「もしかしているやつだったの? わたしてっきり……」
「い、いや。いいよ、もう」

ノートに書いてあっても実は全然覚えてなかったりするし。

「し、志貴の似顔絵は気合を入れて描くからっ。すごいかっこよくっ」
「……ああ。期待してる」

あんまりフォローになってないような気がするけどそれで我慢しよう。

これもアルクェイドのためだっ。
 

「志貴さーん。アルクェイドさーん。いらっしゃいますかー?」
 

そんなことを考えていると下から琥珀さんの声が聞こえるのであった。
 
 







「屋根裏部屋の姫君」
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教えて! 知得留先生! 〜ガクガク動物ランド〜


























「あ、うん。なに?」

答えながら入り口に顔を出す。

アルクェイドにはやるなって言ったけど確かにこうやりたくなってしまう。

「あはっ。志貴さん凄い髪型になってますよー」

笑われてしまった。

「……」

やっぱりこれはやらないほうがいいようだ。

大人しく下へと降りていく。

「どうしたの?」
「あのですね。アルクェイドさんと一緒にわたしの部屋に来ていただけませんか?」
「琥珀さんの部屋に?」
「はい。ちょっとアルクェイドさんの精神円熟度を測ろうと思いまして。あまり難しいことをやっても意味がないですからね」
「あ、うん」

精神円熟度っていうと難しく聞こえるけどまあ要するに精神年齢である。

アルクェイドの精神年齢は相当低そうな気がするけど実際どうなんだろう。

「わかった。連れていくよ」
「はい。待ってますねー。なるべく早くお越し下さいませー」

そう言って琥珀さんは部屋から出ていった。

「なるべく早くか……」

善は急げというしこういうのは早いほうがいい。

「アルクェイド。聞いただろ。行くぞっ」
「えー? まだ志貴の似顔絵描けてないのにー」
「そんなの後でいいからほらっ!」
「わかったわよー、もう」

ひょいとベッドに着地するアルクェイド。

「行きましょ」
「ああ」

俺の言葉に対しては聞き分けがいいんだけどなぁ。

他の人に関してはてんでダメである。
 
 
 
 
 
 
 

「そんなわけでアルクェイドさまにはこれからあるテストをやってもらいますよー」
「えー?」

琥珀さんの言葉にアルクェイドはあからさまに嫌そうな顔をした。

真祖といえどもテストは嫌なものらしい。

「アルクェイド、我慢しろ。必要な事なんだから」
「むー。わかったわよ」

俺の言葉で渋々アルクェイドは頷いた。

「あはっ。そんな難しく考えないで下さいな。アルクェイドさんにはこれからテレビ番組を見てもらうんです」
「……テレビ?」
「はい。それらの中でどれが面白かったか答えてくださればOKですよ」
「そんな簡単なのでいいの?」
「はい」
「よかったー。確率干渉精度テストとかじゃないんだー」

よくわからないけどアルクェイドはもっと難しそうなことを想像していたようだ。

「とにかく始めますねー。もう時間ですし」
「時間?」
「はい。ちょうど放送時間なんですよー」

琥珀さんがテレビをつけた。

チャンネルは教育テレビ。

いわゆる子供向けの、しかも幼稚園児向きの番組を多く放送しているチャンネルだ。

そして今の時間帯は俺の記憶が確かならば着ぐるみたち繰り広げるほのぼの劇場のはずだ。
 

「みんな、集まれー」

おそらく歌のお姉さんだと思われる可愛い声。
 

「教えて! 知得留先生! 〜ガクガク動物ランド〜 はっじまるよー!」
 
 

待て待て待て。

「ちょっと待ってくれ」
「はい?」

なるほど子供向け番組らしく、主題歌はほのぼのしたものである。

だけど。

「……ガクガク動物ランドって、なに」
「はぁ。文字通りですけど」
「そ、そうじゃなくて。こういうのって普通わくわく動物ランドとかそういうんじゃないのっ?」
「いえ、ガクガクで正しいと思いますがー」

