「新シリーズ突入ですねぇ」
「だなぁ」

ななこがオレの部屋で寝転がって週間マンガ雑誌を読みながらそんな事を言った。

晩飯後の暇な時間はやはり読書に限る。

オレはマンガしか読マンガ。

つまらん。0点。

「やっぱりテコ入れとかあるんでしょうか」
「かもなあ」

ありがちなのは新キャラ登場、既存キャラの意外な過去話とか。

「これからどうなるんでしょうか」
「知らん。全ては神の味噌汁だ」
「あんまり美味しくなさそうですね」
「だろうなあ」

神様ってのはいつだって人間に試練を与えたがるものらしいからな。
 
 


『ななこ・すーぱーがーるカンパニー』
その121







「で、どうなると思います?」
「ものすごくどうでもいい」
「えー?」
「期待したからどうなるってもんでもないだろ」

逆に変に期待を抱いて失望するかもしれないし。

「夢がないですねえ」
「現実を見ていると言ってくれ」

まあマンガの世界に現実を求めるのもどうかしてるが。

「思ったらそれが現実になるかもしれないじゃないですか」
「ほう。じゃあオレに美女に囲まれたハーレムでウハウハな生活を送らせてくれるのか」
「……今がそうじゃないですか」
「オマエ除いてな」
「そうですね、有彦さんは目が腐ってますもん」

コノヤロウ、言い返し方が無駄に上手くなってやがる。

「他になんかないんですか?」
「何かと言われてもな」

現状で割りかし満足しているし、特に何が欲しいってのもないんだけど。

「平和なのが一番だろ」

面白くない事に遠野と一致してしまう意見だが。

「ですねえ。わたしも呼び出しがないと嬉しくてー……え」
「来たか」

噂をすればなんとやらというか。

こいつのマスターとやらはタイミングを計っているとしか思えない。

「……行ってきます」
「行ってらっしゃい」

ななこSGKの仕事をしなくなったぶん、あっちに呼ばれる事が多くなった気がする。

あいつのマスターが忙しいって事は、それだけ何か非常識な事件が起きているということだ。

「なんだかなぁ」

自分が関係ないとはいえあまりいい気分ではなかった。

「ななこちゃーん」

なんて事を考えていると弓塚の声が聞こえた。

「ななこなら丁度今出て行ったぞ」
「あ、そうなんだ」

入り口が開いていたのでこっちを見た弓塚と目が合う。

「何か用事でもあったのか?」
「ちょっと話しをしたかったんだけど」
「オレならいつでも開いてるぜ」
「女の子同士じゃないと駄目なの」
「ふーん」

弓塚は嘘をつくのが下手である。

遠野のバカならともかく、オレだったらそれが嘘である事を簡単に見抜ける。

「まあそういう事なら仕方ないか」

オレに言わないということは弓塚が言いたくないと思っているということだ。

それをわざわざ聞く気にはならない。

そもそもななこに聞かなきゃいけなくてオレに言いたくない話題なんてひとつしかないのだ。

何か事件が起きているのだろう。

しかも多くの一般人が気付かないところで。

「……」
「どうかしたの? 乾くん?」
「ああ、いや別にさ」

なんとなくななことの会話を思い出した。

新展開と言えば主人公が新しい能力を身につけるってのもあるなあと。

オレにもなんか突如不思議な力が……

「弓塚って案外胸でかいよな」
「うえええっ?」

望んでもないのにそれを手に入れてしまった弓塚の前でそれを考えるのは失礼な気がして止めた。

「そんな事ないよ。シオンのほうが」
「でも最近でかくなってないか?」
「それは確かに……」
「ほほう」
「って乾くんっ!」
「いやあ眼福眼福」

そうか弓塚も成長してるんだなぁ。

「お兄さんは嬉しいぞっ!」
「同い年だよぅ」
「ナイスツッコミ」

びしっと親指を立てるオレ。

「まあとにかくななこは留守だ。ヒマだったらオレとナイストークでもするか?」
「あ、うん。シオンを待たせてるから」
「そうか。そりゃ長居させて悪かったな」
「ううん、こっちこそごめんね」
「じゃあなボインちゃん」

