「そう。それでいいんだ」

俺はアルクェイドの頭を撫でてやった。

「や、やめてよ志貴」

アルクェイドは顔を赤らめて俺の手をどけた。

「……はは」

ちょっと子供扱いしすぎたか。

「じゃ、少し経ったら秋葉の部屋に行くか」
「うん」
 

頷くアルクェイドを見て、俺はきっとみんなの学校は上手くいくという確信を抱いたのであった。
 
 








「屋根裏部屋の姫君」
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「はーい、皆さんお待たせしましたー」

しばらくすると、琥珀さんのほうから客間のほうに顔を出してくれた。

「もう宜しいのですか?」

翡翠が尋ねる。

「あはっ。ありがとね。気を遣わせちゃって」
「いえ」

少し照れた顔をする翡翠。

「秋葉は?」
「一緒に来ていますよ。どうぞ」

琥珀さんが促すと秋葉が後ろから現れた。

「え、えー。その、皆さん、私を心配してくれたとのことで、その……どうもありがとうございます」

多少まごつきながらお礼を言う秋葉。

秋葉も素直じゃないところがあるからなあ。

「いえいえ。元気になられて本当に良かったですよ」

先輩はにこりと微笑んだ。

「……先輩」

ふだんいがみ合っていても、やっぱり心配してくれていたんだ。

「あ、お礼なんていいですよ? カレー1年分とかそんな無粋なことは言いませんから」
「……」
「と、遠野君っ! そんな顔しないでくださいっ。冗談なんですからっ!」
「あ、うん。そうだよね。はは、ははははは」

先輩はあんまり冗談とかをいうキャラじゃないので本気かと思ってしまった。

「まったく、お見舞いに来たくらいで調子に乗りすぎではありませんか?」

そんなことを言いながらも秋葉は笑っている。

「だから冗談ですって」

苦笑している先輩。

「……」

そしてじっと黙っているアルクェイド。

「ほら、アルクェイド」

アルクェイドの肩を叩いてやる。

「あ……うん」

琥珀さんと秋葉の前に立つアルクェイド。

「その……ご、ごめんなさい」

そして深々と頭を下げる。

「いえいえ、もう過ぎた事ですからー」

にこりと笑う琥珀さん。

「……反省しているのならば許してあげましょうか」

秋葉も事情を知らないはずなのに納得していた。

「このようにアルクェイドさんも今までの勝手な行動を慎むと言ってくださいました。これからわたしたちでそのためのサポートをいたしましょう〜」

ぽんと手を叩いてそんなことを言う琥珀さん。

なるほど、秋葉にそういう風な事情説明をしたらしい。

「ってことは秋葉も協力してくれるのか?」
「ええ。素行が良くなってくれれば私の生活も安泰するというものですから」

髪を掻き揚げ微笑む秋葉。

秋葉が最大の難関だっただけにその言葉は非常に嬉しかった。

「よかったなぁアルクェイドっ」

俺は思わずアルクェイドにヘッドロックを仕掛けた。

「わ、わっ」
「兄さんっ! 何をしているんですかっ!」
「そうですよ遠野君っ!」
「志貴さん不意打ちは卑怯ですよー」
「志貴さまはもう少し節度を持った行動をしたほうが宜しいかと」

そんな俺に向かって非難轟々の声の雨。

「……俺、悪者ですか」

なんだかこの先、俺ばっかり責められそうな予感がしてしまうのであった。
 
 
 
 
 
 