琥珀さんが画面を指差す。

「教授!」
「エトー!」
「ばけねこー!」

ああ、なんかガクガク動物ランドで合ってるかもしれない。

「っていうかおかしいよこの番組! なんだよ最初に出てきた渋いオッサンは!」

しかもどこかで見たようなやつのような気がしてたまらない。

「あれは教授さんです。動物好きのナイスガイですよ?」
「う、嘘だっ。絶対嘘だ」

絶対アレは人を何人も殺している顔である。

「あ。このばけねこって前に志貴に貰ったぬいぐるみね」
「ん?」

ばけねこという名前自体キャラクターとして成立しているのかどうか疑問だが、とりあえずそいつはアルクェイドをデフォルメしたようなキャラだった。

そういえば前にゲーセンに行ったときにこんなぬいぐるみをあげたような気がする。

「この番組は知得留先生とばけねこ、その友人の教授と動物たちが楽しく暮らす様子を描いたファンシーな番組なんです」
「く、詳しいんだね琥珀さん」
「はい。何気にファンなんですよわたし」

琥珀さんがファンだなんて聞くとますます番組の内容が不安になってしまう。

とりあえずばけねこ、知得留先生とデフォルメされた着ぐるみでまあまだ許せるのだが、エトとかいう鹿に関しては何故かえらいリアル志向の造形をされていてかなり浮いている。

教授に関してはもうデフォルメされてても渋いというわけのわからない存在である。

「ほらほら、歌が終わりました。始まりますよ」
「あー、うん」

こうなったらなるようになれだ。
 

「ボンジョワール! みなさんお元気ですか?」

いきなりフランス語ですよお姉さん。

「おっす! ばけねこさんだぞ!」

画面左から知得留先生を隠すように現れるばけねこ。

「こら、邪魔ですこの……! おっと。良い子のみなさん。このようなばけねこの真似はしてはいけませんからね?」

ハリセンでどつきながらそんな事を言っても意味がないと思います、知得留先生。

「まあまあ落ち着きたまえ知得留先生」

姿通りに滅茶苦茶渋い声の教授が現れた。

着ぐるみだというのにその渋さは時代劇のようである。

「教授がそう仰られるのでしたら……」

やはり先生より教授のほうが偉いらしい。

「うむ」

この教授「うむ」ってセリフが滅茶苦茶似合うなあ。

ポーズまで完璧である。

「やーいおこられたー」

ばけねこが教授の後ろで知得留先生をなじる。

このばけねこ、性格までアルクェイドに似ているかもしれない。

「きのこのこ」

そこに現れる喋る鹿。

いや、しゃべってるのかどうなのかすら疑問だったけど。

「む。エト君がお腹が空いているらしいぞ」

さすが動物好きの教授、今の意味不明な言葉を理解したらしい。

「よーし、じゃあアチキたちでエト君の食べ物を探しにいこー!」

おーっっと腕を伸ばすばけねこ。

「まったく食べ物のこととなると判断が早いんですね、あなたは」
「うるさいパスタおんなー。よけいなことばっか考えてるからたいじゅーがふえるんだぞー」
「た、体重は関係ないでしょう体重はっ!」
「うむ。よいこのみんなはこのように女の人に体重が増えたなどとを言ってはいけないぞ」

思い出したように子供への注意を促す教授。

しかしためになるんだかならないんだかまったくわからない内容である。
 

「アルクェイド、面白いか? これ」

アルクェイドに尋ねてみる。

「話しかけないでよ。今いいところなんだから」

完全に夢中なようであった。

「……」

琥珀さんも画面に見入っている。

信じられないことにこの番組はお子様から玄人まで幅広い人々のハートをゲットしているようである。

俺か? 俺がおかしいのか?
 

「じゅまぺ〜るおどれ〜。さばぁ〜? めるしぃ〜」
「うむ。相も変わらずキレのいいエセフランス語だな」
「わーい、エトの好物のしかせんべいをゲットしたぞー!」

ひたすら展開されていくシュールなやり取り。
 

「わからん……」
 

俺は深刻に悩んでしまうのであった。
 

続く



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