弓塚はひっくり返っていた。

なるほど今日は青のストライプか。

「……さて」

部屋のドアを閉じる音が聞こえたところで立ち上がる。

「ちょっと出かけてくるか……」

オレがいると話し辛いかもしれないし。

「……満月か」

空を見るとまんまるお月さまが輝いていた。

こういう日の散歩は楽しいかもしれない。
 
 
 
 
 

「ゲーセンならまだ開いてるかな」

何か新しいゲームがあるかもしれない。

「よし」

そうしよう、それが一番だ。

「レッツゴー!」

などと無意味にハイテンションでゲーセンへ向かう。

「ん?」

歩いているとどこかで見たような姿を見かけた。

「あれは……」

アルクェイドさんと遠野だ。

何やらあーだこーだと口論しているように見える。

またケンカでもしたんだろうか。

っていうか二人揃って夜の街か。

いい身分でございますな。

「見なかった事にしよう」

今度はもう自分で解決してくれ。

首を突っ込む気分にはならなかった。

さあいざゆかんゲーセンに。

「……」
「あん?」

進もうとした矢先、目の前に何か妙なものが見えた。

「……目?」

真っ暗闇の中に、目だけが浮いている。

「おいおい勘弁してくれよ」

また何か超常現象か?

「……」

ちりん。

「お?」

などと思っていると、鈴の音の音が近づいてきた。

そして間近に来て正体が判明する。

「黒猫……」

このリボンをつけた黒猫。

どっかで見た事あるような。

「……」

黒猫はオレのほうを見てにゃあと鳴いた。

それは何故か来ないほうがいいと言っているように聞こえた。

「いかん」

なんだか思考までオカルトになってきている。

余計な事を考えず、オレはただ一般人として普通の生活を満喫していればいいのに。

「ああもうやめだやめ」

なんだか不吉な感じがする。

オレは足早に今きた道を引き返すのであった。
 
 
 
 
 

「さつきの下着がなくなっているのですが何か知りませんか有彦」
「断じてオレじゃないぞ」

そして帰ってきたら酷い容疑をかけられていた。

「などといって部屋を探したら出てきませんよね」
「出てこない出てこない」
「シ、シオン。いくら乾くんだってそんな事しないよぅ」
「そうだ、オレは中身のほうが興味あるぞ」

ごすっ。

「イテエ! 骨が、骨が!」
「下着泥棒でも出現したのでしょうか」
「許せんやつだな」

見つけ次第ボコボコにしてやらんと。

「いくつも盗まれたのか?」
「ううん。今日履こうとしてやつだけなんだけど」
「ほう。じゃあ今はノーパンか」
「そんなこと無いってば! ちゃんと履いてるよぅ!」
「青のストライプだもんな」
「……有彦」

シオンさんが不審げな顔をしていた。

「な、なんだよ」
「それは先ほど述べた、さつきの盗まれた下着なのですが」
「え?」

さっきずっこけた弓塚はそれを履いてたはずなのだが。

「弓塚、パンツ見せてみろ!」
「え、ちょ、やだあっ!」
「ぐはぁ!」

当然の如く殴られるオレ。

「やはり貴方が犯人だったのですね」
「いやだから違うってば」

何かおかしい事が起こっている。

「いや、正直に答えてくれ。大事な事なんだ」

さっき見た弓塚は間違いなく……

「……白、だけど」
「……」
 

ドッペルゲンガー?
 



あとがき
ちょっと非日常っぽいシリーズに突入するかもしれません。
まあ有彦はいつだって非日常の中に生きてますが。
どこまでも一般人な有彦に明日はあるのか!
今までの幸せのツケが一気に来そうな予感ww


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