰ったほうがいいのかも。

ってそんなの許してくれるはずがないし。

とすると洗濯物あたりから拝借して……

「あうううう」
 

女子学生とは思えないへんてこりんな悩みで揺れるわたしであった。
 

ててんてんてん、ててん。



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