友達でもそっち関係の話すのは禁止。俺の人格が疑われる」

そこらへんははっきりしておかなきゃな。うん。

「……そ、そんなに凄いんですか?」

シエル先輩は目を丸くしていた。

「う」

いかん、墓穴を掘ってしまったようだ。

「そうよ、だってわたしをひっくり返して……」
「だあ、だから駄目だって言ってるだろーがっ!」
「ふふっ……あはははは」
 

そうして俺たちは微妙にアダルトな話題で盛り上がるのであった。
 
 

「屋根裏部屋の姫君」
第四部
姫君と居候
その32






「っつーわけでアルクェイドが猫を捕まえてさ」
「はぁ。そんな事があったんですか」

話題は変わり、アルクェイドが屋根裏に住むようになってから起きた色んな出来事についてになっていた。

「そういえば志貴が留守の時に妹が志貴の部屋に来た時があったのよ」
「マジか?」
「うん。琥珀のおかげで大丈夫だったんだけど」
「そ、そうなのか」

実は俺の知らない間にそんなピンチがあったんだなあとか色々知る事もできた。

「あはは……っと。だいぶ話し込んじゃいましたね」
「おっと」

なんせ今まで誰にも話せなかったことが解禁になったわけで。

話したいことはいくらでもあったのである。

「そのへんの話はまた次回だな」

まあそうあせることはない。

時間はいくらでもあるんだから。

「そうですね。楽しみにしています」

シエル先輩はにこりと微笑んだ。

「というわけで練習再開です」
「え? まだやるの?」

俺としてはここでお開きを考えていたのだが。

「当然ですよ。アルクェイドも加わってくれたことですし、ひとつ三人での連携を考えなくては」
「あ。それいいわね。トライアングルアタックとかどう?」
「……名前はどうでもいいけど、人間が出来る技にしてくれよ」

まあアルクェイドもやる気みたいだし、ひとつ付き合うことにしよう。

「うん。志貴が回転しながらわたしたちの投げるナイフを避けるっていう……」
「出来るかっ!」
「えー」

不満そうな声を上げるアルクェイド。

「そうですよ。アルクェイド。そういうのはいけません」
「先輩……」
「ここは遠野君が服を脱いで肉体を披露するメガネマッスルを……」
「メガネ関係ねえーっ!」

だいたい何故にマッスルなのか。

「あ。ならメガネ繋がりでメガネ空中大回転……」
「だから人間が出来る技にしろっ! なんだメガネ空中大回転ってっ! やっぱりメガネ関係ないだろ!」
「あるわよ。メガネを空中で激しく回転させて志貴が10メートルジャンプを……」
「無理。却下」

俺は即行で却下した。

「何よー。せめて5メートルくらいジャンプしなさいよ」
「普通の人間だったら5メートルだって無理に決まってるだろ」
「あら? シエルは出来るわよ」
「ええ。出来ますね」
「シエル先輩を基準にしないでくれ……」

いかん、アルクェイドと先輩がボケて俺が突っ込みを入れるという嫌な方程式が出来つつある。

「頼むからさ。もっとマシなのにしてくれよ」

俺はため息をつきながらそう言った。

「はあ。では凄く普通なのがよいですか? つまらないですよ?」
「そのほうがいいな。……といっても自信はないけど」
「うーん」

腕組みをするシエル先輩。

「では遠野君が頭にりんごを乗せてわたしが黒鍵を……」
「そ、それ普通……かなあ」
「普通ですよ。テレビでもたまにやってます」
「だけど勘弁して」

死ぬほど心臓に悪そうである。

琥珀さんあたりが喜びそうだけど。

「あ、じゃあこういうのはどうかな?」

そこでアルクェイドがぱっと挙手をした。

「どういうのだよ」

また変なのじゃないだろうな。

「志貴ははわたしたちがやってる芸を邪魔するの」
「邪魔を?」
「うん。予想外のアクシデントってやつ。それで成功したら面白いし、失敗してもそこは笑いが取れるでしょ?」
「なるほど。完璧なものより多少のミスがあったほうが人間味は増しますし、いいかもしれないですね」
「そうかなぁ」

あんまりいいアイディアだとは思わないんだけど。

「遠野君がわたしたちの邪魔をする、というのは斬新でしょう?」
「まあそれは確かに……」

俺は和を重んじるのである。

特に周りがこう厄介な方々ばかりだと、嫌でもそういう風になってしまう。

「……なるほど、面白いかもしれない」

たまには琥珀さんサイドに立って意地悪をするのも面白そうだ。

「それにそれなら台本も必要ないですしね。遠野君は全部アドリブでオッケーです」

そう言って先輩はぱちりとウインクをした。

「はは……」

どうやら台本を見ていたときの俺はよほど嫌そうな顔をしていたようだ。

「決まりね。じゃあ早速やりましょうよ」
「でもうけるかどうかは誰かに見てもらわないとな……」

こればっかりは第三者の意見がなければなんとも言えない。

「大丈夫ですよ。観客ならいますから。セブン。セブンっ?」
「なんですかー?」
「どわあっ!」

ななこさんがいきなり俺の体を貫通して現れた。

「驚かせないでくれよ」
「あ。志貴さん、いらしてたんですね。ご無沙汰してますー」
「いや、昨日会ったって」
「そういえばそうでしたね。あはは」
「……」

いかん。最初からそうじゃないかなと思ってたけど、ななこさんは微妙に天然のようだ。

まあそうでもない限り先輩と上手くはやってけないだろうなあとも思ったりするけど。

「セブン。わたしたちはこれから芸をやります。面白かったら笑って構いません」
「わ。芸ですか? それは楽しそうですねー」

嬉しそうな声を上げるななこさん。

「……」

果たしてななこさんが観客で大丈夫なんだろうか。

ちょっと心配である。

「ふふ。セブン、びっくりするわよ」

アルクェイドは自信満々だった。

「では準備をしましょうアルクェイド。こっちへ」
「わかったわ」

二人揃って部屋を後にする。

「今日はなんだかマスターとアルクェイドさん仲良しですねえ。何があったんでしょう」

二人が居なくなるやいなや、ななこさんがそう俺に尋ねてきた。

「いや、まあ色々あったんだよ」
「はぁ……よくわかりませんが。二人がケンカするより一億倍くらいマシですね」
「うん」

それは間違いないと思う。

「それで志貴さんも一緒に見学ですか?」
「いや、俺は邪魔する係」
「はぁ……」

ななこさんの頭に?マークが浮かんでいた。

「まあ見てればわかるよ。……多分」

今日の俺の担当は一味違う。

仲良しアルクェイドとシエル先輩を俺が邪魔するのだ。

そして困難を乗り越えさらに深まる二人の信頼関係。

うん、これはなかなかいいかもしれない。

「よーし……」

そうと決まればなお気合が入る。

さて、どんな意地悪をしてやろうか。

「……」
 

なんだか悪ガキのような思考をしている自分に気づいてしまったが、それはそれでなかなか楽しいものなのであった。
 

続く



あとがき
ふと気づいたら屋根裏部屋の姫君が始まってから一年過ぎたみたいです。
一年で累計156話。多いのか少ないのかわからん数字ですが(^^;
時の経つのは早いものですなー。
初心を忘れないようにもう一度最初から読み直してみようかと思ったり。
それで矛盾とか出てきたらどうしましょう(w;

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