「はー」

とりあえず学校の話はなんとかまとまり今日は解散した。

俺は部屋に戻ってベッドの上に転がり休んでいる。

アルクェイドの授業第1回は次の日曜日ということになった。

果たしてどうなることやら今から楽しみである。

「なぁ、アルクェイド」

屋根裏部屋の入り口に向かって声をかけた。

「んー?」

すると声だけが返ってくる。

「いや、日曜日が楽しみだなって」
「うん。すっごい楽しみ」

みんなに許してもらい気分も晴れたのか、アルクェイドは明るい声だった。

やっぱりアルクェイドは天真爛漫でいてこそのアルクェイドだ。

「最初の先生は琥珀さんだからなー。何が起こるかわかんないぞー」
「そうね。だから余計に楽しみだわ」

しかしさっきからアルクェイドは屋根裏部屋から降りてこないので話し辛いったらありゃしない。

「なんかやってるのか?」

なのでそう尋ねてみる。

「うん、ちょっとー」

そんな返事が返ってきた。

「……」

一体なんだろう。

気になってしまうじゃないか。

「てい」

俺はなわばしごを掴んで昇り始めた。
 
 
 
 
 

「ん」

屋根裏部屋に上がるとアルクェイドは机に向かって何やらやっている。

ちなみにこの机は使ってない部屋にあったものを持ってきたやつだ。

「何やってるんだ?」

後ろから覗きこむ。

「わっ」

集中していたせいでアルクェイドはそれで俺が来た事に気付いてなかったようだ。

「……ノート?」

机の上にはノートが散乱していた。

「ちぇー。日曜日に見せてびっくりさせようと思ったのに」

アルクェイドは残念そうな顔をしている。

そしてその手には黒いマジックが。

「なるほど……」

一冊ノートを手に取る。

そこには「翡翠」という字となかなか上手く描けている似顔絵があった。

「みんなのノートを作ってたのよ。学校ってノートが必要でしょ?」
「ああ、そうだな」

ちゃんと琥珀さんのもの、秋葉のもの、シエル先輩のものとアルクェイドのものが用意されているようだった。

まあ秋葉のは「妹用」だけど。

似顔絵は胸の無さまでしっかりと再現され。

いや実にアルクェイドは字が上手いなあうん。

「……って俺のは?」

しかしどこにも俺のものが見当たらなかった。

「これから用意するところだったのよ」
「なんだ。そうだったのか」

俺だけ仲間外れにしたら泣いちゃうぞ。

とか言ってもてんでかわいくないどころか自分でも殴りたくなりそうなので止めておく。

「期待してるぞ」
「任せといて」

アルクェイドはにこりと笑った。

「はは……」

なんだか文化祭の準備をしてるような楽しさがある。

こういうのっていうのは準備の時も楽しいんだよな。

「……ん?」

ぱらぱらとノートをめくっていると俺はあることに気づいてしまった。

どれもこれもノートの前半部分が破ってあるのだ。

まさか。

「アルクェイド。このノート、どこから持ってきたんだ?」
「うん。志貴の部屋から持ってきたのよ?」

をい。

「ちょっと待て! 俺の部屋にあるノートは学校でも使ってるやつだぞ?」
「あ。そうなの? ちょっとしか使ってなかったからいらないかと思ったわ」
「くっ……」

そりゃあ俺は真面目に授業に出てるくせにノートは取ってないさ。

まあ、それじゃ真面目とは言わないかもしれないけどそれは置いといて。

「使ってある部分はどこやった!」
「そこのゴミ箱に」
「うわーっ! 俺の三角関数がっ! 歴史年表がっ!」

どれもくしゃくしゃに丸められていて正直見れたもんじゃなかった。

「もしかしているやつだったの? わたしてっきり……」
「い、いや。いいよ、もう」

ノートに書いてあっても実は全然覚えてなかったりするし。

「し、志貴の似顔絵は気合を入れて描くからっ。すごいかっこよくっ」
「……ああ。期待してる」

あんまりフォローになってないような気がするけどそれで我慢しよう。

これもアルクェイドのためだっ。
 

「志貴さーん。アルクェイドさーん。いらっしゃいますかー?」
 

そんなことを考えていると下から琥珀さんの声が聞こえるのであった。
 
 

続く



あとがき(?)
屋根君文庫版を作るべく屋根君をワードで文庫っぽくしてみました。
そうしたら第一部の10話で84ページ(汗
一部だけで300ページ越(文庫一冊ぶん)になりそうな勢いです。
そんなに長かったのかこのSSって感じですね(^^;
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
と感謝してみたり。


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